CBGが不安・ストレスを軽減|初の臨床試験で記憶力向上も確認【2024年最新研究】

この記事のポイント
世界初のCBGヒト臨床試験:ワシントン州立大学が2024年7月にScientific Reportsで発表
20mgのCBGで不安が平均26.5%軽減、投与後20分・45分・60分で有意な効果を確認
予想外の発見:記憶力(単語リスト想起)がプラセボより有意に向上
認知・運動機能への悪影響なし、酔い(intoxication)もほぼ報告されず
THCとは対照的な作用プロファイルを示す可能性
2024年7月、カンナビノイド研究において画期的な成果が発表されました。ワシントン州立大学(WSU)の研究チームが、CBG(カンナビゲロール)のヒトへの効果を検証した世界初の臨床試験の結果をScientific Reportsに発表したのです。この研究では、わずか20mgのCBGが不安とストレスを有意に軽減することが確認されただけでなく、THCとは正反対に記憶力を向上させるという予想外の発見もありました。
本記事では、この画期的な研究の詳細を解説し、CBGが持つ可能性と今後の展望について考察します。
目次
研究の背景:なぜCBGに注目が集まるのか
CBGとは何か
CBG(カンナビゲロール)は、大麻草に含まれるカンナビノイドの一種で、「カンナビノイドの母」と呼ばれる重要な成分です。CBGは、CBD(カンナビジオール)やTHC(テトラヒドロカンナビノール)など、他のカンナビノイドの前駆体(元となる物質)であり、大麻草の成長過程で他のカンナビノイドに変換されていきます。そのため、成熟した大麻草にはわずか1%未満しか含まれていません。
CBGはCBDと同様に非精神活性であり、THCのような「ハイ」になる効果はありません。これまでの前臨床研究(動物実験や細胞実験)では、抗炎症作用、神経保護作用、抗菌作用などが報告されてきましたが、ヒトでの臨床試験は行われていませんでした。
ユーザー調査が示していた可能性
今回の臨床試験を主導したCarrie Cuttler准教授(ワシントン州立大学心理学部)は、2022年に878名のCBGユーザーを対象とした調査を発表しています。その調査では、51%のユーザーが不安軽減目的でCBGを使用しており、そのうち78%が従来の不安薬より効果的と回答していました。しかし、これらは自己申告データに過ぎず、プラセボ対照試験による科学的検証が必要でした。
臨床試験の詳細
試験デザイン
この研究は、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験という最も信頼性の高い試験デザインで実施されました。二重盲検とは、参加者も研究者もどちらがCBGでどちらがプラセボかを知らない状態で試験を行う方式です。クロスオーバー試験では、各参加者が異なるセッションでCBGとプラセボの両方を摂取するため、個人差の影響を最小限に抑えることができます。
研究はワシントン州立大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の共同で行われ、「フィールド試験」としてZoomを介したリモート形式で実施されました。これにより、参加者は自宅という自然な環境で試験に参加することができました。
参加者と方法
試験には34名の健康な成人が参加しました。全員が過去6ヶ月以内に大麻を使用した経験があり、重度のうつ病や不安障害の診断歴がないことが条件でした。参加者は2回のセッション(最低2日以上の間隔)に参加し、一方のセッションで20mgのヘンプ由来CBGを、もう一方でプラセボを摂取しました。
CBGとプラセボは事前に郵送されたチンキ剤(舌下摂取)の形で投与されました。各セッションでは、摂取前にベースラインの不安、ストレス、気分を測定し、摂取後20分、45分、60分の3つの時点で再測定が行われました。
評価項目
主要評価項目には、**STAI(State-Trait Anxiety Inventory)**による不安測定が含まれていました。STAIは心理学研究で広く使用される標準化された不安測定尺度です。副次的評価項目として、知覚されたストレス、気分の変化、酔い(intoxication)の程度、副作用(口渇、眠気、食欲変化など)、認知機能(記憶テスト)、運動機能が評価されました。
主要な研究結果
不安の有意な軽減
研究の結果、20mgのCBGは不安を平均26.5%軽減させることが確認されました。この効果は摂取後20分という早い段階から現れ、45分後、60分後においてもプラセボと比較して統計的に有意な差が維持されました。
不安軽減効果の詳細
摂取後20分:プラセボと比較して有意に低い不安スコア(p値 < 0.05)
摂取後45分:効果が持続(p値 < 0.05)
摂取後60分:引き続き有意な差を維持(p値 < 0.05)
平均不安軽減率:26.5%
Cuttler准教授は「CBGは、THCに関連する酔いなしに不安を軽減できる可能性がある」とコメントしています。これは、THCを含む大麻製品が不安を軽減する一方で精神活性作用を伴うという問題を解決できる可能性を示しています。
ストレスの軽減
ストレスについても、摂取後20分の最初の測定時点でプラセボと比較して有意な軽減が確認されました。不安とストレスは密接に関連していますが、別々の測定尺度で両方に効果が確認されたことは、CBGの精神的健康への多面的な効果を示唆しています。
安全性プロファイル
安全性の面では、極めて良好な結果が得られました。認知機能や運動機能への悪影響は確認されませんでした。 参加者が報告した酔い(intoxication)の程度は非常に低く、口渇、眠気、食欲変化といった副作用の報告も最小限でした。
これは、THCが認知機能(特に短期記憶)を一時的に低下させ、運動機能にも影響を与えることと対照的です。CBGはこれらの副作用なしに抗不安効果を発揮できる可能性があります。
記憶力向上という予想外の発見
THCとは正反対の効果
この研究で最も驚くべき発見は、CBGが記憶力を向上させたことです。研究では、参加者に単語リストを記憶させ、後で想起させるテストが行われました。その結果、CBGを摂取した参加者は、プラセボを摂取した時よりも有意に多くの単語を想起できたのです。
Cuttler准教授は「この結果には驚きました。正確性を確認するために三重チェックを行いましたが、統計的に有意な向上でした」と述べています。
これはTHCとは正反対の効果です。THCは、即時および遅延言語記憶パフォーマンスを用量依存的に低下させることが知られています。具体的には、THCを摂取した参加者は、シラフの参加者と比較して単語リストの想起で低い成績を示すことが多くの研究で確認されています。
なぜCBGは記憶を向上させるのか
Cuttler准教授は、CBGの記憶向上効果について仮説を提示しています。「CBGによって不安やストレスが軽減されることで、認知機能が向上した可能性があります。人は不安やストレスを感じている時、認知パフォーマンスが低下することが知られています。CBGがこれらを軽減することで、結果的に記憶力が向上したのかもしれません」と説明しています。
ただし、この仮説はまだ検証されておらず、CBGが記憶に直接的な影響を与えている可能性も排除できません。今後の研究で、CBGの記憶への作用メカニズムが解明されることが期待されます。
CBGの作用メカニズム
複数の受容体への作用
CBGは、複数の受容体システムに作用することで効果を発揮すると考えられています。最新の薬理学研究によると、CBGは以下の受容体に作用します。
まず、セロトニン5-HT1A受容体への作用があります。CBGは5-HT1A受容体のアンタゴニスト(拮抗薬)として作用し、結合定数(KB)は51.9nMと報告されています。興味深いことに、これはCBDとは異なる作用様式です。CBDは5-HT1A受容体の間接的アゴニストとして作用するのに対し、CBGはアンタゴニストとして作用します。
次に、α2アドレナリン受容体への作用があります。CBGはα2アドレナリン受容体の強力なアゴニスト(作動薬)であり、EC50は0.2〜72.8nMと非常に高い親和性を示します。この作用は、鎮静効果や血圧・心拍数の調整に関与している可能性があります。
さらに、カンナビノイドCB1/CB2受容体への作用もあります。CBGはCB1およびCB2受容体に対して弱い親和性を持ち、部分的アゴニストまたはアンタゴニストとして作用します。この弱い親和性のため、THCのような精神活性作用を示さないと考えられています。
エンドカンナビノイドシステムの調節
CBGは、エンドカンナビノイドシステム(ECS)の調節にも関与しています。CBGはFAAH(脂肪酸アミド加水分解酵素)を阻害することで、内因性カンナビノイドであるアナンダミドの分解を抑制し、その濃度を上昇させます。アナンダミドは「至福の分子」とも呼ばれ、気分の安定や不安軽減に関与しています。
また、CBGはTRPV1、TRPV2、TRPA1などのTRPチャネルにも作用し、痛みの調節や神経保護に関与している可能性があります。
CBGとCBD・THCの比較
作用プロファイルの違い
CBG、CBD、THCは、いずれも大麻草に含まれるカンナビノイドですが、その作用プロファイルは大きく異なります。
CBGは非精神活性で、不安軽減効果を持ち、今回の研究で記憶向上効果が確認されました。認知・運動機能への悪影響はなく、主にα2アドレナリン受容体と5-HT1A受容体を介して作用します。大麻草に1%未満しか含まれないため、希少で高価です。
CBDも非精神活性で、抗不安、抗炎症、抗てんかん作用が確認されています。5-HT1A受容体の間接的アゴニストとして作用し、大麻草に5〜20%含まれるため比較的入手しやすいです。
THCは精神活性を持ち、不安軽減(低用量)または不安増強(高用量)の両方の可能性があります。記憶低下を引き起こすことが知られており、CB1受容体への強い親和性を持ちます。
| 項目 | CBG | CBD | THC |
|---|---|---|---|
| 精神活性 | なし | なし | あり |
| 不安への効果 | 軽減 | 軽減 | 用量依存(低用量で軽減、高用量で増強の可能性) |
| 記憶への効果 | 向上(本研究) | 影響なし〜軽度向上 | 低下 |
| 認知機能 | 影響なし | 影響なし | 一時的低下 |
| 日本での法的地位 | 合法(THC 0.3%以下) | 合法(THC 0.3%以下) | 違法 |
アントラージュ効果の可能性
CBGとCBDを併用すると、アントラージュ効果(相乗効果)が得られる可能性があります。CBGがα2アドレナリン受容体や5-HT1A受容体に直接作用する一方、CBDは異なる経路で作用するため、両者を組み合わせることでより広範な効果が期待できます。ただし、この組み合わせについてはまだ臨床試験が行われておらず、今後の研究課題です。
日本におけるCBGの法的位置づけ
現行法での位置づけ
日本では、CBGはCBDと同様に合法です。2024年12月12日に施行された改正大麻取締法においても、CBGの合法的地位は維持されています。
法的根拠として、大麻取締法ではTHC(テトラヒドロカンナビノール)を規制対象としており、CBGは規制対象外です。また、CBGには精神活性がなく、麻薬及び向精神薬取締法の規制対象にも該当しません。輸入されるCBG製品については、THC含有量が検出限界以下(ND: Not Detected)であることが求められます。
購入時の注意点
日本でCBG製品を購入する際は、いくつかの点を確認することが重要です。まず、第三者機関による**成分分析書(COA)**でTHCがNDであることを確認してください。次に、信頼できる販売元から購入し、原料の由来(THC 0.3%以下)を確認することが大切です。
なお、CBGはCBDよりも希少なため、製品価格は一般的に2〜3倍高くなります。
今後の研究展望
Cuttler准教授の次のステップ
研究チームは、今回の発見を確認・拡張するための次の臨床試験を計画しています。次の試験では、心拍数、血圧、コルチゾール濃度などの生理学的測定を含める予定です。これにより、自己申告データだけでなく、客観的な生理学的指標でCBGの効果を検証できます。
また、今回の試験は大麻使用経験者のみを対象としていましたが、次の試験では大麻未経験者も対象に含める予定です。これにより、CBGの効果が大麻への慣れによるものではないことを確認できます。
さらに、Cuttler准教授は更年期症状へのCBGの効果を検証する別の臨床試験も計画しています。更年期には不安、気分変動、睡眠障害などの症状が現れることが多く、CBGがこれらの症状を軽減できる可能性があります。
研究の限界と今後の課題
今回の研究にはいくつかの限界があります。まず、参加者34名という比較的小規模なサンプルサイズであり、より大規模な試験での確認が必要です。次に、参加者は全員が大麻使用経験者であり、一般集団への適用には追加検証が必要です。また、最長60分間の効果のみが測定されており、より長期的な効果については不明です。
これらの限界を踏まえつつも、今回の研究はCBGの臨床的可能性を示す重要な第一歩です。今後の研究により、最適な投与量、効果の持続時間、長期使用の安全性などが明らかになることが期待されます。
FAQ
はい、CBGは日本で合法です。CBGは非精神活性のカンナビノイドであり、大麻取締法や麻薬及び向精神薬取締法の規制対象外です。ただし、製品にTHCが含まれていないこと(検出限界以下)を確認することが重要です。2024年12月12日施行の改正大麻取締法においても、CBGの合法的地位は維持されています。
現時点では、CBDの方が不安への効果について多くの臨床研究が行われています。今回のCBG研究は世界初のヒト臨床試験であり、CBGの不安軽減効果を示す重要な証拠ですが、より多くの研究が必要です。両者は異なる受容体を介して作用するため、将来的には併用による相乗効果も期待されています。
今回の研究では、20mgのCBGを摂取した参加者がプラセボと比較して有意に多くの単語を想起できたことが確認されました。研究者は「三重チェックを行い、統計的に有意な向上を確認した」と述べています。ただし、これは単一の研究結果であり、メカニズムも完全には解明されていません。追加研究での確認が必要です。
今回の臨床試験では、CBGの副作用は最小限でした。参加者から報告されたのは、軽度の口渇、眠気、食欲変化程度であり、認知機能や運動機能への悪影響は確認されませんでした。酔い(intoxication)の報告も非常に低いレベルでした。ただし、長期使用の安全性についてはまだ研究が必要です。
日本では、オンラインショップや一部の専門店でCBG製品を購入できます。購入時は、第三者機関による成分分析書(COA)でTHCが検出限界以下(ND)であることを確認してください。CBGはCBDより希少なため、価格は通常2〜3倍高くなります。信頼できる販売元から購入することが重要です。
まとめ
この記事のまとめ
ワシントン州立大学が2024年7月に世界初のCBGヒト臨床試験結果を発表
34名を対象とした二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験を実施
20mgのCBGで不安が平均26.5%軽減、摂取後20分から効果発現
予想外の発見として記憶力(単語想起)の向上を確認
認知・運動機能への悪影響なし、THCとは対照的な安全性プロファイル
CBGはα2アドレナリン受容体および5-HT1A受容体を介して作用
日本ではCBGは合法(THC 0.3%以下かつND製品)
今後、より大規模な臨床試験と生理学的測定を含む追加研究が計画されている
今回の研究は、CBGが不安やストレスの軽減に有効である可能性を科学的に示した画期的な成果です。特に、THCのような認知機能低下を伴わず、むしろ記憶力を向上させる可能性があるという発見は、CBGの独自の治療的価値を示唆しています。
CBGはまだ研究の初期段階にあり、今後より多くの臨床試験が必要ですが、不安やストレスに悩む人々にとって新たな選択肢となる可能性を秘めています。今後の研究の進展に注目していきましょう。
参考文献
医療免責事項: この記事は情報提供を目的としており、医学的アドバイスの代わりにはなりません。不安やストレスの症状がある場合は、必ず医療専門家にご相談ください。CBG製品を使用する前に、医師や薬剤師に相談することをお勧めします。


