CBDと乳がん - 最新研究で明らかになった抗がん作用と臨床試験の現状

この記事のポイント
✓ 2025年のシステマティックレビューで、CBDが乳がん細胞にアポトーシス・増殖抑制・転移抑制の効果を示すことが確認
✓ トリプルネガティブ乳がん(TNBC)において特に有望な前臨床結果が報告されている
✓ 臨床試験は限定的だが、Dana-Farber臨床試験で進行乳がん患者の不安軽減効果が示された
CBD(カンナビジオール)と乳がんの関係については、ここ数年で研究が大きく進展しています。2025年1月にBMC Cancerに掲載されたシステマティックレビューでは、1998年から2025年までの34研究が分析され、CBDが乳がん細胞に対して複数の抗がん作用を示すことが明らかになりました。特に、細胞実験や動物実験では、アポトーシス(細胞死)の誘導、細胞増殖の抑制、転移の防止などの効果が確認されています。一方で、ヒトでの臨床試験はまだ限定的であり、今後のさらなる研究が期待されています。本記事では、CBDと乳がんに関する最新の科学的知見を包括的に解説します。
目次
乳がんの現状と治療の課題
乳がんの疫学
乳がんは、女性において最も多く診断されるがんです。日本では、年間約9万人が新たに乳がんと診断されており、生涯のうちに乳がんになる女性の割合は約9人に1人と推定されています。近年、早期発見と治療法の進歩により生存率は向上していますが、進行がんや再発のリスクは依然として重要な課題です。
乳がんは、ホルモン受容体やHER2タンパクの有無によっていくつかのサブタイプに分類されます。特に、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2のいずれも陰性であるため、ホルモン療法や分子標的治療が効きにくく、予後が悪いことで知られています。TNBCは乳がん全体の約15-20%を占め、新たな治療法の開発が強く求められています。
現在の標準治療と限界
乳がんの標準治療には、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、分子標的治療があります。これらの治療法は多くの患者に有効ですが、いくつかの限界も存在します。化学療法は、脱毛、吐き気、疲労、骨髄抑制などの副作用が強く、患者の生活の質(QOL)を著しく低下させます。ホルモン療法は、ホルモン受容体陽性の乳がんにのみ効果があり、TNBCには使用できません。分子標的治療も、特定の遺伝子変異を持つ患者にのみ有効です。
さらに、多くの乳がん患者は治療に伴う心理的ストレスと不安に苦しんでいます。Dana-Farber Cancer Instituteの2024年の臨床試験によると、進行乳がん患者の約50名中、全員が臨床的不安の基準を満たしていたと報告されています。このように、既存の治療法を補完し、患者のQOLを改善する新たなアプローチが必要とされています。
CBDの抗がん作用研究の歴史
初期の発見(1970年代〜2000年代)
カンナビノイドのがん細胞への影響に関する研究は、1970年代に始まりました。初期の研究では、THC(テトラヒドロカンナビノール)が一部のがん細胞の増殖を抑制することが示されました。しかし、THCは精神活性作用があるため、医療応用には課題がありました。
1990年代後半から2000年代にかけて、非精神活性のCBDに注目が集まりました。1998年、CBDがエンドカンナビノイドシステム(ECS)を介して細胞の恒常性を調節することが明らかになり、がん研究への応用が検討され始めました。
2010年代の飛躍的進展
2011年、カリフォルニア・パシフィック医療センターのSean D. McAllister博士らが、Molecular Cancer Therapeutics誌に画期的な研究を発表しました。この研究では、CBDが乳がん細胞株(MDA-MB-231など)においてアポトーシスとオートファジーの両方を介して細胞死を誘導することが示されました。特に重要だったのは、CBDがBeclin1という自食タンパク質を介してアポトーシスを促進するという、新しいメカニズムの発見でした。
2013年には、CBDがGPR55受容体を抑制することが報告されました。GPR55は、乳がん細胞の増殖と転移に関与する受容体で、特にトリプルネガティブ乳がんで高発現しています。CBDによるGPR55の抑制は、がん細胞の転移を防ぐ可能性を示唆しました。
2020年代の包括的レビュー
2025年1月、BMC Cancer誌に掲載されたシステマティックレビューは、CBDと乳がんに関する27年間(1998-2025年)の研究を総括しました。このレビューでは、34の研究が分析され、CBDが多様な抗がん作用を持つことが確認されました。主な知見として、細胞実験(in vitro)でのアポトーシス誘導と細胞増殖抑制、動物実験(in vivo)での腫瘍成長抑制と転移防止、特にトリプルネガティブ乳がん(TNBC)での有望な結果が挙げられています。
CBDが乳がん細胞に与える影響
アポトーシス(プログラム細胞死)の誘導
CBDの最も重要な抗がん作用の一つは、乳がん細胞においてアポトーシスを誘導することです。アポトーシスとは、細胞が自ら死滅するプログラムされた細胞死であり、がん細胞はこのメカニズムを回避することで無限に増殖します。CBDは、複数の経路を通じてアポトーシスを再活性化させます。
第一に、CBDは内因性ストレス経路を活性化します。具体的には、小胞体ストレスを誘導し、細胞内のカルシウムバランスを乱すことで、がん細胞を死滅させます。第二に、活性酸素種(ROS)の生成を促進します。CBDはミトコンドリアの機能を障害し、ROSを過剰に生成させることで、がん細胞のDNAやタンパク質を損傷させます。
第三に、カスパーゼ経路を活性化します。カスパーゼは、アポトーシスを実行する酵素群で、CBDはこれらの酵素を活性化することで、がん細胞の死を促進します。2018年の研究では、CBDがカスパーゼ-3とカスパーゼ-9を活性化し、乳がん細胞株(MCF-7、MDA-MB-231)においてアポトーシスを誘導することが示されました。
オートファジーとの相互作用
CBDのもう一つの重要な作用は、オートファジー(自食作用)を介した細胞死の誘導です。オートファジーは、細胞が不要なタンパク質や損傷した細胞小器官を分解・再利用するメカニズムです。通常、オートファジーは細胞の生存を助けますが、過剰なオートファジーは細胞死を引き起こすことがあります。
2011年のMolecular Cancer Therapeutics誌の研究では、CBDがBeclin1を介してオートファジーを誘導し、これがアポトーシスと協調して乳がん細胞を死滅させることが示されました。重要なのは、CBDがアポトーシスとオートファジーのクロストーク(相互作用)を調整することで、単独よりも強力な抗がん効果を発揮する点です。
GPR55受容体の抑制と転移防止
CBDは、GPR55受容体を抑制することで、乳がん細胞の転移を防ぐ可能性があります。GPR55は、細胞増殖、遊走、浸潤に関与する受容体で、攻撃的な乳がん、特にトリプルネガティブ乳がんで高発現しています。2013年の研究では、CBDがGPR55の活性化を阻害し、乳がん細胞の浸潤能を有意に減少させることが示されました。
転移は、がんによる死亡の主要な原因です。乳がん細胞が血流やリンパ系を通じて他の臓器(骨、肺、肝臓、脳など)に広がると、治療が極めて困難になります。CBDによる転移抑制効果は、将来的に転移性乳がんの治療に役立つ可能性を示唆しています。
腫瘍微小環境の調節
CBDは、腫瘍微小環境を調節することでも抗がん作用を発揮します。腫瘍微小環境とは、がん細胞を取り巻く血管、免疫細胞、細胞外マトリックスなどの総称で、がんの成長と転移を支える役割を果たしています。
CBDは、血管新生(新しい血管の形成)を抑制します。がん細胞は、急速に成長するために新しい血管を形成して栄養と酸素を供給します。CBDは、血管内皮増殖因子(VEGF)の発現を抑制することで、血管新生を阻害します。また、CBDは炎症性サイトカインの産生を抑制し、腫瘍を促進する慢性炎症を軽減します。さらに、腫瘍関連マクロファージ(TAM)の浸潤を抑制することで、がん細胞の増殖を支える免疫細胞の働きを弱めます。
2024-2025年の最新研究
BMC Cancerシステマティックレビュー(2025年1月)
2025年1月にBMC Cancer誌に掲載されたシステマティックレビューは、CBDと乳がんに関する最も包括的な分析の一つです。このレビューでは、1998年から2025年までの34研究が分析され、以下の結論が導かれました。
CBDは、細胞レベルでアポトーシス誘導、細胞増殖抑制、細胞周期停止、オートファジー誘導の効果を示しました。動物実験では、腫瘍成長の抑制、転移の防止、血管新生の抑制が確認されました。特に、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の細胞株と動物モデルで有望な結果が得られています。
レビューの著者らは、「CBDは乳がん治療、特にTNBCにおいて新しい治療選択肢となる可能性がある」と結論づけました。しかし、前臨床研究の結果は有望であるものの、ヒトでの臨床試験はまだ限定的であり、大規模な臨床試験が必要であると指摘しています。
Dana-Farber臨床試験(2024年12月)
2024年12月、Dana-Farber Cancer InstituteがJAMA Network Open誌に発表した第2相臨床試験は、CBDが進行乳がん患者の不安を軽減する可能性を示しました。この試験では、進行乳がん(ステージIII~IV)と臨床的不安を有する女性50名が対象となり、CBD 400mg単回投与の効果が評価されました。
主要評価項目は統計的有意性に達しませんでしたが、投与後2~4時間の測定において、CBD群はプラセボ群よりも有意に低い不安を報告しました(p = 0.02)。重篤な有害事象は報告されず、CBDの安全性が確認されました。この試験は、CBDが乳がん細胞に直接作用する抗がん効果を検証したものではありませんが、乳がん患者のQOL改善におけるCBDの役割を示した重要な研究です。
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)での効果
トリプルネガティブ乳がんは、治療選択肢が限られているため、CBDの研究において特に注目されています。2024年のFrontiers in Immunology誌のレビューでは、CBDがTNBC細胞株において特に強力な抗増殖効果を示すことが報告されました。
前臨床研究では、CBDがTNBC細胞株(MDA-MB-231、MDA-MB-468など)において、10~20μMの濃度でIC50(50%の細胞増殖を抑制する濃度)を達成しました。マウスのTNBC異種移植モデルでは、CBD投与により腫瘍体積が約50~60%減少し、肺への転移が有意に減少しました。さらに、CBDはTNBC細胞の上皮間葉転換(EMT)を抑制し、転移能を低下させました。
これらの結果は、CBDがTNBCに対する新しい治療アプローチとなる可能性を示していますが、ヒトでの臨床試験はまだ行われていません。
CBDと既存治療薬との併用効果
タモキシフェンとの相乗効果
タモキシフェンは、ホルモン受容体陽性の乳がんに対する標準的なホルモン療法です。前臨床研究では、CBDとタモキシフェンを併用することで、相乗的な抗がん効果が得られることが示されています。
2011年の研究では、乳がん細胞株においてCBDとタモキシフェンを併用すると、単独投与よりも細胞増殖抑制効果が増強されました。CBDはタモキシフェンの作用を増強し、より低用量での効果を可能にする可能性があります。このことは、副作用の軽減と治療効果の向上につながる可能性があります。
シスプラチン感受性の増強
シスプラチンは、化学療法で広く使用される抗がん剤ですが、一部のがん細胞は耐性を持つようになります。前臨床研究では、CBDが乳がん細胞のシスプラチンに対する感受性を増強することが示されています。
CBDは、耐性メカニズムを抑制し、シスプラチンの細胞内取り込みを増加させることで、化学療法の効果を高める可能性があります。これにより、より低用量のシスプラチンで治療効果が得られ、副作用の軽減が期待されます。
併用時の注意点
CBDと既存の抗がん剤を併用する場合、いくつかの重要な注意点があります。まず、薬物相互作用の可能性です。CBDは肝臓の代謝酵素(CYP3A4、CYP2C19など)を阻害するため、他の薬剤の血中濃度に影響を与える可能性があります。
また、臨床試験データの不足も課題です。前臨床研究では併用効果が示されていますが、ヒトでの安全性と有効性は十分に検証されていません。医師の監督下での使用が極めて重要で、自己判断での併用は避けるべきです。
CBDの安全性と副作用
臨床試験で報告された副作用
これまでの臨床試験では、CBDは比較的安全であることが示されています。Dana-Farber臨床試験(2024年)では、進行乳がん患者50名にCBD 400mgを投与した結果、重篤な有害事象は報告されませんでした。報告された副作用は軽度で、一部の参加者における軽度の眠気と、まれに見られた軽度の消化器症状(吐き気、下痢)のみでした。
他の臨床試験でも、CBDの副作用は概して軽微であることが確認されています。WHOの2017年のレポートでは、CBDは一般的に忍容性が高く、乱用の可能性が低いとされています。
薬物相互作用の可能性
CBDは、肝臓の代謝酵素を阻害するため、他の薬剤との相互作用に注意が必要です。特に、以下の薬剤との併用には注意が必要です。
抗がん剤(シスプラチン、ドキソルビシン、パクリタキセルなど)は、血中濃度が変動する可能性があります。抗凝固薬(ワルファリン)は、出血リスクが増加する可能性があります。抗てんかん薬(クロバザムなど)は、血中濃度が上昇する可能性があります。免疫抑制剤(タクロリムスなど)も、血中濃度が変動する可能性があります。
これらの相互作用を避けるためには、医師や薬剤師に必ず相談し、血中濃度のモニタリングが必要な場合があります。
長期使用の安全性
CBDの長期使用に関するデータはまだ限られていますが、これまでの研究では深刻な問題は報告されていません。Epidiolex(てんかん治療用のCBD医薬品)の長期使用試験では、最長1年間の使用で重篤な副作用は少なく、肝機能障害が一部の患者で報告されましたが、稀でした。
ただし、がん患者の長期使用に関する特別なデータはまだ不足しており、今後の研究が必要です。
日本での乳がん患者のCBD使用
法的規制と合法的な入手方法
日本では、2024年12月12日に施行された改正大麻取締法(2023年12月成立)により、従来の部位規制(茎・種子のみ合法)から成分規制へと移行しました。現在はTHC含有量0.3%以下のCBD製品が合法であり、原料となる大麻草の部位は問われなくなりました。また、医療用大麻については、厚生労働大臣の承認を得た製剤に限り、医師の処方のもとで使用が認められるようになりました。
合法的なCBD製品は、厚生労働省の輸入許可を得た販売店から購入できます。信頼できる販売店を選び、THC不検出が証明されている製品を選ぶことが重要です。第三者機関による成分分析証明書(CoA: Certificate of Analysis)を確認しましょう。
医師との相談の重要性
乳がん患者がCBDの使用を検討する場合、必ず主治医に相談することが極めて重要です。その理由として、まず薬物相互作用のリスクがあります。CBDが抗がん剤の効果に影響を与える可能性があるため、医師の判断が必要です。次に、疾患の進行状況を理解した上での使用判断が重要です。また、適切な用量と使用方法の指導を受けることも必要です。さらに、副作用のモニタリングを医師と共有することも大切です。
残念ながら、日本ではCBDはまだ医薬品として承認されておらず、医師の知識も限られている場合があります。しかし、がん治療の安全性を確保するためには、医師との情報共有が不可欠です。
使用時の注意点
乳がん患者がCBDを使用する際には、以下の点に注意してください。
標準治療を中断しないことが最も重要です。CBDは補完的な選択肢であり、手術、化学療法、放射線療法などの標準治療の代替品ではありません。また、品質が保証された製品を選び、THCが混入している製品は日本では違法であり、乱用のリスクもあります。少量から開始し、体の反応を確認しながら調整することも大切です。副作用や体調の変化があれば、すぐに医師に報告してください。
今後の研究課題と展望
臨床試験のさらなる進展
CBDと乳がんに関する研究は、前臨床段階から臨床段階への移行が最大の課題です。今後必要とされる研究として、第1相臨床試験(安全性と用量決定)、第2相臨床試験(有効性の初期評価)、第3相臨床試験(大規模な有効性検証)が挙げられます。
特に、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者を対象とした臨床試験が強く期待されています。TNBCは治療選択肢が限られており、CBDの前臨床結果が特に有望であるため、臨床試験への移行が待たれています。
最適な投与量と投与方法の確立
CBDの最適な投与量と投与方法はまだ確立されていません。前臨床研究で使用された濃度をヒトに換算すると、比較的高用量が必要になる可能性があります。Dana-Farber臨床試験では400mgが使用されましたが、抗がん効果を得るにはさらに高用量が必要かもしれません。
投与方法についても、経口投与、舌下投与、静脈内投与など、最も効果的な方法を特定する必要があります。また、単回投与か長期投与か、食事と一緒に摂取すべきかなど、細かい条件の最適化も今後の研究課題です。
日本での承認への道のり
日本でCBDが乳がん治療薬として承認されるためには、いくつかのステップが必要です。まず、海外での大規模臨床試験の成功が前提となります。その後、日本国内での臨床試験の実施が必要で、海外データがあっても、日本人における安全性と有効性を確認する必要があります。次に、医薬品としての承認申請を行い、厚生労働省による審査を受けます。
このプロセスには通常10年以上かかります。しかし、がん治療における新薬の開発は優先度が高いため、迅速審査の対象となる可能性もあります。現時点では、CBDは健康食品として入手可能ですが、医療用途での使用には医師の指導が不可欠です。
まとめ
📝 この記事のまとめ
CBDは、乳がん細胞に対してアポトーシス誘導、増殖抑制、転移防止などの抗がん作用を示す(前臨床研究)
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)において特に有望な結果が報告されている
Dana-Farber臨床試験では、進行乳がん患者の不安軽減効果が示されたが、抗がん効果のヒト臨床試験はまだ限定的
既存の抗がん剤(タモキシフェン、シスプラチン)との併用で相乗効果が期待されるが、薬物相互作用に注意が必要
CBDは比較的安全だが、乳がん患者が使用する際は必ず医師に相談し、標準治療を中断しないことが重要
FAQ
現時点では、CBDが乳がんを治療できるという確定的な証拠はありません。前臨床研究(細胞実験や動物実験)では有望な結果が示されていますが、ヒトでの大規模臨床試験はまだ行われていません。CBDは標準治療(手術、化学療法、放射線療法など)を補完する選択肢として研究されていますが、これらの治療を代替するものではありません。
前臨床研究では、CBDがTNBC細胞に対して特に強力な抗増殖効果を示すことが報告されています。マウス実験でも腫瘍の縮小と転移の抑制が確認されています。しかし、これらはあくまで前臨床段階の結果であり、ヒトでの臨床試験はまだ行われていません。TNBCは治療選択肢が限られているため、CBDの臨床試験が強く期待されています。
CBDは肝臓の代謝酵素を阻害するため、抗がん剤の血中濃度に影響を与える可能性があります。前臨床研究では、CBDが一部の抗がん剤(タモキシフェン、シスプラチンなど)の効果を増強する可能性が示されていますが、ヒトでの安全性データは不足しています。化学療法を受けている患者がCBDの使用を検討する場合は、必ず主治医に相談し、薬物相互作用のリスクを評価してもらう必要があります。
日本では、成熟した茎・種子由来でTHCが検出限界以下(ND)のCBD製品は合法です。厚生労働省の輸入許可を得た信頼できる販売店から購入できます。ただし、CBDは医薬品として承認されていないため、医師の処方箋なしで健康食品として販売されています。乳がん患者がCBDを使用する場合は、法的に合法であっても、必ず主治医に相談し、標準治療を中断しないようにしてください。
CBDは一般的に忍容性が高く、重篤な副作用は稀です。臨床試験で報告された副作用は、軽度の眠気、疲労感、消化器症状(吐き気、下痢)などです。Dana-Farber臨床試験では、進行乳がん患者50名にCBD 400mgを投与しても重篤な有害事象は報告されませんでした。ただし、肝臓の代謝酵素を阻害するため、他の薬剤との相互作用には注意が必要です。まれに肝機能障害が報告されていますが、高用量を長期使用した場合に限られます。
乳がんに対するCBDの最適な投与量はまだ確立されていません。Dana-Farber臨床試験では400mgが使用されましたが、これは不安軽減のための用量です。前臨床研究では、抗がん効果を得るにはさらに高用量が必要である可能性が示唆されています。CBDの使用を検討する場合は、少量(5~10mg)から開始し、体の反応を確認しながら徐々に増量することが推奨されます。ただし、がん患者の場合は必ず医師の指導下で行う必要があります。


