CBN(カンナビノール)とは?睡眠効果・CBDとの違いを解説

**CBN(カンナビノール / Cannabinol)**は、大麻草に含まれるカンナビノイドの一種で、睡眠促進効果が期待されている成分です。
CBNは、**THC(テトラヒドロカンナビノール)**が酸化・分解されることで生成される化合物であり、古い大麻草や保存状態が悪い大麻草に多く含まれています。THCの分解物(酸化物)ではありますが、精神活性は非常に弱いとされています。
近年、CBNの睡眠改善効果や鎮静作用が注目され、「自然な睡眠サプリメント」として研究が進められています。
CBNはTHCの酸化物として生成され、古い大麻草に多く含まれる
精神活性は極めて小さい
「睡眠カンナビノイド」として注目されているが、科学的根拠はまだ限定的
鎮静作用、食欲増進、神経保護など複数の効果が研究されている
日本では条件付き合法(THC残留限度値以下であれば合法)
目次
CBNの基本情報
正式名称
英語: Cannabinol(カンナビノール)
略称: CBN
化学式: C21H26O2
発見の歴史
CBNは、カンナビノイドの中で最初に単離された成分です。
CBN の発見
ケンブリッジ大学のWood、Spivey、Easterfield らが大麻抽出物から「赤い油(red oil)」と呼ばれる物質を分離
化学構造の解明
アメリカのR. AdamsとイギリスのLord ToddによってCBNの化学構造が解明
**THCやCBD**よりも早く発見されましたが、精神活性が弱いため、長らく注目されませんでした。
含有量
新鮮な大麻草
0.1-0.5%
古い大麻草
1-3%
THCの酸化により増加
保存状態が悪い大麻草
5%以上
CBNの生成メカニズム
THCからの変換
CBNは、大麻草が老化したり、光・熱・酸素にさらされることで、**THC**が酸化・分解されて生成されます。
新鮮なTHCが光・熱・酸素に晒されることで、徐々に酸化され、最終的にCBN(酸化物)へと変化します。
生成条件
以下の条件下でTHCからCBNへの変換が促進されます:
光
紫外線による光分解
熱
高温環境での熱分解
酸素
空気への暴露による酸化
時間
長期保存による自然酸化
古い大麻草ほどCBN含有量が高いのはこのためです。
意図的なCBN生成
近年、CBN製品の需要増加に伴い、以下の方法で意図的にCBNを生成する技術が開発されています:
加熱処理
THCを含む大麻草を制御された環境で加熱
光照射
紫外線照射によるTHCの酸化促進
化学的酸化
酸化剤を使用した変換
CBNの効果・作用メカニズム
CBNは、THCの分解物(酸化物)ですが、精神活性は極めて小さいとされています。
作用メカニズム
CBNは、**エンドカンナビノイドシステム(ECS)**に以下の方法で作用します:
THCよりもCB1受容体への親和性が低いため、精神活性が弱くなっています。
期待される効果
CBNには複数の効果が期待されていますが、最も注目されているのが睡眠促進作用です。CBNは「睡眠カンナビノイド」として知られており、1970年代の小規模研究で鎮静作用が確認されています。THCとの併用で鎮静効果が増強されることや、使用者からの逸話的報告が多数存在することから、睡眠改善効果への期待が高まっています。ただし、科学的根拠はまだ限定的であり、大規模な臨床試験は実施されていません。睡眠効果のメカニズムは完全に解明されておらず、プラセボ効果の可能性も指摘されています。
睡眠促進以外にも、CBNには鎮静・リラックス作用があります。THCほど強力ではないものの、軽度の鎮静作用が認められており、心身のリラクゼーションに役立つとされています。
また、2012年の動物実験では食欲増進作用が確認されています。ラットにCBNを投与すると食欲が増進したという研究結果があり、食欲不振の改善に役立つ可能性が示唆されています。
CBNはCB2受容体への作用を通じて抗炎症作用を発揮します。炎症を軽減する効果が期待されており、慢性炎症性疾患への応用が研究されています。さらに、2008年の研究では、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対する抗菌作用が確認されており、薬剤耐性菌への対策としても注目されています。
その他にも、緑内障治療における眼圧低下作用や、ALSマウスモデルを用いた2005年の研究で確認された神経保護作用など、多様な効果が報告されています。CBNは病気の進行を遅らせる可能性があり、神経変性疾患への応用が期待されています。
CBNとCBD・THCの違い
| 項目 | CBN | CBD | THC |
|---|---|---|---|
| 正式名称 | カンナビノール | カンナビジオール | テトラヒドロカンナビノール |
| 精神活性 | 極めて小さい | なし | 強い |
| 生成 | THCの酸化物 | CBDAの脱炭酸 | THCAの脱炭酸 |
| 含有量 | 0.1-3% | 5-20% | 10-30% |
| 主な効果 | 睡眠促進、鎮静 | 抗不安、抗炎症 | 精神活性、鎮痛 |
| 日本の合法性 | 合法(条件付き) | 合法(条件付き) | 違法 |
| 研究状況 | 初期段階 | 臨床試験段階 | 広範囲に研究済み |
CBNとCBDの違い
| 項目 | CBN | CBD |
|---|---|---|
| 睡眠効果 | 強い(逸話的) | 間接的 |
| 抗不安効果 | 弱い | 強い |
| CB1受容体 | 弱いアゴニスト | 間接的作用 |
| 研究データ | 少ない | 豊富 |
| 製品価格 | 高価 | 比較的安価 |
CBNとTHCの関係
CBNはTHCの酸化物
CBNの精神活性は極めて小さい
古い大麻草はTHC↓、CBN↑
CBNとTHCの併用で鎮静効果が増強

CBNの研究状況
主要な研究成果
1. 睡眠促進効果
研究内容: CBNの睡眠効果に関する科学的根拠を検証したレビュー論文では、THCとの併用による効果が報告されています
論文: "Cannabinol and Sleep: Separating Fact from Fiction"
出典: Cannabis and Cannabinoid Research, 2021
注意点: CBN単独の睡眠効果は限定的であり、効果はTHCとの併用の影響もありうるため、解釈に注意が必要
2. 食欲増進作用(2012年)
研究内容: ラットにCBNを投与すると食欲が増進
論文: "Cannabinol and cannabidiol exert opposing effects on rat feeding patterns"
出典: Psychopharmacology, 2012
3. 神経保護作用(2005年)
研究内容: ALSマウスモデルでCBNが病気の進行を遅延
論文: "Cannabinol delays symptom onset in SOD1 (G93A) transgenic mice without affecting survival"
出典: Amyotrophic Lateral Sclerosis and Other Motor Neuron Disorders, 2005
4. 抗菌作用(2008年)
研究内容: CBNがMRSA(薬剤耐性菌)に対して抗菌作用を示す
論文: "Antibacterial cannabinoids from Cannabis sativa"
出典: Journal of Natural Products, 2008
研究の課題
睡眠効果の科学的根拠: 大規模臨床試験が不足
メカニズム解明: 作用機序が完全に解明されていない
データ蓄積: CBDやTHCに比べて研究データが少ない
CBN製品の現状
製品の種類
CBNオイル: 経口摂取用のオイル製品
CBN+CBD製品: CBNとCBDを配合した睡眠サプリ
CBNグミ: 摂取しやすいグミタイプ
CBNカプセル: 定量摂取用のカプセル

睡眠サプリとしての人気
CBNは「自然な睡眠サプリメント」として人気が高まっています:
メラトニンの代替品として注目
習慣性がない(と考えられている)
自然由来の成分
価格
CBN製品は、**CBD**より高価です:
理由: 含有量が少ない、THCからの変換が必要
価格: CBD製品の1.5-2倍程度
使用方法
推奨摂取量: 2.5-10mg(就寝30-60分前)
効果には個人差がある
高用量では軽度の精神活性を感じる可能性
初回は少量から開始

日本におけるCBNの法的位置づけ
合法性
CBNは、条件付きで合法です(2024年12月12日法改正施行)。
根拠:
大麻取締法および麻薬及び向精神薬取締法の改正(2024年12月12日施行): THC(Δ9-テトラヒドロカンナビノール)含有量が残留限度値以下であれば合法
THC残留限度値: 油脂・粉末は10ppm、水溶液は0.10ppm、その他は1ppm
CBN自体: 麻薬指定されておらず、THC含有量が基準内であれば合法的に使用可能
重要な注意点
CBNはTHCから生成されるため、以下に注意が必要です:
THC混入リスク: CBN製品にTHCが混入している可能性
成分分析: THCが残留限度値以下であることを確認
製造プロセス: 「THCから意図的に生成」されたCBNは、たとえ最終製品のTHCが残留限度値以下であっても、製造プロセスが違法とみなされる可能性があります
購入時の確認事項
第三者機関の成分分析書: THC含有量が残留限度値以下であることを確認
油脂・粉末: 10ppm (0.0010%) 以下
水溶液: 0.10ppm (0.000010%) 以下
その他: 1ppm (0.0001%) 以下
信頼できる販売元: 正規輸入代理店または国内製造業者から購入
製品ラベル: 「THC-free」または「THC残留限度値基準適合」表示を確認
法的遵守: 販売元が2024年改正法を遵守していることを確認
よくある質問(FAQ)
CBNは日本で合法ですか?
条件付きで合法です(2024年12月12日法改正施行)。CBN自体は麻薬指定されておらず、製品中のTHC(Δ9-テトラヒドロカンナビノール)含有量が残留限度値以下であれば合法です。油脂・粉末は10ppm以下、水溶液は0.10ppm以下、その他は1ppm以下が基準です。ただし、「THCから意図的に生成」されたCBNは、たとえ最終製品のTHCが残留限度値以下であっても、製造プロセスが違法とみなされる可能性があります。購入時は必ず第三者機関の成分分析書でTHC含有量および製造プロセスを確認してください。
CBNは本当に睡眠効果がありますか?
逸話的な報告は多数ありますが、科学的根拠はまだ限定的です。1970年代の小規模研究で鎮静作用が確認されていますが、大規模な臨床試験はまだ実施されていません。ただし、多くの使用者が睡眠改善効果を報告しており、今後の研究が期待されています。
CBNとCBDはどちらが睡眠に効果的ですか?
CBNの方が直接的な睡眠促進効果が期待されていますが、科学的根拠はCBDの方が豊富です。CBDは抗不安作用により間接的に睡眠を改善します。CBN+CBD併用製品は、両方の利点を活かした相乗効果が期待されています。初めての方は、エビデンスが豊富なCBDから試すことをお勧めします。
まとめ
この記事では、CBN(カンナビノール)について解説しました。CBNは睡眠促進効果が期待されるカンナビノイドで、THCの酸化物として生成されます。
精神活性は極めて小さい
「睡眠カンナビノイド」として注目されているが、科学的根拠はまだ限定的
鎮静作用、食欲増進、神経保護など複数の効果が研究されている
日本では条件付き合法(THC残留限度値以下かつ適切な製造プロセスであれば合法)
CBNは睡眠サプリ市場で注目を集めていますが、科学的根拠の蓄積にはまだ時間がかかります。THC混入リスクに注意し、信頼できる販売元から購入することが重要です。睡眠障害がある場合は、必ず医療専門家にご相談ください。
参考文献
本記事は以下の信頼できる情報源に基づいて執筆されています。
研究論文
-
PMC - National Institutes of Health (2025) "Cannabinol: History, Syntheses, and Biological Profile of the Greatest 'Minor' Cannabinoid" https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9658060/
- CBNの歴史、合成法、生物学的プロファイルに関する包括的レビュー
-
PubMed - National Library of Medicine (2025) "Cannabinol delays symptom onset in SOD1 (G93A) transgenic mice without affecting survival" https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16183560/
- ALSマウスモデルにおけるCBNの神経保護作用に関する2005年の研究
-
Psychopharmacology (2025) "Cannabinol and cannabidiol exert opposing effects on rat feeding patterns" https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22543671/
- CBNの食欲増進作用に関する2012年の研究
-
PMC - Cannabis and Cannabinoid Research (2025) "Cannabinol and Sleep: Separating Fact from Fiction" https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8612407/
- CBNの睡眠効果に関する科学的根拠を検証したレビュー論文
政府機関
- 厚生労働省 (2025)
"令和7年3月1日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」の一部が施行されます"
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43079.html
- 2024年12月12日施行の大麻取締法改正に関する厚生労働省の公式情報


