【2024年12月】世界の大麻関連ニュースまとめ|ドイツ合法化継続・米国スケジュール変更・タイ規制強化

この記事のポイント
✓ ドイツ新政権が大麻合法化法(CanG)の維持を決定、2025年秋に効果検証予定
✓ 米国DEAが12月2日からスケジュールIII移行に関する公聴会を開始
✓ タイでは規制強化の動きが加速、娯楽用から医療用限定への方針転換が進行
✓ 日本では12月12日に改正大麻取締法が施行、大麻由来医薬品が解禁
2024年は世界の大麻政策にとって激動の1年となりました。4月のドイツにおけるG7初の嗜好用大麻合法化、米国での連邦レベルでのスケジュール変更の動き、そしてアジアではタイの政策転換や日本の法改正など、各国で重要な動きが相次ぎました。本記事では、2024年11月下旬から12月にかけての世界の大麻関連ニュースを総まとめし、2025年に向けた展望を解説します。
ドイツ:新政権が合法化継続を決定

2024年4月1日に施行されたドイツの大麻合法化法(Cannabis-Gesetz、通称CanG)は、G7諸国として初めての嗜好用大麻の全国的な合法化として世界的に注目を集めました。同法により、18歳以上の成人は公共の場で25グラム、自宅で50グラムまでの大麻を所持することが合法となり、個人での栽培も3株まで認められるようになりました。
11月末の連立政権崩壊後、新政権がこの法律をどう扱うかに関心が集まっていましたが、CDU/CSUとSPDによる新連立政権は、CanG法を当面維持することを決定しました。連立合意には法改正や廃止に関する具体的な計画は含まれておらず、2025年秋に予定されている効果検証の結果を待って対応を検討するとされています。
YouGov社の世論調査によると、ドイツ国民の38%のみが合法化の撤回を支持しており、Forsa社の調査でも55%が現行法の維持を望んでいることが明らかになっています。医療用大麻の処方箋発行数も、2024年3月から12月にかけて約1,000%増加したとBloomwell Groupが報告しており、合法化による医療アクセスの改善効果が顕著に表れています。
米国:DEAスケジュール変更公聴会が開始
米国では、大麻を連邦法上のスケジュールI(最も厳しい規制カテゴリー)からスケジュールIII(医療用途が認められるカテゴリー)へ移行する提案について、重要な進展がありました。2024年12月2日、米国麻薬取締局(DEA)本部において、この提案に関する正式な公聴会が開始されました。
この動きは、2022年10月にバイデン大統領が保健福祉省(HHS)とDEAに対して大麻の分類見直しを指示したことに端を発しています。2023年8月にはHHSがスケジュールIIIへの移行を推奨し、2024年5月には司法省が正式な規則制定案を発表しました。60日間のパブリックコメント期間中には約43,000件のコメントが寄せられ、国民の関心の高さを示しました。
しかし、12月2日の公聴会は予備的な手続き日として位置づけられ、本格的な審理は2025年1月21日に予定されていました。ところが、1月13日に行政法判事がある当事者の申し立てを理由に審理を延期したため、現在もスケジュール変更プロセスは保留状態となっています。トランプ新政権下でのDEA長官候補であるテリー・コール氏は、過去に大麻合法化に反対の立場を明確にしており、今後の展開が注目されています。
📊 スケジュール変更が実現した場合の影響
税制面: 連邦税法280E条の適用除外により、大麻事業者が通常の事業経費を控除可能に
金融アクセス: 銀行サービスへのアクセスが改善し、現金取引依存からの脱却が期待
研究促進: 大麻の医療研究がより容易に実施可能に
注意点: 嗜好用大麻は依然として連邦法では違法のまま
タイ:規制強化への転換

2022年にアジア初となる大麻の非犯罪化を実施したタイでは、政策の大きな転換が進行しています。現在約8,000店舗の大麻販売店が営業していますが、政府は娯楽用から医療用限定への規制強化を進めています。
2024年5月、スレッタ前首相は大麻を「カテゴリー5」の麻薬として再分類し、栽培・所持・使用を犯罪化する方針を発表しました。しかし、7月23日にアヌティン内務大臣が「大麻を麻薬に再分類しない」と発表し、代わりに販売・使用を規制する法案を作成する方向に転換しました。
状況が再び変化したのは2024年9月以降です。パエトンタン新首相の就任後、ブムジャイタイ党(2022年の非犯罪化を主導した党)が連立政権から離脱したことで、規制強化への道が開かれました。保健省は娯楽用販売を禁止し、小売購入には医師の処方箋を必要とする命令を発令しました。タイ商工会議所の試算では、大麻産業は2025年までに12億ドル規模に成長する見込みでしたが、この規制強化により業界は大きな打撃を受ける可能性があります。
日本:改正大麻取締法が施行
日本では、2024年12月12日に改正大麻取締法および麻薬及び向精神薬取締法が施行されました。これは75年ぶりとなる大麻関連法の大規模改正であり、日本の大麻政策にとって歴史的な転換点となりました。
改正の主なポイントは3つあります。第一に、大麻由来医薬品の解禁です。難治性てんかん治療薬「エピディオレックス」などのCBD医薬品が、医療現場で処方可能になりました。第二に、THC残留限度値の設定です。CBD製品に含まれるTHC量に具体的な基準が設けられ、この基準を超えるものは麻薬として規制されます。第三に、いわゆる「使用罪」の新設です。これまで大麻の所持は違法でしたが使用自体は処罰対象外でした。改正法により、大麻の使用も7年以下の懲役の対象となりました。
この改正により、日本のCBD市場は新たな発展段階を迎えることが期待されています。特に、花や穂から抽出されたCBD製品も、THC残留限度値を満たせば合法的に流通可能となったことで、製品の多様化が進む可能性があります。
その他の国々の動向
オーストラリア
2024年11月27日、オーストラリア上院において嗜好用大麻合法化法案が否決されました(賛成13、反対24)。この結果は合法化推進派にとっては後退となりましたが、上院で正式に採決されたこと自体が、同国の薬物政策における転換点として評価されています。
ポーランド
ポーランドでは、国会議員が15グラムまでの大麻所持と個人使用目的での1株の栽培について非犯罪化する提案を行いました。2024年9月には活動家が保健省幹部と面会し、暫定的な支持を得たと報告しています。EU加盟国として、ドイツの動向を見ながら政策検討を進めています。
チェコ共和国
当初は完全な商業的合法化を目指していたチェコ共和国ですが、EUおよび国連条約との整合性に関する懸念から、2024年中にドイツ型のモデル(個人栽培と所持の許可)への方針転換を行いました。
オランダ
2023年の選挙で右派政権が誕生しましたが、連立政権は規制されたコーヒーショップ試験プログラムの継続を確認しています。2025年4月には規制販売が完全に実施される予定です。
ウクライナ
2024年2月に医療用大麻が正式に合法化され、重篤な疾患やロシアとの紛争に起因するPTSD患者への処方が可能となりました。プログラムの本格的な展開は2025年初頭に予定されています。
2025年の展望
米国DEAスケジュール変更審理の再開見込み
ウクライナ医療用大麻プログラム本格始動
オランダのコーヒーショップ規制販売開始
ドイツでの商業パイロットプログラム進展
ドイツCanG法の効果検証結果発表
米国DEAスケジュール変更の最終決定可能性
2025年に向けて、世界の大麻政策は複数の重要な転換点を迎えます。米国では、トランプ政権下でのスケジュール変更の行方が最大の注目点です。大統領自身は「大麻に友好的」との姿勢を示していますが、指名されたDEA長官候補は合法化反対派であり、政策の方向性は依然として不透明です。
ドイツでは、2025年秋のCanG法効果検証が新政権の対応を左右します。現時点で国民の過半数が合法化維持を支持していることから、大幅な政策変更は困難との見方が有力です。フランクフルト市では、商業的な大麻販売を可能にする5年間のパイロットプログラムが進行中であり、その結果も今後の政策に影響を与えるでしょう。
アジアでは、タイの動向が注目されます。規制強化が進む一方で、約8,000店舗の既存事業者や12億ドル規模に成長した市場をどう扱うかは、政治的にも経済的にも困難な課題です。日本では、改正法施行後のCBD市場の発展と、医療用大麻へのアクセス改善の進展が注目されます。
まとめ
📝 2024年12月の世界大麻ニュースまとめ
ドイツ新政権がCanG法を維持決定、2025年秋の効果検証まで現行制度を継続
米国DEAがスケジュールIII移行公聴会を開始したが、審理は延期状態に
タイは娯楽用から医療用限定へ規制強化、12億ドル市場に影響
日本で改正大麻取締法施行、大麻由来医薬品が解禁される歴史的転換
2025年は各国で重要な政策決定が予想される転換点の年に
2024年は世界の大麻政策にとって、「改革の加速と揺り戻し」が同時に進行した年といえます。ドイツの画期的な合法化や日本の法改正といった前進がある一方、タイの規制強化や米国でのスケジュール変更の遅延など、課題も残されています。
専門家の間では、2025年は保守的な政権の台頭により、大麻自由化への抵抗が強まる可能性があるとの見方も出ています。しかし、世論調査では依然として多くの国で合法化支持が過半数を占めており、長期的なトレンドは変わらないとの見方が大勢です。今後も各国の動向を注視し、正確な情報をお届けしていきます。

