Schedule I〜V分類とは?アメリカDEAの規制薬物スケジュール制度を解説

Schedule分類(スケジュール分類)とは
Schedule分類(スケジュール分類)とは、アメリカ合衆国において規制薬物を5つのカテゴリー(Schedule I〜V)に分類する制度です。この分類システムは、1970年に制定された**規制物質法(Controlled Substances Act: CSA)**に基づいており、**麻薬取締局(DEA: Drug Enforcement Administration)**が管轄しています。
各薬物は「医療上の有用性があるか」「乱用の可能性がどの程度あるか」「依存性を引き起こすリスクがあるか」という3つの基準で評価され、Schedule I(最も厳しい規制)からSchedule V(最も緩やかな規制)まで分類されます。この分類は、研究許可、処方可否、刑罰の重さなどに直接影響を与える極めて重要な制度です。
目次
- Schedule I(スケジュール1)
- Schedule II(スケジュール2)
- Schedule III(スケジュール3)
- Schedule IV(スケジュール4)
- Schedule V(スケジュール5)
- 大麻(マリファナ)のSchedule分類と再分類議論
- CBD(カンナビジオール)の法的位置づけ
- THC(テトラヒドロカンナビノール)の分類
- スケジュール分類の変更プロセス
- 日本への影響と示唆
- よくある質問(FAQ)
Schedule I(スケジュール1)
定義と特徴
Schedule Iは最も厳しい規制カテゴリーです。このスケジュールに分類される物質は、以下の3つの条件を全て満たすとされています。
第一に、医療上の有用性が認められていないこと。アメリカ国内で医療目的での使用が認可されておらず、安全かつ効果的な治療薬として承認されていません。第二に、乱用の可能性が高いこと。依存や中毒を引き起こすリスクが非常に高いと判断されています。第三に、医療監督下での使用においても安全性が確立されていないこと。医師の処方があっても安全に使用できるエビデンスがないとされています。
代表的な物質
Schedule Iに分類されている代表的な物質には、ヘロイン、LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)、MDMA(エクスタシー)、ペヨーテ、シロシビン、そして**マリファナ(大麻)**が含まれます。特に大麻のSchedule I分類については、多くの州で医療用・嗜好用が合法化されている現状との矛盾が長年議論されてきました。
研究への影響
Schedule I物質の研究は極めて困難です。研究者はDEAから特別な許可を取得する必要があり、厳格なセキュリティ要件を満たさなければなりません。この規制が大麻研究の進展を大きく妨げてきたと批判されています。

Schedule II(スケジュール2)
定義と特徴
Schedule IIは乱用の可能性が高いが、医療上の有用性が認められている物質のカテゴリーです。これらの薬物は厳しい制限のもとで処方が可能ですが、乱用により重度の心理的または身体的依存を引き起こす可能性があります。
処方には紙の処方箋が必要で、リフィル(詰め替え処方)は認められていません。医師は患者を直接診察した上でのみ処方でき、処方量にも制限があります。
代表的な物質
Schedule IIにはオピオイド系鎮痛剤が多く含まれています。オキシコドン(OxyContin、Percocet)、フェンタニル(Sublimaze、Duragesic)、モルヒネ、メタドン、**ヒドロモルフォン(Dilaudid)**などが代表例です。
また、ADHD治療薬として処方されるアンフェタミン(Adderall、Dexedrine)、メチルフェニデート(Ritalin)、さらに**メタンフェタミン(Desoxyn)**もSchedule IIに分類されています。コカインも医療用麻酔薬として限定的に使用されるため、Schedule IIに含まれます。

Schedule III(スケジュール3)
定義と特徴
Schedule IIIは中程度から低程度の乱用・依存リスクを持つ物質のカテゴリーです。Schedule I・IIよりも乱用の可能性は低いですが、Schedule IV・Vよりは高いとされています。
処方規制はSchedule IIより緩やかで、電子処方が可能であり、6ヶ月以内に5回までのリフィルが認められています。
代表的な物質
Schedule IIIの代表例には、コデイン含有製品(1回量90mg未満)、ケタミン、アナボリックステロイド、テストステロンなどがあります。また、**ブプレノルフィン(Suboxone)**のようなオピオイド依存症治療薬もこのカテゴリーに含まれます。
大麻の再分類先として注目
2024年以降、大麻をSchedule IからSchedule IIIに再分類する動きが本格化しています。Schedule IIIに移行すれば、医療用途が公式に認められ、研究規制が緩和され、大麻事業者への税制優遇(IRC 280E条項からの除外)が実現します。
Schedule IV(スケジュール4)
定義と特徴
Schedule IVは乱用・依存リスクが低い物質のカテゴリーです。医療現場で広く処方されている薬物が多く含まれ、適切に使用すれば安全性が高いとされています。
代表的な物質
Schedule IVには主にベンゾジアゼピン系薬剤が含まれます。アルプラゾラム(Xanax)、ジアゼパム(Valium)、ロラゼパム(Ativan)、**クロナゼパム(Klonopin)**などの抗不安薬・睡眠薬がその例です。
また、睡眠薬のゾルピデム(Ambien)、鎮痛剤のトラマドール、**筋弛緩剤のカリソプロドール(Soma)**なども Schedule IVに分類されています。
Schedule V(スケジュール5)
定義と特徴
Schedule Vは最も規制が緩やかなカテゴリーです。乱用の可能性が最も低く、限定的な量の規制物質を含む医薬品が分類されています。
代表的な物質
Schedule Vには、コデイン含有咳止め薬(100mlあたり200mg未満)、**ジフェノキシレート(Lomotil)**のような下痢止め薬、**プレガバリン(Lyrica)**などが含まれます。
2018年には、エピディオレックス(Epidiolex)(大麻由来CBD医薬品)がFDA承認を受け、当初Schedule Vに分類されました。その後、2020年にはエピディオレックスは完全に規制対象外(descheduled)となっています。
大麻(マリファナ)のSchedule分類と再分類議論
現在の分類状況
大麻(マリファナ)は1970年のCSA制定以来、Schedule Iに分類されています。これは「医療上の有用性がなく、乱用の可能性が高い」という判断に基づいていますが、現在38州以上で医療用大麻が合法化されている現実との矛盾が指摘されています。
再分類の動き(2022年〜現在)
2022年10月、バイデン大統領がHHS(保健福祉省)とDEAに対し、大麻のスケジュール分類を見直すよう指示しました。2023年8月、HHSは詳細な科学的検討の結果、大麻をSchedule IIIに再分類することを勧告しました。
2024年5月、司法省(DOJ)とDEAは大麻をSchedule IIIに移行する規則案を正式に公表しました。この提案に対して約43,000件のパブリックコメントが寄せられ、DEAの規則変更としては史上最多となりました。大半のコメントは再分類を支持するか、さらに進んで完全な規制撤廃(descheduling)を求めるものでした。
2025年の最新動向
2025年1月に予定されていた公聴会は、手続き上の問題から延期されました。その後、2025年12月18日、トランプ大統領は大統領令を発令し、司法省に対してSchedule IIIへの再分類手続きを迅速に完了するよう指示しました。
ただし、この大統領令自体が大麻を再分類するものではなく、規則制定プロセスの加速を命じるものです。最終的な規則が発効するまで、大麻は引き続きSchedule I物質として連邦法上は違法のままです。
再分類の影響
大麻がSchedule IIIに移行した場合、以下の変化が予想されます。
税制面では、IRC 280E条項の適用外となり、大麻事業者が通常の事業経費を連邦税申告で控除できるようになります。これは業界にとって大きな財政的救済となります。研究面では、研究許可取得が容易になり、臨床試験が加速する可能性があります。医療面では、連邦政府が大麻の医療的価値を公式に認めることになります。
一方、再分類だけでは嗜好用大麻は合法化されません。州間取引も引き続き連邦法違反となり、州法と連邦法の矛盾は完全には解消されません。

CBD(カンナビジオール)の法的位置づけ
2018年農業法令による変更
2018年農業法令(Farm Bill)により、THC含有量0.3%以下の産業用ヘンプがCSAの「マリファナ」定義から除外されました。これにより、ヘンプ由来のCBD製品は連邦法上は規制物質とはみなされなくなりました。
FDAは、エピディオレックスの新薬承認審査において、CBDに乱用の可能性がほとんどないことを確認しています。
注意点
ただし、CBD製品の規制は複雑です。FDAは食品や栄養補助食品へのCBD添加を原則として認めていません。また、州によってはCBD製品に独自の規制を設けている場合があります。
THC(テトラヒドロカンナビノール)の分類
THCは大麻の主要な精神活性成分であり、独立した規制物質としてSchedule Iに分類されています。これは大麻植物全体の分類とは別の扱いです。
ただし、合成THC医薬品の一部は異なる分類がされています。**ドロナビノール(Marinol)とナビロン(Cesamet)**はSchedule IIIに分類されており、化学療法に伴う吐き気やAIDSによる食欲減退の治療に処方されています。
スケジュール分類の変更プロセス
規制物質のスケジュールは固定されたものではなく、科学的エビデンスに基づいて変更することができます。変更には2つの経路があります。
行政手続きでは、DEA、HHS、または外部の請願者が分類変更を提案し、科学的審査と規則制定プロセスを経て変更されます。大麻の再分類議論はこの経路で進められています。立法手続きでは、連邦議会が法律を制定することで直接分類を変更できます。
日本への影響と示唆
アメリカのSchedule分類制度は、日本の麻薬・向精神薬規制にも間接的な影響を与えています。国際条約との整合性や、FDA承認薬の日本での承認可否などに関連します。
2024年12月に施行された日本の改正大麻取締法では、大麻由来医薬品(エピディオレックスなど)の使用が条件付きで解禁されました。これは、アメリカでのCBD医薬品承認や大麻の医療価値に関する国際的議論の影響を受けたものと考えられます。
よくある質問(FAQ)
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