大麻草採取栽培者免許制度が始動|2026年3月1日施行の全容と事業者への影響

この記事のポイント
✓ 2026年3月1日、大麻草採取栽培者の新免許制度が施行。産業用の「第一種」と医薬品用の「第二種」に区分
✓ 第一種免許はΔ9-THC濃度0.3%以下の種子使用が条件。申請先は都道府県知事
✓ CBD事業者はTHC残留基準値(油脂10ppm・水溶液0.1ppm・その他1ppm)の管理が引き続き必須
2026年3月1日、改正大麻取締法(正式名称:大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律)の第2段階施行が始まり、日本の産業大麻をめぐる法環境が大きく塗り替えられた。繊維・食品・化粧品などの原材料として大麻草を栽培するためには、新たに「大麻草採取栽培者」の免許が必要となる。2024年12月12日の第1段階施行ではTHC残留基準や使用罪の新設が大きな話題となったが、今回の第2段階は栽培する側の制度整備であり、日本の産業大麻市場の育成に向けた重要な一手だ。本記事では制度の全容と実務的な影響を解説する。
施行の全体像
改正大麻取締法は2023年12月13日に公布され、その施行は段階的に行われてきた。まず2024年12月12日の第1段階施行では、最も注目を集めた「大麻の使用罪の新設」と「成分規制(THC残留基準値の設定)」が先行して実施された。それまで日本では部位ごとに規制対象を定めていたが、改正によって有効成分であるΔ9-THCの含有量で判断する国際基準へと移行した。
第2段階である2026年3月1日の施行は、栽培サイドの制度整備がメインテーマだ。従来の「大麻取扱者」免許に替わる形で「大麻草採取栽培者」という新しい免許区分が設けられ、産業利用と医薬品用途でそれぞれ異なるルートが明確化された。この整備によって、繊維・食品・化粧品・建築資材・燃料などを目的としたヘンプ栽培が、明確な法的枠組みの下で行えるようになった。
改正大麻取締法が国会で成立・公布
第1段階施行:使用罪の新設、THC残留基準値(成分規制)の導入、大麻由来医薬品の解禁
第2段階施行:大麻草採取栽培者の免許制度(第一種・第二種)が開始。大麻草の種子に関する規制も整備
2段階施行によって法整備が完成した形となり、日本でも産業用大麻が国際標準に近い形で活用される土台が整った。次のセクションでは、新免許制度の具体的な内容を見ていこう。
新免許制度の詳細
今回の改正で新設された「大麻草採取栽培者」免許は、栽培目的に応じて主に2つの区分に分けられる。
第一種大麻草採取栽培者は、「大麻草から製造される製品の原材料を採取する目的」で大麻草を栽培する事業者・農家を対象とする。具体的な製品用途としては、繊維・食品・飲料・化粧品・建築資材・飼料・肥料・燃料などが挙げられており、幅広い産業分野への参入が可能だ。免許は都道府県知事が交付し、申請窓口は栽培地を管轄する保健所または都道府県の薬務担当部局となる。
第二種大麻草採取栽培者は、「医薬品の原料を採取する目的」で栽培する事業者を対象とし、免許交付権者が厚生労働大臣となる点が大きな違いだ。2024年12月の第1段階施行で大麻由来医薬品の製造・施用に関する法的枠組みが整備されたことに伴い、国内での医薬品原料栽培を促進する狙いがある。審査基準はより厳格で、国レベルの許認可管理が求められる。
また、研究目的で大麻草を栽培する場合は「大麻草研究栽培者免許」が別途必要で、こちらも厚生労働大臣による免許となる。なお、第一種免許で栽培した大麻草を栽培地外に持ち出す際は都道府県知事の許可が必要であり、さらに栽培した大麻草を製品に加工する際には厚生労働大臣の別途許可が求められる点に注意が必要だ。
| 区分 | 目的 | 免許権者 | THC種子基準 |
|---|---|---|---|
| 第一種大麻草採取栽培者 | 産業用製品の原材料(繊維・食品・化粧品等) | 都道府県知事 | 0.3%以下 |
| 第二種大麻草採取栽培者 | 医薬品の原料 | 厚生労働大臣 | 別途基準 |
| 大麻草研究栽培者 | 研究・試験目的 | 厚生労働大臣 | 別途基準 |
種子に関する規制も今回の施行で整備された。第一種免許においては、使用できる種子のΔ9-THC濃度が乾燥重量比で0.3%以下に制限される。これはEUや米国のヘンプ基準と同水準であり、日本が国際的な産業大麻ルールに準拠した形だ。

THC基準値と製品への影響
栽培免許の新設に並行して重要なのが、2024年12月の第1段階施行で導入されたTHC残留基準値の管理だ。大麻草由来製品の流通において、最終製品に含まれるΔ9-THC総量が法定の残留限度値を超えないことが必須条件となっている。
製品区分別 THC残留限度値(2024年12月12日施行)
油脂・粉末(常温で液体の油脂を含む):10ppm(百万分の10)
水溶液:0.1ppm(一億分の10)
その他(固形食品・スキンケア等):1ppm(百万分の1)
この基準はCBDオイルやCBDグミなど既存製品に直接影響する。CBD原料の多くは海外(主に欧州・北米)からの輸入品であり、現地の規制基準は日本より緩いケースが多いため、輸入時の品質管理・第三者機関による分析証明書(CoA)の確認が引き続き重要だ。基準値を超えた製品は「麻薬」として扱われ、販売・所持ともに違法となる。
CBD自体はΔ9-THCではないため規制対象外だが、フルスペクトラムやブロードスペクトラムタイプの原料を使用する際には、THCの混入量を厳密に管理する必要がある。分離精製度の高いCBDアイソレートを使用している製品は、この観点でリスクが低い。
CBD事業者への影響
今回の2026年3月1日施行は、既存のCBD輸入・販売事業者にとって直接的な義務を新たに課すものではない。CBD製品は依然として合法であり、THC残留基準値管理さえ適切に行えば従来通りの営業が可能だ。
一方で、中長期的には日本国内でのヘンプ原料調達が現実的な選択肢になり得る。第一種免許のもとで栽培された国産ヘンプから抽出したCBD原料を使用すれば、トレーサビリティの向上や「国産」付加価値を訴求できるビジネスモデルが生まれる可能性がある。農家やアグリ系スタートアップと連携したサプライチェーン構築は、今後の競争優位性を左右するテーマの一つとなるだろう。
📊 CBD事業者が今すぐ確認すべきポイント
輸入原料のCoA確認:仕入れるCBD原料のTHC含有量が日本の残留基準値内であるかを第三者機関の証明書で確認
製品区分の再確認:自社製品が「油脂」「水溶液」「その他」のどの区分に該当するかを整理し、適切な基準値を把握
国内栽培動向のモニタリング:第一種免許取得者・産業大麻農家の動向を注視し、国産原料調達の可能性を検討
農業分野では、北海道や栃木など伝統的なヘンプ産地での免許申請が注目される。従来の大麻取扱者免許は繊維目的に限定された都道府県知事免許だったが、今回の制度変更によって食品・化粧品・建築資材など幅広い用途での商業栽培が法的に整備された。農水省も産業用大麻の利活用を促進する方向性を示しており、今後は栽培者・実需者・メーカーをつなぐエコシステムの形成が進むと考えられる。

申請手続きと注意点
第一種大麻草採取栽培者免許の申請は、各都道府県の薬務担当部局(または管轄保健所)に対して行う。愛知県の事例では申請手数料が22,200円、標準処理期間は保健所経由の場合39日間(本庁処理28日+書類送付11日)とされている。他の都道府県でも類似の手続き・手数料が設定されているが、審査基準の詳細は都道府県ごとに若干異なる場合があるため、事前に管轄部局へ確認することを強く推奨する。
申請時に注意が必要なのは、使用する種子の証明書類だ。Δ9-THC濃度が0.3%以下であることを示す分析結果または品種証明書を準備する必要がある。国内で流通している公認品種(欧州認証品種など)であれば対応しやすいが、海外から種子を持ち込む場合は検疫・輸入手続きが別途発生する。
また、第一種免許では大麻草の加工(搾油・粉砕など)に別途、厚生労働大臣の許可が必要な点は盲点になりやすい。栽培して繊維のみを利用する場合は都道府県知事免許で完結するが、食品・化粧品向けに加工する場合はより上位の許認可取得が求められる。事業計画の段階から許認可フローを設計しておくことが不可欠だ。

今後の展望
日本の大麻取締法が「部位規制」から「成分規制」へ転換し、さらに栽培制度が整備されたことで、産業大麻分野の参入障壁は着実に下がっている。世界市場では産業用ヘンプの活用が建築・自動車・ファッション・食品と多方面で進んでおり、日本もその流れに乗る条件が整ってきた。
第二種免許による医療用大麻の国内原料栽培も、製薬企業やバイオ系スタートアップの動向次第では今後数年で本格化する可能性がある。2024年12月に解禁された大麻由来医薬品(エピディオレックス等)の普及と連動して、サプライチェーン全体の国産化が議論のテーブルに上ってくるだろう。
一方、規制の複雑さは依然として課題だ。免許・許可・基準値が多層的に絡み合っており、特に中小の農家やスタートアップが独力で対応するのは容易ではない。法律や申請のコンサルティング需要も今後高まることが予想され、支援体制の整備が業界全体の成長スピードを左右するカギとなるだろう。
よくある質問
Q. 今まで大麻草を栽培していた農家は何が変わるのですか?
従来の「大麻取扱者免許」制度は廃止され、2026年3月1日以降は「第一種大麻草採取栽培者免許」への切り替えが必要となります。繊維のみを目的とした栽培は都道府県知事への申請で対応できますが、食品・化粧品への加工を行う場合は別途、厚生労働大臣の許可も必要です。既存の栽培者には経過措置が設けられているため、各都道府県の薬務担当部局に確認してください。
Q. CBD製品を輸入・販売する事業者は新たな手続きが必要ですか?
CBD製品の輸入・販売事業者に対して、今回の施行で新たに求められる許認可はありません。ただし、製品に含まれるΔ9-THC総量が規定の残留限度値(油脂:10ppm、水溶液:0.1ppm、その他:1ppm)内であることを引き続き確認・管理することが必要です。原料の分析証明書(CoA)を取得・保管する習慣を維持してください。
Q. 個人が自給目的でヘンプを栽培することはできますか?
個人の自給目的であっても、大麻草の栽培には免許が必要です。無免許での栽培は大麻取締法違反となり、懲役刑の対象となります。免許取得には農地・設備・管理体制などの要件を満たす必要があり、個人での取得難易度は高いとされています。
Q. 種子の入手はどうすればよいですか?
第一種免許で使用できる種子は、Δ9-THC濃度が0.3%以下であることが条件です。欧州の認証品種(EU認定ヘンプ品種一覧に掲載された品種)が一般的な選択肢ですが、海外からの輸入には植物検疫・輸入手続きが必要です。農林水産省や都道府県の農業試験場が提供する相談窓口を活用することを推奨します。
Q. 産業大麻の市場規模はどのくらいですか?
日本国内の産業大麻市場は依然として黎明期ですが、改正法の施行による規制整備と、CBD市場の拡大(2025年には1,000億円規模とも予測)が追い風となり、国産原料調達の需要が今後高まることが見込まれます。農業・食品・建築・美容など複数産業での活用が期待されており、参入機会は広がっています。
まとめ
✅ 2026年3月1日、大麻草採取栽培者の新免許制度(第一種・第二種)が施行された
✅ 第一種:都道府県知事免許、産業用途(繊維・食品・化粧品等)、種子THC 0.3%以下
✅ 第二種:厚生労働大臣免許、医薬品原料目的、審査基準が厳格
✅ CBD販売事業者への直接的な新規義務はなし。THC残留基準値(油脂10ppm等)の管理を継続すること
✅ 申請は都道府県の薬務担当部局へ。手数料22,200円〜、処理期間約30〜39日
本記事は2026年3月25日時点の情報に基づいています。法律・規制情報は随時変更される場合があります。最新情報は厚生労働省公式サイトおよび管轄の都道府県薬務担当部局にてご確認ください。
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