医療大麻(Medical Cannabis)とは?日本の規制と世界の現状

この記事のポイント
✓ 医療大麻は医師の処方のもと、特定の疾患治療に使用される大麻製品
✓ 日本では2023年法改正で条件付き解禁、ただし2025年10月時点で承認製品なし
✓ 世界38州以上で医療大麻プログラムが運用され、難治性てんかんや慢性疼痛に使用
**医療大麻(Medical Cannabis)**とは、医師の処方のもとで、特定の疾患や症状の治療目的で使用される大麻およびその関連製品を指します。2023年の法改正(2024年12月施行)により、日本でも医療大麻の使用が法的に可能になりました。本記事では、医療大麻の基礎知識から、日本の最新規制、海外の状況、実際の医薬品例まで、包括的に解説します。
重要な注意事項: この記事は情報提供を目的としており、医学的アドバイスの代わりにはなりません。医療大麻の使用を検討している方は、必ず医療専門家にご相談ください。2025年10月時点で、日本では承認された大麻由来医薬品はまだありません。承認されていない大麻製品の使用は違法です。
目次
医療大麻とは:定義と基本概念
医療大麻の定義
医療大麻(Medical Cannabis / Medical Marijuana)とは、医師の診断と処方のもとで使用される大麻製品を指します。単なる大麻の使用とは明確に区別され、厳格な医学的管理下で行われます。医療大麻として認められるためには、専門医による診断と処方箋が必須です。そして、特定の疾患や症状の治療を明確な目的としている必要があります。
さらに、科学的な臨床試験や研究データに基づいた使用であることが求められます。用量と使用方法が厳密に管理され、薬事当局(FDA、EMAなど)による承認または認可を受けている必要があります。これらの要件を満たすことで、医療大麻は単なる嗜好品ではなく、正式な医薬品として扱われます。
嗜好用大麻との違い
医療大麻と嗜好用大麻の違いを明確に理解することが重要です。最も大きな違いは使用目的にあります。医療大麻は治療・症状緩和を目的としていますが、嗜好用大麻は娯楽・リラクゼーションを目的としています。
医療大麻では医師の処方が必要であり、医学的根拠に基づいた使用が求められます。一方、嗜好用大麻(合法地域では)処方は不要で、個人の裁量で使用されます。用量管理についても、医療大麻は厳密に管理されますが、嗜好用は個人の判断に委ねられます。日本の合法性については、医療大麻は2023年12月から条件付きで可能になりました。しかし、嗜好用大麻は依然として違法です。
| 項目 | 医療大麻 | 嗜好用大麻 |
|---|---|---|
| 使用目的 | 治療・症状緩和 | 娯楽・リラクゼーション |
| 処方 | 医師の処方が必要 | 処方不要(合法地域) |
| 医学的根拠 | 臨床試験・研究に基づく | 不要 |
| 用量管理 | 厳密に管理 | 個人の裁量 |
| 日本の合法性 | 2023年12月から条件付き可能 | 違法 |
この表からわかるように、医療大麻と嗜好用大麻は本質的に異なるものです。医療大麻は厳格な医学的管理のもとで使用される正式な医療手段であることを理解することが重要です。
医療大麻の歴史:古代から現代まで
古代の医療使用
大麻の医療使用は数千年前まで遡ります。歴史的記録によると、紀元前2737年の中国では、神農本草経に鎮痛・抗炎症薬として記載されていました。紀元前1500年のインドでは、アーユルヴェーダで不安・痛み治療に使用されていたことが分かっています。同じく紀元前1550年のエジプトでは、エーベルス・パピルスに医療用途の記載が残されています。中世ヨーロッパでも、痛み止めや麻酔薬として広く使用されていました。
近代医療への導入
19世紀に入ると、大麻は西洋医学に正式に導入されます。1839年、アイルランドの医師ウィリアム・オショネシーが西洋医学に大麻を紹介しました。1850年代には、アメリカとヨーロッパで大麻チンキが薬局方に収載されます。当時の主な用途は、痛み、けいれん、不眠、食欲不振でした。
禁止の時代
しかし、20世紀前半に状況が大きく変わります。1920-30年代には、各国で大麻の規制が強化されました。1961年には、国連麻薬に関する単一条約で国際的に規制されます。1970年には、アメリカで規制物質法により Schedule I(医療使用不可)に分類されました。この分類により、医療大麻の研究と使用は事実上不可能になりました。
医療大麻の復活
1990年代以降、医療大麻の再評価が始まります。1996年、カリフォルニア州が現代初の医療大麻法を制定しました。2000年代には、カナダ、イスラエル、オランダなどで医療大麻プログラムが開始されます。2010年代には、世界各国で医療大麻の合法化が加速しました。そして2023年、日本でも医療大麻が条件付きで解禁されました。
医療大麻の使用目的:対象疾患と症状
FDA・各国当局が承認している適応症
医療大麻は、様々な疾患や症状に対して使用されています。ここでは、FDA(アメリカ食品医薬品局)や各国当局が承認している主な適応症を紹介します。
神経系疾患では、難治性てんかんが最も重要な適応症です。エピディオレックス(Epidiolex)というCBD製剤が使用されます。対象となるのは、レノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群、結節性硬化症複合体です。FDA(2018年)、欧州医薬品庁、日本(2023年)で承認されています。
多発性硬化症(MS)の痙縮に対しては、サティベックス(Sativex)が使用されます。この製剤はTHCとCBDの1:1配合で、カナダ(2005年)、EU諸国、オーストラリアで承認されています。パーキンソン病については、振戦、筋硬直、睡眠障害への効果が研究段階で調査されています。
がん関連症状も重要な適応領域です。化学療法誘発性の悪心・嘔吐に対しては、マリノール(Marinol / ドロナビノール)やセサメット(Cesamet / ナビロン)という合成THC製剤が使用されます。これらはFDA(1985年)で承認されています。がん性疼痛では、オピオイドが効きにくい痛みへの補助療法として、THC・CBD製剤が研究・使用されています。食欲不振・体重減少(悪液質)に対しても、エイズ関連の食欲不振を含め、THCの食欲増進作用が活用されています。
慢性疼痛では、神経障害性疼痛(糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛、脊髄損傷後の痛み)、線維筋痛症(カナダ、イスラエルなどで使用)、関節炎(リウマチ性関節炎、変形性関節症)が対象となっています。
精神疾患では、PTSD(心的外傷後ストレス障害)がカナダ、イスラエルで承認されています。フラッシュバックや不眠への効果が認められています。不安障害については、主にCBD製剤が研究対象となっており、一部の国で使用が認められています。
その他の疾患として、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)がイスラエルで広く使用されています。緑内障に対しては眼圧降下作用がありますが、効果の持続時間が短いため、第一選択薬ではありません。てんかん以外の小児疾患(自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害)については、研究段階です。

日本における医療大麻の現状
大麻取締法改正の概要
2023年12月6日成立、2024年12月12日施行の大麻取締法改正により、日本でも医療大麻の使用が法的に可能になりました。今回の改正で最も重要な変更は、規制の基準が「部位(花・葉・根)」から「成分(THC)」に変更されたことです。この変更により、THCを含まないCBD製品は部位に関わらず合法となりました。また、医療用大麻の使用が条件付きで可能になりました。
ただし、2025年10月時点で、日本で承認された大麻由来医薬品はまだありません。承認されていない大麻製品の使用は違法であり、大麻使用罪(7年以下の懲役)で処罰されます。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 規制基準 | 部位規制 | 成分規制(THC基準) |
| 規制対象 | 大麻草の花・葉・根(茎・種子は除外) | THCを含有する製品(部位に関わらず) |
| 茎・種子 | 規制対象外 | THC含有なら規制対象 |
| CBD製品 | 茎・種子由来なら合法 | THC含有量で判断 |
| 医療用途 | 全面禁止 | 承認医薬品は使用可能 |
改正の主なポイントは以下の通りです。第一に、成分規制(THC基準)への移行により、大麻草の部位に関わらず、THCを含有するものを規制します。THCを含まないCBD製品は、部位に関わらず規制対象外です。ただし、微量THC混入には注意が必要です。第二に、医療用大麻の使用が解禁されました。大麻草由来医薬品のうち、安全性と有効性が確認されたものの使用が可能になりました。厚生労働大臣の承認を受けた医薬品に限定されます。
第三に、大麻使用罪が新設されました(7年以下の懲役)。これまでの所持・譲渡罪に加え、使用も処罰対象になりました。ただし、医療用の承認医薬品の使用は除外されます。第四に、大麻由来医薬品の製造・施用・処方が可能になりました。医師の処方のもと、承認された医薬品の使用が可能です。
医療用大麻の使用条件としては、承認医薬品に限定されます。厚生労働大臣の承認を受けた医薬品のみが対象です。重要なのは、2025年10月時点で承認された大麻由来医薬品はまだないということです。また、医師の処方が必須であり、専門医による診断と処方が必要です。適応症が明確に認められた患者のみが対象となります。適応疾患も承認された医薬品の適応症に限られます。今後、難治性てんかん、慢性疼痛、MS、がん関連症状などへの拡大が検討される可能性があります。厳密な管理体制のもと、処方、調剤、使用が厳格に記録・管理されます。麻薬及び向精神薬取締法に準じた扱いとなります。
エピディオレックスの日本での状況
エピディオレックスは、大麻草から抽出した純CBD(THC不含)の経口液剤です。製造元はジャズ・ファーマシューティカルズで、海外では難治性てんかんの治療薬として広く使用されています。日本では2022年12月に第3相臨床試験が開始されました。対象は62名の小児患者でした。しかし、2024年8月、主要評価項目未達という結果になりました。発作頻度の有意な減少を示すことができませんでした。現在、承認申請はなされておらず、承認の見通しは不透明です。
一方、海外での承認状況は好調です。アメリカではFDA承認(2018年)、EUでは欧州医薬品庁承認(2019年)を取得しています。その他30カ国以上で承認済みです。日本での臨床試験の失敗は残念な結果ですが、今後の再評価や他の適応症での試験が期待されます。
今後の展望
期待される展開としては、エピディオレックスの再評価と承認申請の可能性があります。また、他のCBD製剤(サティベックスなど)の臨床試験開始も考えられます。適応疾患の拡大(慢性疼痛、MS、がん関連症状など)や、厳格な条件下でのTHC含有製剤の検討も今後の課題です。
しかし、解決すべき課題も多くあります。臨床試験の実施により、日本人患者での有効性・安全性データの蓄積が必要です。偏見・スティグマの払拭も重要で、「大麻=違法薬物」という社会的認識の変革が求められます。医療従事者への教育により、適切な処方と患者管理のための知識普及も必要です。処方ガイドラインの整備、標準的な治療プロトコルの確立、安定供給体制の構築、保険適用の検討など、多岐にわたる課題があります。

世界の医療大麻プログラム
北米
アメリカでは、連邦レベルではSchedule I(医療使用不可)に分類されています。しかし、2024年にSchedule IIIへの再分類が検討中です。FDA承認の大麻由来医薬品(エピディオレックス、マリノール、セサメット)は合法です。
州レベルでは、38州とワシントンD.C.で医療大麻が合法です(2024年時点)。各州で独自のプログラムを運営しており、適応疾患、購入量、栽培可否は州により異なります。カリフォルニア(1996年~)は最も歴史が長く、広範な適応症を認めています。コロラド(2000年~)では医療・嗜好用の両方が合法です。フロリダ(2016年~)では、慢性疼痛、PTSD、がんなどが対象となっています。
カナダは、2001年に医療大麻プログラムを開始しました。2018年には嗜好用も含めて完全合法化し、大麻法が施行されました。医師の診断書で医療用大麻カードを取得でき、認可生産者(Licensed Producers)から購入します。保険適用される場合もあります。適応症は、慢性疼痛、がん、てんかん、MS、PTSD、関節炎などです。
ヨーロッパ
ドイツは、2017年に医療大麻の保険適用を開始しました。重症患者に対して医療保険が適用され、医師の処方で薬局から入手可能です。適応症は、慢性疼痛、MS、がん、PTSD、食欲不振です。
オランダでは、2003年に政府管理の医療大麻プログラムが開始されました。標準化された大麻製品を薬局で処方しており、品種、THC/CBD濃度が明確に管理されています。
イギリスは、2018年に医療大麻を合法化しました。専門医による処方が必要ですが、実際の処方例は少ない状況です(規制が厳しい)。サティベックスは2010年から使用可能です。その他のヨーロッパ諸国では、イタリア(2013年~)、ポーランド(2017年~)、デンマーク(2018年~)、ギリシャ(2017年~)、ポルトガル(2018年~)で医療大麻が合法化されています。
中東・アジア
イスラエルは、世界最先端の医療大麻研究国です。1990年代から医療大麻プログラムを実施しており、約10万人の患者が医療大麻を使用しています(2023年時点)。がん、PTSD、慢性疼痛、クローン病など広範な適応があります。ラファエル・ミシューラム博士の功績もあり、研究が非常に盛んです。
タイは、2018年にアジア初の医療大麻合法化を実現しました。2022年には個人使用も条件付きで合法化されました。医療用としては、がん、てんかん、慢性疼痛が対象です。
オーストラリアは、2016年に医療大麻を合法化しました。処方薬として厳格に管理され、慢性疼痛、がん、てんかん、MS、緩和ケアが適応症です。

医療大麻製品の実例
承認医薬品
**エピディオレックス(Epidiolex)**は、CBD(99%以上)を含む経口液剤(100mg/mL)です。難治性てんかんに適応があり、アメリカ(2018年)、EU(2019年)、日本(2023年)で承認されています。臨床効果としては、発作頻度を約40-50%減少させます。
**サティベックス(Sativex)**は、THC 2.7mg + CBD 2.5mg(1スプレーあたり)を含む口腔内スプレーです。多発性硬化症の痙縮に適応があり、カナダ、イギリス、ドイツなど30カ国以上で承認されています。臨床効果としては、痙縮、痛み、睡眠の質の改善が認められています。
**マリノール(Marinol / ドロナビノール)**は、合成THC(デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール)のカプセル(2.5mg、5mg、10mg)です。化学療法の悪心・嘔吐、エイズ患者の食欲不振に適応があり、アメリカ(1985年)で承認されています。特徴として、天然大麻ではなく合成THCである点が挙げられます。
**セサメット(Cesamet / ナビロン)**は、合成THC類似物質(ナビロン)のカプセル(1mg)です。化学療法の悪心・嘔吐に適応があり、アメリカ、カナダ、イギリスで承認されています。マリノールよりも効果が長持ちするという特徴があります。
医療大麻の形態
処方される形態は国・地域により異なります。乾燥大麻(Dried Cannabis)は、カナダ、ドイツ、オランダなどで処方され、吸入(蒸気化)または調理に使用されます。オイル・チンキ剤は、舌下摂取または経口摂取で、CBD、THC、または混合比が明確です。カプセルは、正確な用量管理が可能ですが、効果発現まで時間がかかります。スプレー(口腔内スプレー、サティベックスなど)は、吸収が早いという特徴があります。局所塗布剤(クリーム、バーム、パッチ)は、関節痛、筋肉痛に使用されます。
医療大麻の安全性と副作用
一般的な副作用
医療大麻の使用に伴う副作用は、他の医薬品と同様に存在しますが、多くは軽度から中等度のものです。最も一般的な副作用としては、眠気や倦怠感、めまいが報告されています。また、口の渇き、下痢、食欲の変化、吐き気などの症状が現れることもあります。これらの副作用は通常、用量調整や使用の継続により軽減されることが多いとされています。
一方、重大な副作用は稀ですが、注意が必要です。エピディオレックスの使用では肝機能障害が報告されており、定期的な肝機能検査が推奨されています。また、統合失調症などの精神疾患を持つ患者では精神症状が悪化する可能性があり、高齢者では心血管系への影響が懸念されています。
使用上の注意
医療大麻の使用には、禁忌や慎重投与が必要な対象者が存在します。妊娠中・授乳中の女性は、胎児や乳児への影響が懸念されるため使用を避けるべきです。また、25歳未満の若年者は脳の発達段階にあるため、慎重な判断が求められます。精神疾患の既往がある方、心疾患のある方、肝機能障害のある方も、医療大麻の使用には特に注意が必要です。これらの方々が医療大麻を検討する場合は、必ず専門医と十分に相談し、リスクとベネフィットを慎重に評価する必要があります。
薬物相互作用
医療大麻は肝臓の代謝酵素(CYP450)に影響を与えるため、他の薬剤との相互作用に注意が必要です。特に注意が必要な薬剤として、抗てんかん薬(クロバザム、バルプロ酸など)、抗凝固薬(ワルファリン)、免疫抑制剤、一部の抗うつ薬、鎮静薬などが挙げられます。これらの薬剤と併用すると、薬の効果が強まったり弱まったりする可能性があります。医療大麻の使用を検討する際は、必ず医師に現在服用中のすべての薬を伝えてください。適切な用量調整や薬剤の選択により、安全に使用できる可能性があります。
医療大麻の課題と論点
科学的課題
医療大麻の最も大きな課題の一つは、臨床試験データの不足です。大規模なランダム化比較試験(RCT)が少なく、特に長期使用の安全性データが不十分な状況が続いています。多くの疾患において、最適な用量や投与法がまだ確立されておらず、エビデンスに基づいた標準的な治療プロトコルの整備が急務となっています。
また、天然大麻製品は成分が不均一であるという標準化の問題もあります。製品によってTHC/CBD比やテルペン含有量が異なるため、一貫した治療効果を保証することが難しい状況です。プラセボ効果の影響も無視できません。医薬品としての品質管理と標準化が、今後の重要な課題です。
社会的課題
社会的スティグマ(偏見)も大きな障壁となっています。「大麻=違法薬物」という先入観が根強く、患者が医療大麻の使用を公言しにくい状況があります。また、医療従事者の間でも医療大麻に関する知識が不足しており、適切な処方や患者管理ができる医師が限られているのが現状です。
さらに、アクセスの問題も深刻です。多くの国や地域で医療大麻が保険適用されず、高額な治療費が患者の負担となっています。処方できる医師が限られていることや、医薬品の供給が不安定であることも、患者が適切な治療を受ける上での障害となっています。
法的・倫理的課題
国際的には、1961年の国連麻薬に関する単一条約と各国の医療大麻合法化との整合性が課題となっています。2020年にWHOが大麻の再分類を勧告し、各国で法整備が進む中、国際的な調和をどのように図るかが重要な論点です。
また、医療目的と娯楽目的の線引きの難しさも指摘されています。医療大麻プログラムが嗜好用大麻の入手手段として悪用されるリスクがあり、適切な管理体制の構築が求められています。医療の必要性と薬物乱用防止のバランスをどのように取るかは、各国が直面する共通の課題です。
FAQ
はい、2023年の法改正(2024年12月施行)により、法的には条件付きで使用可能になりました。ただし、2025年10月時点では、日本で承認された大麻由来医薬品はまだありません。エピディオレックスは臨床試験段階で、承認申請には至っていません。今後、承認される医薬品が出てくることが期待されています。
最も大きな違いは使用目的です。医療大麻は医師の処方のもと、特定の疾患や症状の治療を目的としています。一方、嗜好用大麻は娯楽やリラクゼーション目的で使用されます。医療大麻は用量が管理され、医学的根拠に基づいて使用されます。日本では医療大麻は条件付きで合法になりましたが、嗜好用大麻は依然として違法です。
主に以下の疾患・症状で使用されています:難治性てんかん(レノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群)、多発性硬化症の痙縮、化学療法による悪心・嘔吐、慢性疼痛(神経障害性疼痛、線維筋痛症など)、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)などです。国や地域により認められている適応症は異なります。
使用する製剤によります。CBD製剤(エピディオレックスなど)は精神活性作用がなく、「ハイ」にはなりません。一方、THCを含む製剤(サティベックス、マリノールなど)は多幸感や精神活性作用を引き起こす可能性がありますが、医療用は用量が管理され、治療効果とのバランスが考慮されています。
CBD製剤は依存性がほとんどありません。THC含有製剤は長期使用で軽度の依存性が生じる可能性がありますが、オピオイドなどの他の鎮痛剤と比べると依存性は低いとされています。医師の指導のもと、適切に使用することが重要です。
まとめ
📝 この記事のまとめ
医療大麻は医師の処方のもと、特定の疾患治療に使用される正式な医薬品です
日本では2023年の法改正により法的には可能になりましたが、2025年10月時点で承認された製剤はまだありません
世界では38のアメリカの州、カナダ、ドイツ、イスラエルなど多くの国で医療大麻プログラムが運用されています
難治性てんかん、多発性硬化症、慢性疼痛、がん関連症状、PTSDなど多様な疾患に使用されています
科学的根拠の蓄積、社会的スティグマの解消、アクセスの改善が今後の課題です
医療大麻は、長い歴史を経て、現代医療に再び組み込まれつつあります。日本でも2023年の法改正により、医療大麻の使用が条件付きで可能になり、難治性てんかん患者に希望をもたらしています。医療大麻は万能薬ではありませんが、従来の治療法で効果が不十分だった患者にとって、新たな選択肢となる可能性を秘めています。科学的研究の進展と、適切な規制のもとでの使用拡大が期待されます。
注意事項: この記事は情報提供を目的としており、医学的アドバイスの代わりにはなりません。医療大麻の使用を検討している方は、必ず医療専門家にご相談ください。

