アシュワガンダとは|ストレス軽減効果の科学的エビデンスと日本での規制状況

この記事のポイント
✓ 2024年のメタアナリシス(873名)で、ストレス・不安・コルチゾールの有意な低下が確認されました
✓ 250〜600mg/日を8週間摂取することで、知覚ストレス尺度が平均4.88ポイント改善します
✓ 日本では「医薬品成分」に指定されており、国内でのサプリメント販売は禁止されています
✓ 副作用として下痢、頭痛、肝機能障害の報告があり、妊娠中・授乳中は禁忌です
✓ 個人輸入は可能ですが、品質管理や法的リスクに注意が必要です
アシュワガンダは、インドの伝統医学アーユルヴェーダで3000年以上使用されてきた薬用ハーブです。学名の「Withania somnifera」は「睡眠を誘う」という意味を持ち、ストレス軽減と睡眠改善に優れた効果があることを示唆しています。近年、欧米を中心に「アダプトゲン」として注目を集め、ストレス社会を生き抜くための天然サプリメントとして人気が急上昇しています。
2024年に発表された複数のメタアナリシス(複数の臨床試験を統合した最高レベルのエビデンス)では、アシュワガンダがストレスホルモンであるコルチゾールを有意に低下させ、不安症状を改善することが科学的に実証されました。しかし、日本では2013年に「医薬品成分」に指定されたため、国内でのサプリメント販売は認められていません。この記事では、アシュワガンダの効果と安全性を最新の研究データに基づいて解説するとともに、日本での規制状況と入手方法について詳しく説明します。

目次
アシュワガンダとは?アーユルヴェーダの「若返りハーブ」
アシュワガンダ(学名:Withania somnifera)は、ナス科の多年生低木で、インド、中東、アフリカの乾燥地帯に自生しています。サンスクリット語で「馬の匂い」を意味するその名前は、根の独特な香りに由来しますが、同時に「馬のような活力を与える」という意味も込められています。アーユルヴェーダでは「ラサーヤナ(若返り)」のハーブとして分類され、体力増強、免疫力向上、長寿促進に用いられてきました。
現代の植物化学研究により、アシュワガンダには「ウィタノライド」と呼ばれる独自のステロイドラクトン類が含まれていることが明らかになっています。特に「ウィタフェリンA」と「ウィタノライドD」は、抗炎症作用、抗腫瘍作用、神経保護作用を持つことが実験室レベルで確認されています。これらの成分が複合的に作用することで、アダプトゲン(ストレス適応物質)としての効果を発揮すると考えられています。
アダプトゲンとは、1947年にソビエトの科学者ニコライ・ラザレフが提唱した概念で、「無毒であり、様々なストレスに対する非特異的な抵抗力を高め、身体機能を正常化する」という3つの条件を満たす物質を指します。アシュワガンダは、高麗人参やロディオラと並んで、最も研究されているアダプトゲンハーブの一つです。
科学的エビデンス:2024年最新のメタアナリシス
873名を対象とした大規模メタアナリシス
2024年から2025年にかけて発表された最新のメタアナリシスは、アシュワガンダの効果を科学的に裏付ける強力なエビデンスを提供しています。BJPsych Open誌に掲載された研究では、2024年9月8日までに発表された15件のランダム化比較試験(RCT)を統合分析し、合計873名の被験者データを解析しました。
| 評価指標 | 効果量(平均差) | 統計的有意性 |
|---|---|---|
| 知覚ストレス尺度(PSS) | -4.88ポイント | p=0.0013 |
| 血清コルチゾール | -2.36 | p<0.0001 |
| ハミルトン不安尺度(HAM-A) | 有意な減少 | p<0.05 |
この研究の結論として、「アシュワガンダのサプリメント摂取は安全かつ効果的であり、成人患者のストレスと不安を軽減し、コルチゾールレベル、PSS尺度、HAM-A尺度において統計的に有意な減少をもたらす」と報告されています。
558名を対象とした追加メタアナリシス
Explore誌(2024年11-12月号)に掲載された別のメタアナリシスでは、9件のRCTから558名のデータを分析しました。この研究でも、アシュワガンダ群はプラセボ群と比較して、知覚ストレス尺度(-4.72ポイント)、ハミルトン不安尺度(-2.19ポイント)、血清コルチゾール(-2.58)において有意な改善を示しました。
これらの結果は、アシュワガンダがストレスと不安に対して一貫した効果を持つことを示す、エビデンスレベルの高い知見です。ただし、両研究とも「長期使用の安全性を確認するためにはさらなる研究が必要」と付記しています。
作用メカニズム:HPA軸とコルチゾールの調整
アシュワガンダの効果は、主に視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の調整を介して発揮されると考えられています。HPA軸は、ストレス応答を制御する神経内分泌システムであり、ストレスを受けると副腎からコルチゾール(ストレスホルモン)を分泌させます。
慢性的なストレス状態では、HPA軸が過剰に活性化し、コルチゾールの分泌が持続的に高まります。これが長期間続くと、不安、抑うつ、睡眠障害、免疫機能低下、代謝異常など、様々な健康問題を引き起こします。アシュワガンダに含まれるウィタノライドは、このHPA軸の過剰活性化を抑制し、コルチゾール分泌を正常化することで、ストレス関連症状を改善すると考えられています。
アシュワガンダの主な作用機序
HPA軸の調整: ストレス応答システムを正常化し、過剰なコルチゾール分泌を抑制
GABA様作用: 抑制性神経伝達物質GABA受容体に作用し、鎮静・抗不安効果を発揮
抗酸化作用: 酸化ストレスから神経細胞を保護し、神経変性を予防
抗炎症作用: 炎症性サイトカインの産生を抑制し、全身性炎症を軽減
また、アシュワガンダはGABA(ガンマアミノ酪酸)受容体に対してアゴニスト(作動薬)として作用することが示されています。GABAは脳内の主要な抑制性神経伝達物質であり、不安軽減や睡眠促進に重要な役割を果たします。この作用が、アシュワガンダの抗不安効果と睡眠改善効果に寄与していると考えられています。
期待される効果と臨床データ
ストレスと不安の軽減
アシュワガンダの最も確立された効果は、ストレスと不安の軽減です。240mgの標準化抽出物を60日間摂取した無作為化二重盲検試験では、朝のコルチゾールレベルが有意に低下し(p<0.001)、主観的なストレス感も改善しました。用量反応関係も確認されており、250mg/日と600mg/日の両方でコルチゾール低下が認められましたが、600mg/日でより顕著な効果が見られました(p<0.0001)。
睡眠の質の改善
KSM-66(標準化されたアシュワガンダ抽出物)600mgを就寝前に摂取した研究では、総睡眠時間の延長、入眠潜時(眠りにつくまでの時間)の短縮、全体的な睡眠の質の向上が報告されています。この効果は、コルチゾール低下によるリラクゼーション促進と、GABA様作用による鎮静効果の両方が関与していると考えられています。
認知機能の改善
健康な成人を対象とした研究では、アシュワガンダ摂取により注意力、情報処理速度、認知的柔軟性の改善が報告されています。特に、ストレス下での認知パフォーマンス低下を防ぐ効果が顕著であり、これはアダプトゲンとしての特性を反映しています。
運動パフォーマンスと筋力
アスリートを対象とした研究では、アシュワガンダ摂取により筋力、持久力、回復力の向上が報告されています。これは、コルチゾール(カタボリックホルモン)の低下と、テストステロン(アナボリックホルモン)の相対的増加によるものと考えられています。
日本での規制状況:なぜサプリメントとして買えないのか
医薬品成分への指定
日本では、アシュワガンダ(Withania somnifera)の全草が、厚生労働省の「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に収載されています。これは2013年2月の「医薬品の範囲に関する基準」改正によるもので、それ以前は健康食品素材として流通していましたが、現在は食品(サプリメントを含む)への使用が禁止されています。
「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分」として分類
健康食品素材として流通可能だった
厚生労働省が「医薬品の範囲に関する基準」を改正
アシュワガンダが「専ら医薬品として使用される成分」に分類変更
国内でのサプリメント販売は薬機法違反
個人輸入は自己責任で可能
規制の理由
アシュワガンダが医薬品成分に指定された主な理由は、含有成分「ウィタフェリンA」の薬理作用が強いことです。ウィタフェリンAには抗炎症作用、抗腫瘍作用、強壮作用などが報告されており、これらは医薬品的な効能効果と見なされます。また、アーユルヴェーダにおいて医薬品として使用されてきた歴史的背景も考慮されたと考えられます。
なお、日本国内でアシュワガンダを含有する医薬品は承認されていません。つまり、「医薬品成分」に指定されているものの、実際に医薬品として入手することはできない状況です。
最近の摘発事例
2025年10月には、東京都がアシュワガンダを含有する健康食品の販売を摘発し、販売中止と自主回収を指示しました。このように、国内でアシュワガンダを含むサプリメントを販売することは薬機法違反となり、販売者には行政処分や刑事罰が科される可能性があります。
安全性と副作用
一般的な副作用
臨床試験で報告されている副作用は、一般的に軽度で一時的です。
| 副作用 | 発現頻度 | 対処法 |
|---|---|---|
| 消化器症状(下痢、腹痛、吐き気) | 比較的多い | 食後に摂取、用量を減らす |
| 頭痛 | 時々 | 用量を減らす |
| 眠気・鎮静 | 時々 | 就寝前に摂取 |
| 皮膚発疹 | まれ | 使用中止 |
肝機能障害への注意
近年、アシュワガンダ摂取に関連した肝機能障害の症例報告が増加しています。米国国立衛生研究所(NIH)のLiverToxデータベースには、アシュワガンダによる肝障害の症例が複数登録されています。症状は摂取開始から数週間〜数ヶ月後に発現することが多く、黄疸、倦怠感、腹部不快感などを伴います。多くの場合、摂取中止により回復しますが、重症化するケースも報告されています。
禁忌と注意が必要な人
以下に該当する方は、アシュワガンダの使用を避けるか、医師に相談してください。
- 妊娠中・授乳中の方: 安全性が確認されていません。流産のリスクがあるとの報告もあります
- 自己免疫疾患の方: 免疫系を刺激する可能性があり、症状を悪化させる恐れがあります
- 甲状腺疾患の方: 甲状腺ホルモンに影響を与える可能性があります
- 手術予定の方: 手術の2週間前から使用を中止してください
- ナス科アレルギーの方: アシュワガンダはナス科植物です
薬物相互作用
アシュワガンダは以下の薬剤と相互作用を起こす可能性があります。
- 鎮静薬・睡眠薬: 鎮静作用が増強される可能性
- 甲状腺ホルモン薬: 甲状腺機能に影響を与える可能性
- 免疫抑制薬: 免疫調節作用により効果が減弱する可能性
- 血糖降下薬: 血糖値をさらに下げる可能性
入手方法と選び方
個人輸入について
日本でアシュワガンダを入手する方法として、海外からの個人輸入があります。個人使用目的であれば、一定量(通常2ヶ月分程度)までの輸入は法的に認められています。ただし、以下の点に注意が必要です。
個人輸入の注意点
品質リスク: 海外製品の品質は保証されていません。重金属汚染や成分偽装のリスクがあります
法的リスク: 他人への譲渡・販売は薬機法違反となります
健康リスク: 健康被害が生じても、国内の救済制度(PMDA)の対象外です
自己責任: 全てのリスクを自己責任で負う必要があります
品質の見分け方
個人輸入する場合は、以下の点を確認することで品質リスクを軽減できます。
- 標準化抽出物の使用: KSM-66やSensorilなど、成分含有量が標準化された抽出物を使用している製品を選ぶ
- 第三者機関による検査: 重金属、農薬、微生物汚染の検査を受けている製品を選ぶ
- GMP認定工場での製造: 製造品質が管理されている工場で生産された製品を選ぶ
- ウィタノライド含有量の明記: 有効成分の含有量が明確に表示されている製品を選ぶ
推奨用量
臨床試験で使用されている用量は、1日あたり125mg〜600mgが一般的です。効果が確認されている摂取期間は30日〜90日間です。初めて使用する場合は、低用量(125〜250mg/日)から開始し、忍容性を確認しながら徐々に増量することが推奨されます。
FAQ
いいえ、買えません。アシュワガンダは日本で「専ら医薬品として使用される成分」に指定されているため、国内でのサプリメント販売は薬機法違反となります。入手するには海外からの個人輸入が必要ですが、品質リスクや健康リスクを自己責任で負う必要があります。
臨床試験のデータによると、ストレス軽減効果は2〜4週間程度で現れ始めることが多いです。ただし、最大の効果を得るには8週間以上の継続摂取が推奨されます。個人差があるため、効果の発現時期は人によって異なります。
両方ともストレス軽減効果があるため、相乗効果が期待できる可能性があります。ただし、両方とも鎮静作用があるため、眠気が増強される可能性があります。併用する場合は、まず単独で使用して忍容性を確認し、低用量から開始することをお勧めします。重大な相互作用の報告はありませんが、安全性データは限られています。
臨床試験では最長16週間の連続摂取で安全性が確認されていますが、それ以上の長期使用についてはデータが限られています。一部の専門家は、8〜12週間の摂取後に2〜4週間の休薬期間を設けることを推奨しています。肝機能障害のリスクがあるため、長期使用する場合は定期的な肝機能検査を検討してください。
どちらもアシュワガンダの標準化抽出物ですが、製造方法と成分プロファイルが異なります。KSM-66は根のみを使用し、ウィタノライドを5%以上含有します。Sensorilは根と葉を使用し、グリコウィタノライドとウィタフェリンAを含有します。KSM-66はエネルギーと活力向上に、Sensorilは鎮静とリラクゼーションにより適しているとされますが、両方ともストレス軽減効果が臨床的に実証されています。
まとめ
この記事のまとめ
アシュワガンダは3000年以上の使用歴を持つアーユルヴェーダハーブで、現代科学でも効果が実証されています
2024年のメタアナリシス(873名)で、ストレス・不安・コルチゾールの有意な低下が確認されました
主な作用機序はHPA軸の調整とGABA様作用で、ストレス応答を正常化します
日本では2013年から医薬品成分に指定されており、国内でのサプリメント販売は禁止されています
個人輸入は可能ですが、品質リスク・健康リスク・法的リスクを自己責任で負う必要があります
副作用として消化器症状、頭痛、眠気があり、まれに肝機能障害の報告もあります
妊娠中・授乳中、自己免疫疾患、甲状腺疾患の方は使用を避けてください
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