【中東初】UAE(アラブ首長国連邦)が産業用ヘンプを解禁|医療・繊維用途で新法施行

この記事のポイント
✓ UAEが2025年12月、中東で初めて産業用ヘンプの医療・産業利用を認める連邦法令を発布
✓ THC濃度0.3%以下の産業用ヘンプが対象、嗜好用・食品・サプリメントは引き続き禁止
✓ 違反時の罰金は最低10万AED(約400万円)、投獄の可能性も
2025年12月、アラブ首長国連邦(UAE)政府は産業用ヘンプの医療・産業利用を規制する連邦法令を発布しました。これは中東地域で初めての包括的なヘンプ規制フレームワークであり、世界で最も厳しい薬物規制を持つ国の一つであるUAEにとって、歴史的な政策転換となります。
ただし、嗜好用や一般消費者向けのCBD製品は依然として禁止されており、高度に規制された産業・医療セクターに限定されたアプローチとなっています。日本からUAEへの渡航を予定している方は、CBD製品を持ち込まないよう注意が必要です。
UAE産業用ヘンプ法令の概要
UAE政府が発布した連邦法令は、産業用ヘンプの栽培、製造、輸出入を包括的に規制するものです。この法令は国際的なベストプラクティスに沿った新たな経済セクターの創出を目指しており、持続可能な経済発展を支援することを目的としています。
法令における「産業用ヘンプ」の定義は、Cannabis Sativa(カンナビス・サティバ)種のうち、花穂と葉における総THC濃度が乾燥重量基準で0.3%以下のものとされています。この0.3%という基準は、米国やEUなど多くの国で採用されている国際標準に準拠しています。
UAE産業用ヘンプ法令の基本情報
発布時期: 2025年12月
THC上限: 0.3%(乾燥重量基準)
対象: Cannabis Sativa種の植物、花、種子、派生物、抽出物
監督機関: 気候変動環境省、産業先端技術省、国家反麻薬当局
法令では、ライセンスを取得した製造業者に対し、THC濃度を0.3%以上に引き上げる可能性のある物質の使用を禁止しています。また、原材料と最終製品の定期的な検査を義務付けており、基準を超えた場合はライセンス当局と国家反麻薬当局への通知が必要となります。
許可される用途と禁止事項
新法令では、産業用ヘンプの用途について明確な区分が設けられています。許可される分野は限定的であり、一般消費者向けの製品は厳しく制限されています。
産業用ヘンプは、繊維産業においてテキスタイル(衣料品、布地)への利用が認められています。建設資材としては、ヘンプクリート(ヘンプコンクリート)などの素材としての活用が可能です。紙・包装材料としての利用も許可されており、持続可能な素材としての需要に対応しています。
最も注目されるのは医療製品への利用です。ヘンプ由来の化合物や原材料を含む医薬品の製造が、医薬品法の規制下で認められることになりました。これはUAE史上初めてのことです。化粧品については、ヘンプ種子油やヘンプ茎油を含む製品に限り許可されています。その他のヘンプ由来成分を含む化粧品は、閣議決定で例外が認められない限り禁止されています。
一方で、禁止される用途も明確に定められています。以下の表が示すように、UAEのアプローチは西洋諸国とは大きく異なります。
| カテゴリー | 許可/禁止 | 詳細 |
|---|---|---|
| 嗜好用・個人使用 | 禁止 | いかなる形態でも禁止 |
| 食品 | 禁止 | ヘンプを含む食品は全面禁止 |
| サプリメント | 禁止 | 栄養補助食品としての使用は禁止 |
| 動物用製品 | 禁止 | 獣医製品への使用は禁止 |
| 喫煙製品 | 禁止 | ベイプ、紙巻きなど全て禁止 |
| 一般消費者向けCBD | 禁止 | 小売CBD製品は禁止 |
CBD製品の小売販売や食品への添加は認められておらず、産業・医療分野に厳格に限定されています。
厳格なライセンス制度
UAE産業用ヘンプ法令の特徴は、複数の政府機関が関与する厳格なライセンス制度です。事業者は複数のライセンスを取得し、継続的な監視を受ける必要があります。
産業用ヘンプの種子を輸出入するには、気候変動環境省からのライセンスが必要です。申請者は認可された農業会社でなければならず、種子は執行規則で承認された品種リストに含まれるものに限られます。輸入された種子は、地方当局が承認した指定区域での栽培にのみ使用可能です。
栽培については、気候変動環境省からのライセンスと関連する地方当局からの承認が必要です。栽培区域は指定区域内であること、セキュリティが確保されフェンスで囲まれていること、監視システムが設置されていること、住宅地や他の農業区域から隔離されていることが求められます。さらに、作業員が身元調査をクリアしていることも必須条件です。
ライセンス取得に必要な承認機関
種子の輸出入: 気候変動環境省
栽培: 気候変動環境省 + 地方当局
製造: 地方当局 + 産業先端技術省
全ての活動: 国家反麻薬当局の身元調査クリアが必要
産業用ヘンプ製品の製造には、産業先端技術省の承認を得た後、関連する地方当局からのライセンスが必要です。また、各首長国は、その管轄区域内で地方規制に従い、産業用ヘンプ関連活動を禁止または制限する権限を有しています。これはドバイ、アブダビ、シャルジャなど各首長国が独自の判断で規制を強化できることを意味します。
罰則規定と取り締まり
UAE産業用ヘンプ法令は、違反に対して厳格な罰則を設けています。UAEは歴史的に世界で最も厳しい薬物規制を持つ国の一つであり、この新法令も例外ではありません。
違反時の罰金は最低10万AED(約400万円)からスタートし、違反の内容によっては投獄の可能性もあります。対象となる違反行為には、ライセンスなしでの栽培、製造、輸出入、THC濃度基準を超えた製品の製造・販売、禁止された用途(食品、サプリメント、嗜好用など)への使用、そして報告義務の怠慢などが含まれます。
この厳格な罰則規定は、UAEが産業用ヘンプの解禁を進めながらも、乱用や違法流用を厳しく取り締まる姿勢を示しています。
中東地域における意義
UAE産業用ヘンプ法令は、中東地域における大麻政策の転換点となる可能性があります。中東地域では、2020年にレバノンが医療用・産業用大麻を合法化したのが初めてのケースでした。UAEはそれに続く中東で2番目の国となります。
レバノンがアラブ諸国で初めて医療用・産業用大麻を合法化
UAEが薬物法を改正、初犯者への二度目の機会を付与
中毒者の自主的な届け出でリハビリ措置を選択可能に
UAE産業用ヘンプ法令発布
中東で初の包括的なヘンプ規制フレームワーク確立
イスラム法(シャリーア)を法体系の基盤とする国々が多い中東では、薬物に対する規制は一般的に厳格であり、UAEの動きは地域全体に影響を与える可能性があります。UAEの法令は、嗜好用大麻やCBD製品の小売販売を認めるものではありませんが、産業・医療分野での限定的な解禁は、他の湾岸諸国や中東諸国にも影響を与える可能性があります。特にサウジアラビア、カタール、クウェートなどの近隣国がUAEの動向を注視していると考えられます。
投資・ビジネス機会
UAE産業用ヘンプ法令は、特定の分野での投資・ビジネス機会を創出しています。ただし、このフレームワークは意図的に制限的であり、資本集約的で技術的に高度な企業に有利な構造となっています。
有望な分野としては、医薬品製造が挙げられます。ヘンプ由来成分を使用した医薬品の開発・製造が可能になり、特にエピディオレックスのような大麻由来医薬品への道が開かれました。持続可能な産業材料として、ヘンプ繊維、建設資材、包装材料の製造・供給事業も考えられます。アグリテック分野では、砂漠気候に適応したヘンプ栽培技術の開発・提供が求められています。検査・分析機関として、THC濃度の検査、品質管理、コンプライアンス確認サービスの需要も見込まれます。
一方で、UAEのヘンプ市場への参入にはいくつかの高いハードルがあります。複数機関からのライセンス取得という複雑なプロセス、セキュリティ設備・監視システム・検査設備などへの高額な初期投資、継続的な検査・報告・監視への対応という厳格なコンプライアンス要件、そしてUAEの砂漠気候による栽培の困難さ(灌漑コスト、熱ストレス、冬季限定の栽培シーズン)などが参入障壁となっています。
日本への示唆
UAE産業用ヘンプ法令は、日本の大麻政策と比較すると興味深い点がいくつかあります。日本では2024年12月12日に改正大麻取締法が施行され、大麻由来医薬品の使用が可能になりました。同時に「使用罪」が新設され、嗜好用大麻への規制は強化されています。
両国の共通点として、医療用途の限定的な解禁、THC濃度に基づく規制(日本は残留限度値を設定)、嗜好用・一般消費者向け製品の禁止、厳格なライセンス制度と罰則が挙げられます。一方、相違点として、日本ではCBD製品の販売が(THC残留限度値以下であれば)可能であるのに対し、UAEでは一般消費者向けCBD製品は禁止されています。また、日本は部位規制から成分規制への移行を進めていますが、UAEは最初から成分規制(THC 0.3%)を採用しています。
日本のCBD事業者やカンナビノイド関連企業にとって、UAEへの直接的な進出機会は限定的です。一般消費者向けCBD製品が禁止されているため、日本で展開しているような製品をUAE市場に持ち込むことはできません。ただし、医薬品製造や産業材料分野での技術提携や投資機会は検討に値する可能性があります。
FAQ
いいえ、一般消費者向けのCBD製品は引き続き禁止されています。新法令は産業用途と医療用途に限定されており、CBD製品の小売販売、食品添加、サプリメントとしての使用は認められていません。日本からUAEに渡航する際は、CBD製品を持ち込まないよう注意してください。
両国とも医療用途の限定的な解禁を進めていますが、大きな違いはCBD製品の扱いです。日本ではTHC残留限度値以下のCBD製品は合法的に販売できますが、UAEでは一般消費者向けCBD製品は全面禁止です。また、日本は部位規制から成分規制への移行期にありますが、UAEは最初から成分規制(THC 0.3%)を採用しています。
UAEは経済多角化戦略の一環として、産業用ヘンプを新たなセクターとして位置付けています。持続可能な製造業、医薬品産業、アグリテックなどの分野での成長を目指しており、国際的なベストプラクティスに沿った規制フレームワークを構築することで、投資誘致と産業発展を促進する狙いがあります。
一般消費者向けCBD製品の販売機会はありませんが、医薬品製造技術、品質管理システム、検査・分析サービス、持続可能な産業材料技術などの分野では、技術提携や投資機会の可能性があります。ただし、複雑なライセンス制度と高い参入障壁を考慮する必要があります。
可能性はありますが、予測は困難です。レバノンに続きUAEが産業用ヘンプを解禁したことで、他の湾岸諸国も動向を注視していると考えられます。ただし、イスラム法を基盤とする国々では薬物規制が厳格であり、各国の政治・宗教・経済的状況によって判断が異なるでしょう。
まとめ
この記事のまとめ
UAEは2025年12月、中東で初めて産業用ヘンプの包括的な規制フレームワークを確立する連邦法令を発布しました
THC 0.3%以下のヘンプが対象で、繊維・建設資材・医薬品などの用途が許可されますが、食品・サプリメント・嗜好用は禁止されています
複数機関からのライセンス取得が必要で、違反時は最低10万AED(約400万円)の罰金と投獄の可能性があります
日本のCBD事業者にとって直接的な市場機会は限定的ですが、医薬品・産業材料分野での技術提携は検討に値します
参考文献
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