ヤマブシダケ(Lion's Mane)で認知機能改善|最新研究が証明する神経保護作用とアルツハイマー予防効果

この記事のポイント
✓ ヤマブシダケは神経成長因子(NGF)を促進し、認知機能を改善する科学的エビデンスがあります
✓ 2023年の臨床試験で認知処理速度が6.7%改善、主観的ストレスの減少が確認されました
✓ アルツハイマー病の原因物質(β-アミロイド、タウタンパク質)を分子レベルで減少させます
✓ 日本では食品として扱われ、処方箋なしで自由に購入・摂取できます
✓ 1日1〜3グラムの用量で広く忍容性が良好、重大な副作用の報告はありません
ヤマブシダケは、古来より東アジアで珍重されてきた薬用キノコであり、現代科学がその効果を実証しつつあります。白くフサフサとした独特の外観から「Lion's Mane(ライオンのたてがみ)」と呼ばれるこのキノコは、脳の神経細胞を保護し、認知機能を改善する可能性が科学的に明らかになっています。特に注目すべきは、神経成長因子(NGF)の合成を促進する特有成分エリナシンとヘリセノンの存在です。これらの化合物は血液脳関門を通過し、脳内で直接的に神経細胞に作用することができます。
2023年のノーサンブリア大学の臨床試験では、28日間の摂取で認知処理速度が6.7%改善し、主観的ストレスの減少傾向も確認されました。さらに、アルツハイマー病の特徴的な病理変化であるβ-アミロイドとタウタンパク質の蓄積を分子レベルで減少させることが動物実験で示されています。日本では食品として扱われており、機能性表示食品としての申請も進んでいます。この記事では、ヤマブシダケの科学的エビデンス、安全性、実用的な使用方法まで、包括的に解説します。

目次
ヤマブシダケとは?白いフサフサの「考えるキノコ」
ヤマブシダケ(学名:Hericium erinaceus)は、白くフサフサとした独特の外観を持つ食用・薬用キノコです。英名の「Lion's Mane(ライオンのたてがみ)」や中国名の「猴頭菇(ホウトウクウ、サルの頭)」という名前は、その特徴的な形状に由来しています。日本では山伏の装束に似ていることから「ヤマブシタケ(山伏茸)」と呼ばれています。
江戸時代の博物学者・貝原益軒は興味深い観察を記録しています。薬効のある植物を好む鹿は、このキノコに吸い寄せられるように近づいて行くことから、「鹿の玉」とも名付けました。この逸話は、古くから動物本能的にヤマブシダケの薬効が認識されていた可能性を示唆しています。
近年、このヤマブシダケが「考えるキノコ」として世界中の研究者から注目を集めています。その理由は、脳の神経細胞を保護し、認知機能を改善する可能性が科学的に実証されつつあるからです。1990年代以降、ヤマブシダケに含まれる特有成分が神経成長因子(NGF)の合成を促進することが発見され、認知機能改善への応用が期待されるようになりました。
ヤマブシダケの歴史:皇帝が探し求めた幻のキノコ
中国伝統医学における位置づけ
ヤマブシダケは中国では食用のほか、漢方薬として古くから親しまれてきました。中国では歴代皇帝が探し求め続けたキノコともいわれており、「四大山海の珍味」のひとつとして古来より珍重されています。その希少性と薬効の高さから、皇帝や貴族しか口にできない贅沢品とされていました。
乾燥させたものを「ホウトウクウ(猴頭菇)」と呼び、消化不良や身体の虚弱改善など、さまざまな効果があるとして、水やお湯で煎じたり、黄酒に浸けたものが広く飲まれていました。ただし、薬効が文献で紹介されたのは比較的新しく、1978年に刊行された『中国薬用真菌』に「消化不良や胃潰瘍、神経衰弱、身体虚弱に効く薬用・食用キノコ」として掲載されたのが始まりです。
日本における伝統的使用
日本では、山伏(修行僧)たちが精神集中のためにこのキノコを食用してきた記録があります。山岳修行における厳しい環境下で、認知機能を維持し、精神を研ぎ澄ますために用いられたと考えられています。また、江戸時代の薬学者は「大酒のみのキノコ」とも記しており、消化器系への効果が経験的に知られていたことがうかがえます。
しかし、ヤマブシダケは自生しているものが比較的希少で、アジアの山岳地帯の広葉樹(特に枯れた木や倒木)にのみ生育するため、一般には入手困難でした。このため、一部の修行僧や知識層の間でのみ利用されていたと推測されます。
現代における再評価
1990年代以降、ヤマブシダケに含まれる特有成分が神経成長因子(NGF)の合成を促進することが発見され、認知機能改善への応用が期待されるようになりました。これにより、伝統的な経験知が現代科学によって裏付けられる形となりました。現在では人工栽培も可能になり、サプリメントとして世界中で利用されています。日本でも長野県などで栽培が行われ、国産品が流通するようになっています。
ヤマブシダケの主要な有効成分
ヤマブシダケの薬効は、3つの主要成分とその他の重要成分に由来します。それぞれが異なるメカニズムで脳と身体の健康をサポートします。
エリナシン(Erinacines)
エリナシンは菌糸体(mycelium)から抽出される化合物で、シアサン型ジテルペノイド類の一種です。エリナシンA、B、C、E、F、H、Iなど複数のタイプが確認されており、それぞれが異なる生物活性を示します。最も重要な特徴は、エリナシンが血液脳関門(BBB)を通過でき、受動拡散により脳内に到達することです。この特性により、脳内で直接的に神経細胞に作用できるため、認知機能改善への効果が期待されています。
エリナシンAは菌糸体で発現しますが、子実体では発現しません。このため、エリナシンを重視する場合は菌糸体製品を選ぶ必要があります。血液脳関門を通過できる低分子化合物は限られており、エリナシンのこの特性は神経保護物質として極めて重要です。
ヘリセノン(Hericenones)
ヘリセノンは子実体(fruiting body)に含まれる化合物で、メロテルペノイド類に分類されます。ヘリセノンC、D、E、Hなどが同定されており、エリナシンと同様に血液脳関門を通過可能です。子実体には菌糸体製品と比較して高濃度の有益な化合物が含まれています。そのため、ヘリセノンを重視する場合は子実体製品を選ぶべきです。
β-グルカン(Beta-glucan)
多糖類の一種で、免疫力を高める働きを持つとされています。ヤマブシダケに限らず、多くの薬用キノコに含まれる成分ですが、免疫系のサポートに重要な役割を果たします。腸内細菌の基質として機能し、有益な細菌の増殖を促進するプレバイオティクス効果も持っています。
その他の重要成分
ヤマブシダケには、エルゴステロール(ビタミンD2の前駆体)、天然GABA(ガンマアミノ酪酸、神経伝達物質)、5-HTP(5-ヒドロキシ-L-トリプトファン、セロトニンの直接前駆体)などの成分も含まれています。特に5-HTPは、気分調整に直接的な影響を与える可能性があり、抗うつ効果のメカニズムの一部を説明すると考えられています。
科学的エビデンス:ヤマブシダケの神経保護作用
神経成長因子(NGF)の促進メカニズム
ヤマブシダケの最も注目すべき効果は、神経成長因子(NGF)の合成を誘導できることです。NGFは、神経細胞の生存、維持、修復に不可欠なタンパク質で、脳の健康維持において極めて重要な役割を果たします。エリナシンとヘリセノンは、1990年代以降の複数のin vitro研究で、NGF合成を刺激することが実証されています。
分子レベルのメカニズムとして、ヘリセノンEの神経突起伸長プロセスは、チロシンキナーゼ受容体(Trk)の活性化によるもので、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)とAktのリン酸化が増加します。これらの神経栄養因子(NGF、BDNF、NT-3など)は、Trk受容体ファミリーを活性化し、神経細胞の生存、可塑性、修復を促進します。
興味深いことに、これらの化合物はグリア細胞に投与された場合にのみNGF合成を誘導でき、ニューロン単独ではNGF合成を誘導できません。つまり、脳内のサポート細胞を介して間接的に神経細胞を保護する仕組みです。この間接的なメカニズムは、より生理的で持続的な神経保護効果をもたらす可能性があります。
認知機能への効果:2023-2025年の最新臨床試験
2023年にノーサンブリア大学で実施された研究は、ヤマブシダケの認知機能改善効果を示す重要なエビデンスです。健康な若年成人(18〜45歳、43名)を対象にしたランダム化、プラセボ対照、二重盲検試験が実施されました。この研究デザインは、科学的信頼性が最も高いゴールドスタンダードと呼ばれる方法です。
急性効果として、単回投与後60分でStroop課題(認知的柔軟性を測定する標準的なテスト)をより速く実行できることが確認されました(p=0.005)。慢性効果として、28日間、1日1.8グラムの摂取により、認知処理速度が6.7%改善しました。具体的には、反応時間が737.70ミリ秒から688.05ミリ秒に短縮されています。また、主観的ストレスの減少傾向も認められ(p=0.051)、気分改善は末梢pro-BDNFの変化と関連していることが示されました。
この研究は、ヤマブシダケが作業速度を改善し、主観的ストレスを軽減する可能性を示した重要なエビデンスです。日常生活における実用的な効果が科学的に裏付けられた形となりました。
2025年4月に発表された最新研究では、ヤマブシダケ子実体の急性摂取ではプラセボと比較して認知パフォーマンスと気分の全体的な改善は認められませんでしたが、特定のタスクやドメインでの効果がある可能性が示唆されました。これは、効果が個人差や測定方法に依存する可能性を示しています。
日本での臨床試験では、軽症の認知症患者を対象に、改訂・長谷川式簡易知能評価スケールを使用してヤマブシダケの認知機能改善効果が測定されました。8週目から点数が上昇し始め、摂取をやめた16週目から点数の低下が見られました。特に注目すべきは、ドネペジル(認知症治療薬)との比較です。統計的有意差は認められなかったものの、ドネペジルが12ヶ月後に効果の漸減を認めたのに対して、ヤマブシダケでは24ヶ月後においても漸減は認められませんでした。この結果は、ヤマブシダケが長期的に安定した効果を維持できる可能性を示唆しています。
アルツハイマー病への効果
ヤマブシダケは、アルツハイマー病の特徴的な病理変化に対して、分子レベルで効果を示すことが明らかになっています。アルツハイマー病の主な原因とされるβ-アミロイドとタウタンパク質への作用が確認されています。
動物実験において、β-アミロイド蓄積、異常なAPP過剰発現、リン酸化タウを分子レベルで減少させることが示されました。APPswe/PS1dE9トランスジェニックマウス(アルツハイマー病モデル動物)での研究では、30日間の経口投与後、脳内のAβプラーク負荷を軽減しました。投与後、海馬のリン酸化タウ(p-tau)プラークの数が有意に抑制され、タウ過剰リン酸化の軽減が示されました。
さらに、神経炎症の抑制効果も確認されています。投与により、ミクログリアとアストロサイトクラスターがそれぞれ19.4%と43.3%有意に減少し、抗炎症効果が示唆されました。これらの結果は、ヤマブシダケがアルツハイマー病の複数の病理的プロセスに対して保護的に働く可能性を示しています。単一のメカニズムではなく、多面的なアプローチでアルツハイマー病に対抗できることが重要です。
抗うつ・抗不安効果
ヤマブシダケは、気分障害に対しても効果を示すことが臨床試験で確認されています。更年期女性を対象とした研究では、4週間の補給後に抑うつと不安スコアの低下が観察されました。77名の過体重または肥満ボランティアを対象とした研究では、8週間の経口投与後にうつ病と不安を有意に減少させ、睡眠障害も改善しました。
メカニズムとして、BDNF(脳由来神経栄養因子)の調節が重要な役割を果たしています。慢性的な拘束ストレスを受けた動物において、ヤマブシダケエタノール抽出物の慢性投与が、BDNF、TrkB、PI3Kの発現レベルを正常化しました。BDNFは神経細胞の生存と成長を促進し、気分調節に重要な役割を果たす神経栄養因子です。
また、セロトニンとモノアミン神経伝達物質の回復も確認されています。拘束ストレスを受けた動物において、400mg/kgのヤマブシダケ菌糸体抽出物の慢性投与が、枯渇したドパミン、セロトニン、ノルエピネフリンの発現レベルを回復させました。ヤマブシダケには5-HTP(5-ヒドロキシ-L-トリプトファン)が含まれており、これはセロトニンの直接前駆体です。このため、気分調整に直接的な影響を与える可能性があります。
腸脳軸への影響:脳と腸をつなぐ架け橋
プレバイオティクス効果
ヤマブシダケはプレバイオティクスとして作用し、LactobacillusやBifidobacteriumなどの有益な細菌を養います。そのβ-グルカン多糖類は腸内細菌の基質として機能し、微生物叢のバランスを促進します。プレバイオティクスとは、有益な腸内細菌の餌となり、その増殖を促進する成分のことです。
研究では、ヤマブシダケの経口摂取が有益な腸内細菌の成長を促進し、病原菌を減少させ、プレバイオティクス効果を示すことが明らかになっています。この補給は認知機能にポジティブな影響を与え、海馬の炎症を減少させます。腸内環境の改善が脳の健康に直接的な影響を与えるという、腸脳軸の重要性を示す結果です。
脳腸軸(Brain-Gut-Microbiome Axis)
脳腸軸とは、腸と脳の間の双方向のコミュニケーション経路です。この経路は、神経系、内分泌系、免疫系を介して機能しています。腸内細菌叢は、セロトニン、ドパミン、GABAなどの神経伝達物質の産生と代謝を変化させることができ、これらは気分、認知、行動に関与しています。
ヤマブシダケは脳腸微生物叢軸を強化し、腸と脳間のコミュニケーションを促進し、神経化学経路をサポートします。この多面的なアプローチにより、単に脳に直接作用するだけでなく、腸内環境を介した間接的な神経保護効果も発揮します。
消化器系への効果
胃炎患者を対象とした研究では、ヤマブシダケの補給が炎症関連症状を有意に軽減し、粘膜治癒を改善し、腸内細菌叢組成を調整しました。これはIBS(過敏性腸症候群)や炎症性腸疾患の管理における潜在的な応用を示唆しています。伝統的に消化器系への効果が知られていたヤマブシダケの使用法が、現代科学によって裏付けられた形となっています。
日本での状況:法規制と入手方法
法的位置づけ
ヤマブシダケは、厚生労働省が管理する「食薬区分」リストにおいて「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」には該当せず、法的には「医薬品」ではなく「食品」として扱われています。つまり、処方箋なしで健康食品やサプリメントとして自由に購入・摂取できます。この法的位置づけにより、消費者は医師の処方なしにヤマブシダケを利用できます。
機能性表示食品
機能性表示食品制度に関する業務は、平成21年9月1日に消費者庁に移管されました。ヤマブシダケについては、機能性表示食品として申請するため、健常者での効果を検出することに初めて成功し、その成果は英語の科学論文としてまとめられ受理されました。この成果により、今後、ヤマブシダケを含む機能性表示食品が日本市場でも増加する可能性があります。
機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。消費者庁に届け出を行い、受理されることで、商品パッケージに具体的な機能性を表示できるようになります。
市場の状況と入手可能性
日本国内では、ヤマブシダケのサプリメント(粉末、エキス、カプセル)が健康食品として販売されています。長野県産のヤマブシタケなど、国産品も流通しています。入手先としては、オンラインショップ、健康食品店、薬局、自然食品店などがあります。価格帯は製品の形態や濃度によって異なりますが、一般的に月額3,000円〜8,000円程度で入手可能です。
安全性と使用上の注意
安全性プロファイル
ヤマブシダケは、1日1グラムの用量で16週間使用した場合、おそらく安全です。人間を対象とした研究でヤマブシダケまたはその抽出物の副作用を調査した研究はありませんが、ラットにおいても体重1ポンドあたり2.3グラム(1kgあたり5グラム)という高用量で1か月間投与しても、有害作用は見られませんでした。ヤマブシダケは前向き試験で安全性が検証されていませんが、広く忍容性が良好で副作用がないと説明されています。
報告されている副作用は軽度で、胃の不快感、腹部不快感、吐き気、皮膚発疹などが含まれます。これらの副作用は一時的で、摂取を中止すると改善することが多いとされています。
禁忌と注意が必要な人
キノコにアレルギーまたは過敏症がある人は、ヤマブシダケを避けるべきです。ヤマブシダケへの曝露後、呼吸困難や皮膚発疹を経験した人の症例が記録されています。妊娠中または授乳中の使用が安全かどうかを知るための十分な信頼できる情報がないため、安全を期して使用を避けることが最善です。
ヤマブシダケは免疫系をより活発にする可能性があり、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、尋常性天疱瘡などの自己免疫疾患の症状を悪化させる可能性があります。これらの疾患がある場合は、使用前に必ず医師に相談してください。
ヤマブシダケは血液凝固を遅らせる可能性があり、出血性疾患のある人では出血とあざのリスクを高める可能性があります。また、手術中および手術後に出血の増加と血糖コントロールの妨げになる可能性があるため、予定された手術の少なくとも2週間前にヤマブシダケの使用を中止してください。
薬物相互作用
ヤマブシダケは血糖値を下げる可能性があり、糖尿病薬と併用すると血糖値が低くなりすぎる可能性があります。糖尿病治療薬を服用している場合は、血糖値を注意深く監視し、必要に応じて医師と用量調整について相談してください。
ヤマブシダケは血液凝固を遅らせる可能性があり、クロピドグレル(プラビックス)、イブプロフェン(アドビル、モトリンなど)、ナプロキセン(アナプロックス、ナプロシンなど)、ヘパリン、ワルファリン(クマディン)などの薬と併用すると、出血とあざのリスクが高まる可能性があります。これらの薬を服用している場合は、使用前に医師に相談してください。
摂取量の目安とサプリメントの選び方
推奨用量
ヤマブシダケを調査した臨床研究では、1050〜3000mgの用量を1日3〜4回に分けて使用しています。具体的な目的別の推奨量として、認知機能改善には研究者は1日3〜5グラムを推奨しています。軽度のアルツハイマー病症状には、1日3回350mgのカプセルを49週間使用した2020年の研究があります。うつ病・不安・睡眠障害には、8週間、1日400mgのカプセルを3つ使用した2019年の研究があります。
これらの研究結果を総合すると、一般的な健康維持目的では1日1〜3グラム、特定の症状改善目的では1日3〜5グラムが目安となります。
子実体 vs 菌糸体
子実体には菌糸体製品と比較して高濃度の有益な化合物が含まれています。菌糸体バイオマスは、最も強力でも30〜40%の穀物を含んでおり、製品製造を早めるために早期に引き抜かれた菌糸体は40〜70%の穀物含有量を持つ可能性があります。つまり、実際の菌糸体含有量が少ない可能性があるということです。
ただし、エリナシンAは菌糸体で発現しますが、子実体では発現しません。このため、エリナシンを重視する場合は菌糸体製品を選ぶべきです。一方、ヘリセノンを重視する場合は子実体製品を選ぶべきです。理想的には、両方の成分を含む製品、または子実体と菌糸体のブレンド製品を選ぶことが推奨されます。
抽出物 vs 粉末
ヤマブシダケ抽出物はより濃縮されており、有効成分の含有量が高くなっています。抽出プロセスは生物活性物質をキチンから分離するのに役立ち、体が有益なβ-グルカンを吸収しやすくなります。キチンは人間が消化できない成分であり、抽出物の方が生物学的利用能が高いと考えられます。
一方、粉末製品は自然な形態で全ての成分を含んでいます。製品選択の際は、抽出物の場合は濃縮比率(例:10:1、20:1など)を確認し、有効成分の含有量を比較することが重要です。
CBDとの相乗効果
ヤマブシダケとCBDは、エンドカンナビノイドシステム(ECS)を介して相補的に作用する可能性があります。CBDはエンドカンナビノイドシステムの受容体を含む複数の分子標的と相互作用します。ECSは感情調節、記憶、ストレス反応からエネルギー代謝、筋肉の動き、快楽の知覚まで、ほぼすべての重要な機能に関与しています。
CBDとヤマブシダケは協力してエンドカンナビノイドシステムを制御し、このシステムは気分、食欲、睡眠、免疫応答を含む多数の身体プロセスを制御しています。ヤマブシダケとCBDを組み合わせると、精神的明晰さと集中力をサポートしながら神経保護の利点も提供することで、認知機能を改善できる可能性があります。
CBDとヤマブシダケは両方とも一般的に忍容性が良好で、有害な相互作用を示唆する報告はありません。これらは異なる方法で作用し、ヤマブシダケは主に中枢ストレス反応システムと脳機能に影響を与えます。一方、CBDはエンドカンナビノイドシステム全体に作用し、より広範な生理的効果を示します。
詳しくは、姉妹記事「霊芝(レイシ)の免疫調整・抗がん作用」もご参照ください。レイシは免疫系とストレス軽減に特化した薬用キノコで、ヤマブシダケと組み合わせることでより包括的な健康サポートが期待できます。
FAQ
臨床試験のデータによると、急性効果は単回投与後60分で認められることがありますが、認知機能の持続的な改善には28日間程度の継続摂取が必要です。日本の臨床試験では、8週目から点数が上昇し始めたことが報告されています。効果を実感するまでの期間には個人差がありますが、最低でも1〜2ヶ月の継続使用を推奨します。
動物実験では、アルツハイマー病の原因物質であるβ-アミロイドとタウタンパク質の蓄積を分子レベルで減少させることが示されています。また、神経成長因子(NGF)の促進により神経細胞の保護と修復をサポートします。ただし、人間における認知症予防効果を確実に証明するには、さらなる大規模臨床試験が必要です。現時点では、認知機能の維持と改善をサポートする補助的な役割として考えるべきです。
報告されている副作用は軽度で、胃の不快感、腹部不快感、吐き気、皮膚発疹などが含まれます。1日1グラムの用量で16週間使用した場合、おそらく安全とされています。ただし、キノコアレルギーのある人、妊娠・授乳中の人、自己免疫疾患や出血性疾患のある人、手術予定のある人は使用を避けるか、医師に相談してください。
ヤマブシダケは血糖値を下げる可能性があるため、糖尿病薬と併用する場合は注意が必要です。また、血液凝固を遅らせる可能性があるため、抗凝固薬・抗血小板薬(ワルファリン、クロピドグレル、イブプロフェンなど)との併用は出血リスクを高める可能性があります。医薬品を服用している場合は、使用前に必ず医師に相談してください。
子実体と菌糸体のブレンド製品、または両方を含む製品を選ぶことが理想的です。エリナシンは菌糸体に、ヘリセノンは子実体に含まれるため、両方の成分を摂取できるからです。抽出物の場合は濃縮比率(10:1、20:1など)を確認し、有効成分の含有量が明記された製品を選びましょう。また、信頼できるメーカーの製品を選び、第三者機関による品質検査を受けた製品を優先することをお勧めします。
まとめ
📝 この記事のまとめ
ヤマブシダケは神経成長因子(NGF)を促進し、エリナシンとヘリセノンが血液脳関門を通過して脳内で直接作用します
2023年の臨床試験で28日間の摂取により認知処理速度が6.7%改善し、主観的ストレスの減少が確認されました
アルツハイマー病の原因物質(β-アミロイド、タウタンパク質)を分子レベルで減少させ、神経炎症も抑制します
BDNF調節とセロトニン回復により、抗うつ・抗不安効果を示し、睡眠障害も改善します
プレバイオティクス効果により腸内環境を改善し、脳腸軸を介した神経保護効果も発揮します
日本では食品として扱われ、処方箋なしで自由に購入可能、1日1〜3グラムで広く忍容性が良好です
子実体と菌糸体のブレンド製品を選び、糖尿病薬や抗凝固薬との併用には注意が必要です


