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エピディオレックス(Epidiolex)とは?世界初のCBD由来医薬品を徹底解説

THE ASA MEDIA編集部
10分
エピディオレックス(Epidiolex)とは?世界初のCBD由来医薬品を徹底解説

エピディオレックス(Epidiolex)とは?世界初のCBD由来医薬品を徹底解説

エピディオレックス(Epidiolex)は、大麻草から抽出されたカンナビジオール(CBD)を有効成分とする経口液剤であり、難治性てんかんの治療薬として世界で初めて承認された植物由来の医薬品です。2018年にアメリカ食品医薬品局(FDA)から承認を受け、これまで有効な治療法がなかった患者さんに新たな希望をもたらしました。

エピディオレックスは、99.9%の高純度CBDを含有する経口液剤です。ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症という3つの難治性てんかんに対して有効性が証明され、臨床試験では発作頻度を最大44%減少させることが示されています。日本では2024年の法改正により、使用への道が開かれました。

エピディオレックスとは

エピディオレックス(Epidiolex/EPIDYOLEX)は、英国のバイオ医薬品企業GWファーマシューティカルズ(現Jazz Pharmaceuticals)が開発した、大麻草由来のCBDを有効成分とする抗てんかん薬です。有効成分のCBDは99.9%の高純度で含有されており、大麻の精神活性成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)は含まれていません。

従来の抗てんかん薬では十分な効果が得られなかった難治性てんかんに対して、新たな治療選択肢を提供する画期的な医薬品として位置づけられています。特に、小児期に発症する重篤なてんかんであるドラベ症候群やレノックス・ガストー症候群の患者にとって、待望の治療薬となりました。

FDA承認の経緯

2013年

治験開始

GWファーマシューティカルズがアメリカで第3相臨床試験を開始

2017年

新薬承認申請

FDAに新薬承認申請(NDA)を提出

2018年6月25日

FDA承認

ドラベ症候群・レノックス・ガストー症候群に対する治療薬として承認

2018年9月

DEAスケジュール変更

Schedule Vに再分類され、処方が可能に

2019年9月

欧州承認

欧州医薬品庁(EMA)がEPIDYOLEXとして承認

2020年8月

適応拡大

結節性硬化症(TSC)が適応症に追加

2023年

年齢制限緩和

1歳以上の患者への使用が承認

エピディオレックスは2018年6月25日、FDAによって承認された最初の植物由来の精製カンナビジオール医薬品です。この承認は、75年以上続いた大麻草由来成分の医薬品としての使用禁止を覆す歴史的な決定でした。

当初、2歳以上のドラベ症候群およびレノックス・ガストー症候群患者への使用が承認されましたが、その後の研究により2020年に結節性硬化症が適応症に追加され、2023年には1歳以上の患者への使用も認められるようになりました。

対象疾患

エピディオレックスは、以下の3つの難治性てんかんに対して承認されています。

ドラベ症候群(DS)

概要: 乳児期に発症する重篤なてんかん

特徴:

  • 1歳未満で発症
  • 発熱時に長時間の痙攣発作
  • 知的発達の遅れを伴うことが多い
  • 日本の患者数:約3,000人

エピディオレックスの効果:

  • 痙攣発作を39%減少(プラセボ比)
  • 5%の患者で発作が完全に消失

レノックス・ガストー症候群(LGS)

概要: 小児期に発症する難治性てんかん

特徴:

  • 3-5歳で多く発症
  • 脱力発作(ドロップアタック)が特徴
  • 複数の発作タイプが混在
  • 日本の患者数:約4,300人

エピディオレックスの効果:

  • ドロップ発作を44%減少(20mg/kg群)
  • 7%の患者でドロップ発作が消失

結節性硬化症は、全身の様々な臓器に良性腫瘍が発生する遺伝性疾患で、約80%の患者がてんかん発作を経験します。日本の患者数は約4,000〜12,000人と推定されており、2020年にエピディオレックスの適応症として追加されました。臨床試験では、発作頻度が48%減少することが示されています。

臨床試験の結果

エピディオレックスの有効性は、複数の大規模な二重盲検ランダム化比較試験(RCT)によって証明されています。

ドラベ症候群試験

120名の患者(2〜18歳)を対象とした試験では、エピディオレックス20mg/kg/日群とプラセボ群を比較しました。14週間の治療期間において、エピディオレックス群では月間痙攣発作回数が中央値で39%減少したのに対し、プラセボ群では13%の減少にとどまりました。

評価項目エピディオレックス群プラセボ群
痙攣発作の減少率(中央値)39%13%
50%以上発作減少した患者の割合43%27%
発作完全消失した患者の割合5%0%
試験継続を選択した患者の割合95%-

レノックス・ガストー症候群試験

2つの第3相試験において、合計396名の患者を対象に有効性が評価されました。エピディオレックス20mg/kg/日群では、月間ドロップ発作回数が44%減少し、プラセボ群の22%を大きく上回りました。

注目すべき点として、発作の減少は治療開始から4週間以内に観察され、一部の患者では投与10日目から効果が現れ始めました。また、75%以上の発作減少を達成した患者の割合は、エピディオレックス群で11%、プラセボ群で3%と、約3倍の差が見られました。

作用機序

エピディオレックスの抗てんかん作用は、単一の標的ではなく、複数の分子経路を介した多面的なメカニズムによるものと考えられています。

一般的に誤解されていますが、CBDは生理学的に達成可能な濃度ではカンナビノイド受容体(CB1/CB2)を直接活性化しません。代わりに、GPR55受容体の拮抗、TRPV1チャネルの脱感作、アデノシンシグナルの増強という3つの主要経路を介して神経の過興奮を抑制します。

GPR55受容体の拮抗作用

GPR55は中枢神経系に広く分布する孤児Gタンパク質共役型受容体であり、海馬、視床、前頭皮質などに高濃度で存在します。内因性リガンドであるリゾホスファチジルイノシトール(LPI)がGPR55を活性化すると、小胞体からのカルシウム放出が促進され、興奮性神経伝達が増強されます。

CBDはGPR55のアンタゴニストとして作用し、このカルシウム放出を抑制することで、興奮性電流と発作活動を減少させます。GPR55ノックアウトマウスを用いた研究では、CBDの抗けいれん効果が減弱することが確認されており、この受容体がCBDの作用において重要な役割を果たしていることが示されています。

TRPV1チャネルの脱感作

TRPV1(一過性受容体電位バニロイド1型)は、痛みや温度感覚に関与するイオンチャネルですが、神経の興奮性にも影響を与えます。CBDはTRPV1アゴニストとして作用し、チャネルを急速に脱リン酸化・脱感作させます。

この結果、細胞外からのカルシウム流入が減少し、神経伝達が抑制されます。TRPV1ノックアウトマウスを用いた研究では、CBDに対する反応が鈍化することが確認されており、TRPV1がCBDの抗けいれん作用における重要な標的であることが示されています。

アデノシン経路の増強

CBDは平衡型ヌクレオシドトランスポーター1(ENT-1)を阻害することで、細胞外アデノシン濃度を上昇させます。アデノシンは神経保護作用と抗けいれん作用を持つ内因性物質であり、その濃度上昇は発作抑制に寄与すると考えられています。

用法・用量

エピディオレックスは経口液剤として、1日2回に分けて服用します。

  • 開始用量: 2.5mg/kg を1日2回(5mg/kg/日)
  • 維持用量: 5mg/kg を1日2回(10mg/kg/日)
  • 最大用量: 10mg/kg を1日2回(20mg/kg/日)

用量は1週間の投与期間を経てから増量し、忍容性と有効性に応じて調整します。20mg/kg/日の用量では、より大きな発作減少効果が期待できますが、副作用の発現リスクも高まります。

食事の有無にかかわらず服用可能ですが、高脂肪食とともに服用するとCBDの血中濃度が上昇する可能性があるため、服用条件は一定に保つことが推奨されています。

副作用と注意事項

主な副作用

臨床試験で報告された主な副作用は以下の通りです。

副作用発現頻度(20mg/kg群)プラセボ群
傾眠・鎮静25-33%8-17%
食欲減退16-26%5%
下痢10-15%5-10%
肝酵素上昇(ALT)13%1%
発熱14%10%
嘔吐10%5%
疲労感11%5%

肝毒性(肝酵素上昇)

エピディオレックスは用量依存的に肝酵素(ALT/AST)を上昇させる可能性があります。特に、バルプロ酸やクロバザムを併用している患者では、肝酵素上昇のリスクが高まります。

  • バルプロ酸とクロバザム併用時: ALT上昇(>3×ULN)30%
  • バルプロ酸のみ併用時: ALT上昇 21%
  • クロバザムのみ併用時: ALT上昇 4%
  • いずれも併用なし: ALT上昇 3%

バルプロ酸併用患者では、高アンモニア血症のリスクも高まるため、定期的な肝機能検査と血中アンモニア測定が推奨されます。

薬物相互作用

エピディオレックス(CBD)は、肝臓のチトクロームP450酵素系(特にCYP2C19、CYP3A4)を介して代謝され、これらの酵素の阻害剤としても作用します。

特にクロバザムとの相互作用は臨床的に重要です。CBDはCYP2C19を阻害し、クロバザムの活性代謝物であるN-デスメチルクロバザムの血中濃度を最大3倍に上昇させます。この相互作用により、傾眠や鎮静作用が増強される可能性があるため、クロバザムの減量が必要になる場合があります。

日本での状況

法改正前の状況

日本では長年、大麻取締法により大麻草由来成分を含む医薬品の使用が禁止されていました。エピディオレックスは大麻草の規制部位から抽出された成分を含んでいるため、たとえ医薬品として承認されても使用できない状況が続いていました。

治験の実施

2022年3月に治験届が提出され、同年12月から国内で被験者への投与が開始されました。この第3相臨床試験は、レノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群、結節性硬化症の国内患者を対象に、有効性と安全性を検証することを目的としています。

2024年法改正による転換

2023年12月

法改正成立

大麻取締法・麻向法の改正案が国会で可決

2024年4月

希少疾病用医薬品指定

エピディオレックスが日本で希少疾病用医薬品に指定

2024年12月12日

改正法施行

大麻草由来医薬品の使用が法的に可能に

今後

承認申請予定

治験完了後、正式な承認申請へ

2024年12月12日に施行された改正大麻取締法により、大麻草由来医薬品の製造・使用が法的に可能となりました。この法改正により、エピディオレックスが日本で承認されれば、国内の難治性てんかん患者(推定2〜4万人)に新たな治療選択肢が提供されることになります。

エピディオレックスは2024年4月に希少疾病用医薬品に指定されており、治験が順調に進めば正式な承認申請が行われる見込みです。承認されれば、日本初の大麻由来医薬品となり、これまで有効な治療法がなかった難治性てんかん患者にとって画期的な治療選択肢となります。

市販のCBD製品との違い

エピディオレックスは医薬品として厳格な品質管理の下で製造されており、市販のCBD製品とは大きく異なります。

エピディオレックス(医薬品)

  • 純度: CBD 99.9%
  • 製造基準: GMP(医薬品適正製造基準)準拠
  • 品質管理: ロットごとの厳格な検査
  • THC含有: なし(0.1%未満)
  • 臨床試験: 大規模RCTで有効性・安全性を実証
  • 処方: 医師の処方箋が必要
  • 価格: 高額(日本での薬価は未定)

市販CBD製品

  • 純度: 製品により大きく異なる
  • 製造基準: 統一基準なし
  • 品質管理: 製品により差がある
  • THC含有: 微量含む場合あり
  • 臨床試験: 医薬品としての試験なし
  • 購入: 処方箋不要
  • 価格: 製品により様々

市販のCBD製品は、てんかんの治療目的で使用することは推奨されません。エピディオレックスの有効性は、医薬品グレードの純粋なCBDを用いた臨床試験で証明されたものであり、市販製品で同様の効果が得られる保証はありません。てんかんの治療は必ず専門医の指導の下で行ってください。

FAQ

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参考文献

本記事の作成にあたり、以下の情報源を参照しました。

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