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経皮吸収(Transdermal)とは?CBDの皮膚からの吸収メカニズムと製剤技術を解説

THE ASA MEDIA編集部
10分
経皮吸収(Transdermal)とは?CBDの皮膚からの吸収メカニズムと製剤技術を解説

経皮吸収(Transdermal)とは?CBDの皮膚からの吸収メカニズムと製剤技術を解説

経皮吸収(Transdermal Absorption)とは、有効成分を皮膚表面から真皮を通過させ、血液中に送達する投与方法です。CBDは経口摂取時のバイオアベイラビリティ(生体利用率)が6〜20%と低い課題がありますが、経皮投与では肝臓での初回通過効果を回避できるため、理論上は大幅に高い吸収効率を実現できます。2023年に発表された世界初のヒト薬物動態試験では、経皮送達システムによりCBDとTHCが皮膚を透過して全身循環に到達することが実証されました。

経皮吸収は、有効成分を皮膚から血流に直接送り込む投与法です。消化管や肝臓を経由しないため、初回通過効果(肝臓での代謝)を回避でき、経口摂取と比較して高いバイオアベイラビリティが期待できます。CBDパッチなどの経皮製剤は、効果の発現が緩やかで持続時間が長く、一定の血中濃度を維持できる特徴があります。

皮膚の構造と透過バリア

経皮吸収を理解するためには、まず皮膚の構造を知る必要があります。皮膚は外側から順に、表皮、真皮、皮下組織の3層から構成されています。

角質層(Stratum Corneum):最大のバリア

表皮の最外層にある角質層は、経皮吸収における最も重要なバリアです。角質層は厚さわずか15〜20μm(マイクロメートル)ですが、角質化した死んだ細胞(角質細胞、コルネオサイト)がセラミド、遊離脂肪酸、コレステロールからなる脂質マトリックスに埋め込まれた「レンガとモルタル」構造をとっており、外部からの物質侵入を強力に阻止します。

CBDのような脂溶性物質が皮膚を透過するためには、この角質層のバリアを突破しなければなりません。角質層の脂質は高度に秩序だった配列をとっているため、単純な拡散だけでは十分な透過は期待できません。

表皮と真皮

角質層を通過した物質は、生きた表皮細胞層(ケラチノサイト、メラノサイト、ランゲルハンス細胞など)を経て、血管が存在する真皮に到達します。真皮には毛細血管網が張り巡らされており、ここで初めて有効成分が血液中に吸収され、全身循環へと送り込まれます。

CBDの経皮吸収が有効な理由

  1. 初回通過効果の回避: 経口摂取したCBDは腸管から吸収後、門脈を経て肝臓に運ばれ、CYP450酵素系による代謝を受けます。この過程でCBDの大部分が分解されますが、経皮吸収では肝臓を迂回するため、この損失を避けられます。

  2. 安定した血中濃度: パッチなどの経皮製剤は、長時間にわたってゆっくりとCBDを放出します。これにより、急激な血中濃度の上昇(ピーク)や急速な低下を避け、一定の濃度を維持できます。

  3. 消化管への負担軽減: 胃酸や消化酵素による分解を受けず、消化器系への影響を最小限に抑えられます。

  4. 持続的な効果: 製品によっては4〜96時間の持続効果が期待でき、頻繁な再投与が不要です。

2024年の研究では、ナノキャリアを搭載したCBD経皮パッチ(PCTD-12)が、経口投与と比較して9.47倍高いバイオアベイラビリティを示したことが報告されています。これは経皮送達がCBDの吸収効率を劇的に向上させる可能性を示唆しています。

トピカル(局所)投与と経皮(全身)投与の違い

皮膚へのCBD適用には、「トピカル(局所投与)」と「トランスダーマル(経皮投与)」の2種類があり、これらは根本的に異なる目的を持っています。

トピカル(局所投与)

特徴:

  • CBDクリーム、バーム、軟膏など
  • 皮膚表面〜真皮上層に作用
  • 血流には到達しない(または微量)
  • 塗布部位のみに効果

適した用途:

  • 局所的な痛みや炎症
  • 皮膚トラブル(乾燥、湿疹など)
  • 筋肉の疲労回復
  • 関節の不快感

トランスダーマル(経皮投与)

特徴:

  • CBDパッチ、経皮ジェルなど
  • 皮膚を完全に透過
  • 血流に到達し全身循環
  • 全身に効果が及ぶ

適した用途:

  • 全身的な症状への対処
  • 持続的な効果が必要な場合
  • 経口摂取が困難な場合
  • 安定した血中濃度維持

重要な点として、一般的なCBDクリームやバームは「トピカル」製品であり、血流にはほとんど到達しません。全身効果を得るためには、「トランスダーマル」設計の製品(透過促進剤配合のパッチやジェルなど)を選ぶ必要があります。

バイオアベイラビリティの比較

投与方法バイオアベイラビリティ効果発現時間効果持続時間
経口摂取(カプセル・食用品)6-20%30-90分4-6時間
舌下摂取15-35%15-30分4-6時間
トピカル(局所塗布)N/A(局所のみ)15-45分3-5時間
経皮パッチ最大90%(理論値)30-60分4-96時間
経皮ジェル13-50%15-30分4-8時間
吸入(VAPE)30-60%数分2-3時間

適切に設計された経皮パッチは、初回通過効果を完全に回避するため、理論上は非常に高いバイオアベイラビリティを実現できます。2023年の健常成人を対象とした薬物動態試験では、CBD 100mg/THC 100mgを含む経皮システム(Gefion GT4技術)が、投与後12時間にわたって持続的な血中濃度を維持したことが確認されています。

透過促進剤(Penetration Enhancers)

角質層バリアを効率的に突破するために、多くの経皮製剤では透過促進剤が使用されます。これらの化学物質は、角質層の脂質構造を一時的に変化させ、CBDの透過性を高めます。

主な透過促進剤の種類

DMSO

ジメチルスルホキシド

リン脂質分子の極性頭部間に浸透し、セラミド分子間の相互作用を弱めて脂質の流動性を高める。強力な透過促進効果があるが、独特の臭いが課題

Transcutol® P

トランスキュトール

角質層の親水性領域を膨潤させ、完全水和状態と同様の透過性を付与。THC・CBDの送達に特に効果的で、安定した分布プロファイルを実現

NMP

N-メチル-2-ピロリドン

角質層の脂質バリアを破壊し、カンナビノイドの72時間持続放出を可能にする。DMSO、乳酸との併用で高い透過効果

アルコール類

エタノール・プロピレングリコール

角質層の水分を除去してバリアを弱め、透過性を向上。プロピレングリコールは多くの医薬品で使用される実績ある促進剤

テルペン類

メントール・リモネンなど

角質層脂質膜の中央領域に安定化し、極性界面の水素結合を破壊して透過性を高める。メントールは最大流速を達成

透過促進のメカニズム

透過促進剤は主に以下のメカニズムで作用します。角質層の脂質二重層は高度に秩序だった配列をとっていますが、両親媒性分子(透過促進剤)がこの構造に挿入されると、脂質のパッキングが乱れたり、脂質が抽出されたりします。これにより、一時的に透過性が向上し、CBDのような脂溶性分子が通過しやすくなります。

最新の経皮送達技術

従来の透過促進剤に加え、ナノテクノロジーや物理的手法を用いた新しいアプローチが研究されています。これらの技術は、より効率的で制御された薬物送達を可能にします。

ナノキャリアシステム

エトソーム、リポソーム、ナノエマルジョン、固体脂質ナノ粒子などのナノキャリアは、カンナビノイドの溶解性、安定性、持続放出性を向上させます。これらのナノ製剤は従来の処方と比較して、皮膚層への透過性が優れていることが示されています。

特にエトソームは、エタノールを高濃度で含む柔軟な小胞で、角質層との親和性が高く、CBDの深部送達に効果的です。

マイクロニードル(微細針)技術

2024年の研究では、3Dプリント技術を用いたマイクロニードルパッチが開発され、CBDの経皮送達における前臨床モデルでのバイオアベイラビリティ向上が実証されました。マイクロニードルは角質層に微細な穴を開け、物理的にバリアを突破することで、薬物の透過を促進します。

イオントフォレシス

軽度の電流を使用して皮膚透過性を高める技術です。マイクロニードルとイオントフォレシスの組み合わせは、より深い層へのカンナビノイド送達において相乗効果を示すことが報告されています。

臨床研究のエビデンス

ヒト薬物動態試験

2023年に発表された世界初のヒト経皮CBD薬物動態試験では、18名の健常成人を対象に、Gefion GT4技術を用いた経皮システム(CBD 100mg + THC 100mg)の全身バイオアベイラビリティが調査されました。

参加者の血液を投与前、投与後10分、20分、30分、45分、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、12時間に採取し分析した結果、CBDとTHCが皮膚を透過して全身循環に到達することが確認されました。血中濃度のピークは採血期間の後半に現れ、長時間にわたる持続的な送達が実証されています。

てんかん患者における臨床試験

3〜18歳の難治性てんかん患者48名を対象とした臨床試験では、CBD経皮ジェルの安全性と忍容性が6.5ヶ月の治療期間を通じて確認されました。さらに、複雑部分発作(FIAS)が44.5%、強直間代発作(TCS)が22.7%減少するという有効性も観察されています。

CBD経皮製品の課題

市販製品の品質問題

研究者がオンラインで購入可能な市販CBDパッチを分析した結果、6製品中5製品が表示されているCBD含有量と異なっていたことが判明しました(許容範囲±10%を超える誤差)。4製品は過少表示、1製品は過大表示でした。現在、FDAが承認したCBDパッチは存在せず、市販製品の品質と効果には大きなばらつきがあります。

技術的課題

CBDは高度に脂溶性(疎水性)であるため、経皮製剤の開発には固有の課題があります。この特性は皮膚吸収を複雑にし、適切な製剤設計なしでは効果的な透過が困難です。中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)などのキャリアや、上述の透過促進剤を組み合わせることで、これらの課題に対処する研究が進められています。

経皮CBD製品の選び方

  1. 製品タイプの確認: 「トピカル」(局所用)か「トランスダーマル」(経皮・全身用)かを明確に区別する
  2. 第三者機関のCOA: CBD含有量とTHC不検出が独立した検査機関により確認されていること
  3. 透過促進技術の説明: どのような技術で皮膚透過を促進しているか情報開示があること
  4. 臨床データの有無: 可能であれば、人体での有効性を示すデータがある製品を選ぶ
  5. 適切な用量表示: パッチの場合、総含有量だけでなく時間あたりの放出量が明示されていること
  6. 保存条件の指示: 経皮製剤は温度変化に敏感な場合があるため、適切な保存方法が示されていること

日本での入手可能性

日本国内でもCBDクリームやバームなどのトピカル製品は広く販売されていますが、全身効果を目的とした本格的な「経皮パッチ」製品は選択肢が限られています。海外では様々な経皮CBD製品が販売されていますが、輸入の際はTHC含有量に関する日本の規制に十分注意が必要です。

2024年12月12日に施行された改正大麻取締法により、大麻由来医薬品の使用が認められるようになりましたが、これは処方薬に関するものであり、一般的なCBD製品には直接影響しません。CBD製品を選ぶ際は、第三者機関による成分分析証明書(COA)でTHCが検出されていないことを必ず確認してください。

FAQ

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参考文献

本記事の作成にあたり、以下の情報源を参照しました。

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