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セサメット(Cesamet)とは?合成カンナビノイド制吐薬ナビロンを徹底解説

THE ASA MEDIA編集部
9分
セサメット(Cesamet)とは?合成カンナビノイド制吐薬ナビロンを徹底解説

セサメット(Cesamet)とは?合成カンナビノイド制吐薬ナビロンを徹底解説

セサメット(Cesamet)は、合成カンナビノイドであるナビロン(nabilone)を有効成分とする経口カプセル剤です。化学療法による吐き気と嘔吐(CINV:Chemotherapy-Induced Nausea and Vomiting)の治療薬として、従来の制吐薬が効かない患者に使用されます。大麻の主要な精神活性成分であるTHCの構造を模倣して合成された医薬品であり、アメリカ、カナダ、イギリスなどで承認されています。

セサメットは合成カンナビノイド・ナビロンを含む制吐薬で、1985年にFDA承認を受けました。THCの約2倍の活性を持ち、CB1受容体への作用により制吐効果を発揮します。従来の制吐薬で効果が得られない化学療法患者の吐き気・嘔吐に対する二次治療薬として使用されています。

セサメットとは

セサメット(Cesamet)は、合成カンナビノイドのナビロン(nabilone)を有効成分とする経口カプセル製剤です。ナビロンは、大麻に含まれる主要な精神活性成分であるΔ9-THC(テトラヒドロカンナビノール)の構造を模倣して人工的に合成された化合物であり、THCと類似した薬理作用を示します。

化学的にはTHCとは異なる構造を持っていますが、カンナビノイド受容体(CB1およびCB2)に対する部分アゴニスト活性を通じてTHCと同様の薬理効果を発揮します。重要な点として、ナビロンはTHCの約2倍の活性を持つとされています。

セサメットは、カナダ、アメリカ合衆国、イギリス、メキシコなど複数の国で承認・販売されており、化学療法を受けるがん患者の支持療法として重要な役割を果たしています。

承認の経緯と歴史

1970年代

開発開始

Eli Lilly社がナビロンの開発を開始

1981年

カナダ承認

Health Canadaにより最初の承認を取得

1985年

FDA承認

アメリカFDAが化学療法誘発性悪心嘔吐への使用を承認

1989年

米国市場撤退

Eli Lillyが商業的理由により米国での販売を中止

2004年

権利譲渡

Valeant PharmaceuticalsがLillyから権利を取得

2006年5月16日

米国再承認

Valeantが米国での販売承認を再取得、市場に復帰

セサメットの歴史は複雑です。1985年にFDAから最初の承認を受けましたが、実際にアメリカ市場で販売が開始されたのは2006年になってからでした。この間、より効果的で副作用の少ない5-HT3受容体拮抗薬(オンダンセトロンなど)が登場し、カンナビノイド系制吐薬の位置づけが変化していきました。

適応症

セサメットは、以下の状態に対して承認されています。

化学療法誘発性悪心嘔吐(CINV)

従来の制吐薬治療に十分な反応を示さなかった患者における、がん化学療法に伴う吐き気と嘔吐の治療

※日本では未承認です

化学療法誘発性悪心嘔吐(CINV)について

がん化学療法を受ける患者の約70〜80%が悪心嘔吐を経験するとされています。標準的な制吐薬を使用しても、40〜60%の患者で症状が完全にはコントロールできないことがあります。このような難治性のCINVに対して、セサメットは二次治療薬として使用されます。

現在のCINV標準治療は、5-HT3受容体拮抗薬(オンダンセトロン、グラニセトロンなど)、デキサメタゾン、NK1受容体拮抗薬(アプレピタントなど)の組み合わせです。セサメットなどのカンナビノイド系制吐薬は、これらの標準治療で効果が得られない患者の突発的な悪心嘔吐に対して使用されます。

作用機序

セサメットの制吐作用は、主に中枢神経系のCB1受容体を介して発揮されます。

ナビロンはCB1およびCB2カンナビノイド受容体に対する部分アゴニストとして作用します。特に、嘔吐を制御する延髄の背側迷走神経複合体に存在するCB1受容体への作用が、制吐効果の主要なメカニズムと考えられています。

CB1受容体を介した制吐作用

CB1受容体は中枢神経系に高密度で分布しており、特に嘔吐反射を制御する背側迷走神経複合体(孤束核、最後野、迷走神経背側運動核)に存在しています。ナビロンがこれらのCB1受容体を活性化することで、嘔吐中枢からの嘔吐信号が抑制されます。

セロトニン系との相互作用

動物実験では、カンナビノイドがシナプス前のCB1受容体に作用してセロトニン(5-HT)の放出を減少させることが示されています。セロトニンは化学療法誘発性嘔吐の主要なメディエーターであるため、この作用も制吐効果に寄与していると考えられています。

その他の受容体への作用

ナビロンはCB1/CB2受容体以外にも、間接的に5-HT3受容体やD2受容体に影響を与える可能性があります。この多面的な作用が、従来の制吐薬に抵抗性を示す患者への効果につながっている可能性があります。

用法・用量

成人用量: 1〜2mgを1日2回経口投与

投与タイミング: 化学療法当日は、抗がん剤投与の1〜3時間前に初回投与

用量調整: 副作用を最小限に抑えるため、低用量(1mg×2回/日)から開始し、必要に応じて増量

最大用量: 6mg/日(2mg×3回)を超えないこと

治療は通常、化学療法の前日夜から開始し、化学療法終了後48時間まで継続することが推奨されています。副作用(特に精神症状)のモニタリングが重要であり、患者の状態に応じて用量を調整します。

臨床効果

複数の臨床試験において、セサメット(ナビロン)は従来の制吐薬であるプロクロルペラジンなどと比較して、優れた制吐効果を示しています。

臨床試験の結果

過去40年間にわたる研究により、ナビロンが特に従来治療に反応しない患者において、有効な制吐薬であることが明確に示されています。

比較項目ナビロンプロクロルペラジン
完全奏効率(嘔吐なし)約20-30%約10-20%
患者の好みより多くの患者が選好-
副作用プロファイル精神症状が多い錐体外路症状が多い

他の適応への研究

ナビロンは承認適応以外にも、以下の状態に対する有効性が研究されています。

  • 慢性疼痛: 線維筋痛症、神経障害性疼痛における補助鎮痛薬としての使用
  • PTSD関連悪夢: カナダの臨床試験では、47人中34人(72%)の患者で悪夢の頻度・強度が減少
  • 食欲不振: AIDS患者の食欲不振と体重減少に対する承認あり(カナダ)
  • パーキンソン病: 運動障害への効果が研究中

副作用

セサメットは精神活性カンナビノイドであるため、特有の副作用プロファイルを持ちます。

頻度の高い副作用

副作用発現頻度
傾眠(眠気)66.0%
めまい・ふらつき58.8%
精神的ハイ状態(多幸感)38.8%
口渇21.6%
抑うつ14.0%
運動失調12.8%
視力ぼやけ12.8%
食欲増進8.0%
頭痛6.7%
集中困難3.3%

重要な注意事項

精神症状: セサメットで治療された患者の相当な割合が、他の制吐薬では見られない精神模倣作用(多幸感、解離、幻覚など)を経験します。このため、従来の制吐療法が失敗した場合にのみ使用が推奨されます。

乱用の可能性: セサメットは米国で規制物質法のスケジュールII(乱用の可能性が高い物質)に分類されています。

運転・機械操作: 傾眠、めまい、精神症状が高頻度で発現するため、治療中の運転や危険を伴う機械操作は避けるべきです。

精神疾患歴: 精神疾患の既往がある患者では、症状が悪化する可能性があります。

マリノールとの比較

セサメット(ナビロン)とマリノール(ドロナビノール)は、どちらもカンナビノイド系制吐薬ですが、いくつかの重要な違いがあります。

セサメット(ナビロン)

  • 成分: 合成カンナビノイド
  • THCとの関係: THCの構造類似体(模倣)
  • 活性: THCの約2倍
  • 規制分類: スケジュールII
  • 代謝: 肝臓で代謝後、便中に排泄
  • 半減期: 約2時間(活性代謝物は35時間)
  • 特徴: 合成品のため品質が一定

マリノール(ドロナビノール)

  • 成分: 合成Δ9-THC
  • THCとの関係: THCそのもの
  • 活性: 基準
  • 規制分類: スケジュールII(2018年まではIII)
  • 代謝: 初回通過効果が大きい
  • 半減期: 約4時間(代謝物は25-36時間)
  • 特徴: 吸収にばらつきあり

両薬剤とも化学療法誘発性悪心嘔吐の治療に承認されていますが、直接比較した大規模試験は限られています。一般的に、どちらを選択するかは患者の反応性、副作用プロファイル、入手可能性などを考慮して決定されます。

日本での状況

セサメット(ナビロン)は、現在日本では承認されていません。日本では、合成カンナビノイドを含む医薬品は麻薬及び向精神薬取締法の規制対象となる可能性があり、使用には特別な手続きが必要です。

2024年12月12日に施行された改正大麻取締法により、大麻由来医薬品の使用が法的に可能となりましたが、セサメットのような合成カンナビノイド製剤の承認申請状況は不明です。

日本のがん治療においては、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬、デキサメタゾンなどの標準的な制吐療法が使用されており、カンナビノイド系制吐薬は選択肢として利用できない状況が続いています。

FAQ

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参考文献

本記事の作成にあたり、以下の情報源を参照しました。

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THE ASA MEDIA編集部

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