CBDは自閉症に効果ある?FDA Phase 2承認のAJA001臨床試験を徹底解説【2025年最新】

この記事のポイント
✓ 2025年2月、史上初のフルスペクトラムCBD医薬品AJA001がFDA Phase 2臨床試験の承認を取得
✓ 60名を対象とした12週間試験で自閉症スペクトラム障害の行動症状改善効果を検証予定
✓ イスラエル研究で90.2%の患者が何らかの症状改善を報告、日本でも将来的な導入の可能性
自閉症スペクトラム障害(ASD)を抱える子どもや家族にとって、安全で効果的な治療法を見つけることは切実な願いです。現在、FDA承認を受けた治療薬はわずか2種類のみで、いずれも体重増加や代謝異常などの副作用や忍容性の問題が指摘されています。しかし、2025年2月に医療大麻業界に画期的なニュースがもたらされました。
歴史上初めてフルスペクトラムCBDベースの医薬品が、FDAからPhase 2臨床試験の承認を取得したのです。これは自閉症治療における大きな転換点となる可能性があります。本記事では、DeFloria社が開発する「AJA001」の最新臨床試験情報を、科学的根拠に基づいて徹底解説します。

目次
AJA001とは?史上初のフルスペクトラムCBD医薬品
AJA001は、Ajna BioSciences PBCとCharlotte's Web Holdings, Inc.の共同ベンチャーであるDeFloria, Inc.が開発する医薬品候補です。この医薬品は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療を目的として開発されており、医薬品業界において極めてユニークな特徴を持っています。
開発背景:Charlotte's Webの15年以上の研究
Charlotte's Webは、大麻由来医薬品の開発において世界的に知られるブランドです。その名前は、2013年にCNNのSanjay Gupta医師が報道したCharlotte Figiの物語に由来します。Charlotte Figiは重度のてんかん(ドラベ症候群)を患う少女でしたが、CBDオイルによって週に300回以上あった発作が週に数回まで劇的に減少しました。この出来事がきっかけとなり、CBDの医療応用に関する研究が世界中で加速しました。
AJA001の開発には、この15年以上にわたる観察データ、研究成果、そして革新的な大麻草の栽培プロセスが活かされています。DeFloria社は、Charlotte's Webが蓄積してきた膨大な知見を基盤として、医薬品レベルの品質基準を満たす製品開発に取り組んでいます。
フルスペクトラム製剤の特徴
AJA001の最大の特徴は、Cannabis sativa L(大麻草)の独自品種CW1AS1から抽出された全草抽出物(Full Spectrum Hemp Extract, FSHE)で構成されているという点です。この製剤には、主要カンナビノイドであるCBD(カンナビジオール)に加えて、CBD以外の複数のカンナビノイド、さらには植物由来の芳香成分であるテルペンが含まれています。
このような「フルスペクトラム」アプローチは、単一成分のCBDを使用する従来の医薬品とは異なります。複数の成分が相互に作用することで、単一成分では得られない強力な治療効果が生まれると考えられています。これは「アントラージュ効果」(相乗効果)と呼ばれ、大麻医療研究の分野で注目されているメカニズムです。
FDA承認への道のり
AJA001のFDA承認に向けた道のりは、着実に進展してきました。以下のタイムラインは、この医薬品の開発における重要なマイルストーンを示しています。
Phase 1試験結果を米国神経精神薬理学会(ACNP)年次総会で発表
最大680mg/日まで安全性を確認
FDAがPhase 2臨床試験のIND(治験薬申請)を承認
史上初のフルスペクトラムCBD医薬品として画期的なマイルストーン達成
Phase 2試験開始予定(米国)
オーストラリアでの小児Phase 2試験も計画中
Phase 2試験結果の公表
Phase 3試験への移行判断
このタイムラインが示すように、AJA001は医薬品としての承認に向けて科学的な検証プロセスを着実に進めています。特に2025年2月のFDA承認は、経口摂取型の全身吸収ボタニカル医薬品として世界初の快挙であり、大麻由来医薬品の歴史において重要な転換点となりました。
FDA Phase 2臨床試験の詳細
FDA Phase 2臨床試験は、医薬品開発において有効性を初めて科学的に検証する重要な段階です。AJA001のPhase 2試験は、自閉症スペクトラム障害患者に対する治療効果を評価するために設計されています。
試験デザイン
AJA001のPhase 2臨床試験は、「AJA001 Phase 2 Open-Label Study for Autism Spectrum Disorder」という名称で実施されます。この試験は非盲検(open-label)デザインを採用しており、12週間にわたって実施される予定です。対象患者は13歳から29歳までの青年・若年成人60名で、自閉症スペクトラム障害と診断された方々が参加します。
試験の主要評価項目は3つあります。まず、投与量設定(titration regimen)の確立です。これは患者個々に最適な用量を見つけるプロセスを意味します。次に、有効性シグナルの検出、すなわちAJA001が実際に症状改善をもたらすかどうかを確認します。そして最後に、Phase 3試験に向けた用量レベルの決定を行います。これにより、より大規模な試験での適切な用量が特定されます。
評価対象となる行動症状は、自閉症スペクトラム障害の中核的な問題である社会的引きこもり、衝動性、易刺激性の3つです。これらの症状は、患者本人だけでなく家族や介護者にとっても大きな負担となっており、日常生活の質を著しく低下させる要因となっています。
Phase 1試験の安全性データ
Phase 2試験の実施に先立ち、Phase 1試験で重要な安全性データが確認されました。1日1回投与では最大680mg/日まで、1日2回投与では最大660mg/日(1回330mg)まで安全性が確認されています。忍容性は良好(well-tolerated)と評価され、重篤な副作用の報告はありませんでした。
これらの結果は、Charlotte's Web最高科学責任者のMarcel Bonn-Miller博士によって、2024年12月11日に開催された米国神経精神薬理学会(ACNP)年次総会で発表されました。Phase 1試験での良好な安全性プロファイルが、Phase 2試験への移行を可能にした重要な根拠となっています。
既存治療との比較
現在、FDA承認を受けている自閉症スペクトラム障害の治療薬は、リスペリドン(Risperdal)とアリピプラゾール(Abilify)の2種類のみです。しかし、これらの薬剤には重大な問題があります。
リスペリドンは非定型抗精神病薬であり、体重増加、代謝異常、鎮静などの副作用が頻繁に報告されています。一方、アリピプラゾールも非定型抗精神病薬で、錐体外路症状(運動機能の異常)や体重増加などの副作用が問題となっています。これらの副作用、忍容性の低さ、患者のコンプライアンス不良により、多くの家族が治療継続を断念せざるを得ない状況が生じています。そのため、より安全で効果的な新たな治療選択肢が切実に求められているのです。
自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?
自閉症スペクトラム障害を理解することは、AJA001の治療意義を知る上で重要です。ここでは、ASDの基本的な特徴から日本の現状、併存症まで詳しく解説します。
基本的な理解
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、脳の神経発達に関連する障害で、3つの主要な特徴によって定義されます。
第一の特徴は社会的コミュニケーションの困難です。ASDを持つ人は、他者との相互作用が苦手で、視線を合わせることが難しく、会話のやり取りが一方的になりやすい傾向があります。これにより、日常的なコミュニケーションが大きな負担となることがあります。
第二の特徴は社会的相互作用の障害です。他者の感情や意図を理解することが困難で、共感することが苦手なため、友人関係の構築が難しくなります。これは、社会生活を送る上で大きな障壁となります。
第三の特徴は限定的・反復的な行動パターンです。特定のルーティンへの強いこだわり、繰り返し行動(手をひらひらさせるなど)、特定の対象への強い興味や執着が見られます。これらの行動は、新しい環境への適応を困難にすることがあります。
日本の現状
日本における自閉症の有病率は、米国とほぼ同等の約1〜2%とされています。米国では36人に1人(約2.8%)の子どもがASDと診断されており、この数字は年々増加傾向にあります。診断基準の変更や社会の認識向上により、以前は見過ごされていたケースが診断されるようになったことが、この増加の一因と考えられています。
ASDの併存症
自閉症スペクトラム障害の治療を困難にしている要因の一つが、様々な併存症の存在です。ASD患者の5〜30%がてんかんを併発しています。また、不眠症や過眠症などの睡眠障害も非常に多く見られます。さらに、うつ病、不安障害、強迫性障害などの精神疾患を抱えることも少なくありません。注意欠陥・多動性障害(ADHD)の併発も頻繁に報告されています。加えて、音、光、触覚への過剰反応といった感覚過敏も、日常生活において大きな負担となっています。
これらの併存症は、患者本人の生活の質(QOL)を大きく低下させるだけでなく、家族や介護者にとっても大きな負担となっています。そのため、ASDの中核症状だけでなく、これらの併存症にも効果を示す治療法の開発が強く求められています。
なぜCBDが自閉症に効果を示す可能性があるのか?
CBDが自閉症スペクトラム障害に対して治療効果を示す可能性がある理由は、私たちの体に備わっているエンドカンナビノイドシステム(ECS)という神経伝達システムと深く関係しています。
エンドカンナビノイドシステム(ECS)の役割
エンドカンナビノイドシステムは、気分と感情、社会的行動、不安とストレス反応、記憶と学習、運動機能、痛みの感覚、免疫機能など、私たちの心身の様々な機能を調節しています。このシステムは、主に脳・中枢神経系に分布するCB1受容体と、免疫細胞・末梢神経系に分布するCB2受容体を介して機能します。
ASD患者におけるECS機能不全の仮説
複数の研究により、ASD患者ではエンドカンナビノイドの濃度が非常に低いことが報告されています。この発見は、自閉症の発症メカニズムにECSの機能不全が関与している可能性を示唆しています。
エンドカンナビノイド仮説によれば、ASD患者の中枢神経系におけるCB1受容体に異常が見られます。また、内因性カンナビノイドの一種であるアナンダミドが正常に機能していない可能性があります。さらに、胎児期から小児期の脳神経発達において、ECSの機能不全が発症に関与していると考えられています。
一方、ミクログリア仮説では、ASD患者の脳内でミクログリア(神経免疫細胞)が異常に増殖し、過剰な神経炎症が発生していると考えられています。CB2受容体を活性化することで、この炎症を抑制できる可能性が指摘されています。
CBDの作用メカニズム
CBDは、多様なメカニズムを通じてASD症状を改善する可能性があります。まず、ECSの間接的活性化により、アナンダミドを分解する酵素(FAAH)を阻害し、内因性カンナビノイドの濃度を増加させます。また、セロトニン受容体(5-HT1A受容体)を活性化することで、抗不安作用や抗うつ作用を発揮します。
さらに、ドーパミン受容体への作用により、興奮、攻撃性、衝動性を軽減する効果も期待されています。抗炎症作用によって神経炎症を抑制し、脳神経を保護する働きも確認されています。加えて、抗酸化作用により酸化ストレスから脳を保護することで、神経細胞の健康維持に寄与する可能性があります。
これまでの臨床研究:イスラエルとブラジルのエビデンス
AJA001のPhase 2試験が実施される背景には、既に報告されているいくつかの重要な臨床研究の存在があります。ここでは、特に注目すべきイスラエルとブラジルの研究結果を詳しく見ていきます。
イスラエルの大規模観察研究(2019年)
2019年に発表されたイスラエルの研究は、CBDの自閉症治療における可能性を示す重要なエビデンスとなりました。この研究では、188名のASD患者(平均年齢12.9歳、81.9%が男性)を対象に、CBD 30%、THC 1.5%の混合オイルが投与されました。1日平均でCBD 79.5mg、THC 4.0mgが使用され、6ヶ月後に93名の患者について評価が行われました。
結果は非常に印象的なものでした。93名のうち、28名(30.1%)が有意な改善を示し、50名(53.7%)が中等度の改善を示しました。軽度の改善を示したのは6名(6.4%)で、変化なしと評価されたのはわずか8名(8.6%)でした。これは、90.2%の患者が何らかの改善を示したことを意味します。
症状別に見ると、落ち着きのなさでは89.8%が改善し、激怒発作では89.0%が改善しました。焦燥感は83.8%、不安は88.8%の患者で改善が見られました。副作用については、25.2%(23名)が何らかの副作用を経験しましたが、最も多かったのは落ち着きのなさで6.6%に留まりました。
この研究は、CBDの安全性と有効性を示す重要なエビデンスとなり、その後の臨床試験の基礎を築きました。
ブラジルの研究(2023年)
ブラジルで行われた研究では、CBD単独投与によって社会的相互作用の改善、睡眠の質の向上、不安の軽減、攻撃性の減少といった効果が報告されています。イスラエルの研究がCBDとTHCの混合物を使用したのに対し、ブラジルの研究ではCBD単独での効果が確認されたことは、THCを含まない治療法の可能性を示唆する重要な知見です。
欧州精神医学会議のメタ解析(2025年)
2025年の欧州精神医学会議では、5歳から21歳までの276名を対象とした3つのランダム化プラセボ対照試験のメタ解析が発表されました。この統合解析により、CBDがASD症状の改善に有意な効果を示すことが科学的に確認されました。メタ解析は複数の研究結果を統合して分析する手法であり、より強力なエビデンスを提供します。
これらの研究結果を総合すると、CBDがASD治療において安全性と有効性の両面で有望な選択肢であることが示されています。
AJA001の強みと独自性
AJA001は、既存のCBD製品や他の医薬品候補と比較して、いくつかの独自の強みを持っています。これらの特徴が、FDA Phase 2試験の承認につながった重要な要因となっています。
全草抽出物(フルスペクトラム)のアントラージュ効果
AJA001の最大の特徴は、CBD単独ではなく複数のカンナビノイドとテルペンを含むフルスペクトラム製剤であることです。この構成により、アントラージュ効果(相乗効果)が生まれます。
具体的には、CBDとCBG(カンナビゲロール)の組み合わせにより抗炎症作用が増強されます。また、CBDとCBC(カンナビクロメン)の組み合わせは神経保護作用を向上させます。さらに、CBDとテルペン(リモネン、リナロール、β-カリオフィレン)の組み合わせは、抗不安作用や鎮静作用を増強すると考えられています。
最近の研究では、CBD、THC、CBGVの3成分がASD症状の改善に特に重要であることが示されています。このような複数成分の相乗効果により、単一成分では得られない優れた治療効果が期待されています。
cGMP準拠の製造プロセス
AJA001は、cGMP(現行適正製造基準)とFDA品質要件に準拠した製造プロセスで生産されています。これは、一般的なCBDサプリメントとは一線を画す医薬品レベルの品質管理を意味します。製造工程の各段階で厳格な品質チェックが行われ、製品の一貫性と安全性が保証されています。
10年以上の観察データの蓄積
Charlotte's Webは、10年以上にわたる観察データと研究を蓄積しています。この膨大なデータには、数千人の患者の使用経験、安全性情報、効果のパターンなどが含まれており、AJA001の開発における強固な基盤となっています。長期間の観察データは、医薬品開発において非常に価値の高い資産です。
専門家チームの結集
AJA001の開発を主導しているのは、世界トップクラスの専門家チームです。CEOのJared Stanleyは、Charlotte's Web共同創業者であり、15年以上の大麻産業経験を持っています。最高医療顧問のOrrin Devinsky医師は、NYU Langone包括的てんかんセンター所長であり、FDA承認CBD医薬品Epidiolex(エピディオレックス)の主任研究者を務めました。
最高科学責任者のMarcel Bonn-Miller博士は、20年以上のカンナビノイド医薬品開発経験を持つ世界的権威です。取締役会長のJoel StanleyはAjna BioSciences CEOであり、Charlotte's Web元CEOという経歴を持っています。このような専門性の高いチームが、科学的に厳密な医薬品開発を推進しています。
日本での展望:エピディオレックスの治験状況
日本における大麻由来医薬品の状況は、近年大きく変化しています。大麻取締法の改正により、医療用途での使用が可能になったことで、AJA001のような新薬の将来的な導入に道が開かれました。
日本の医療大麻規制の転換点
日本では、2023年12月に大麻取締法の改正が国会で成立し、2024年12月12日に施行されました。この改正により、医療目的での大麻由来医薬品の使用が条件付きで解禁されました。改正の主なポイントは、従来の部位規制から成分規制への移行です。THC 0.3%以下の製品は合法となり、医療用大麻医薬品については医師の処方のもとで使用が可能となりました。
これにより、エピディオレックス(Epidiolex)などのCBD医薬品の治験が日本国内で実施できるようになりました。これは日本の医療大麻政策における歴史的な転換点と言えます。
エピディオレックスの日本治験
2019年、厚生労働省はエピディオレックスの治験を認める見解を示しました。これを受けて、聖マリアンナ医科大学が治験準備を開始しました。対象疾患は、ドラベ症候群とレノックス・ガストー症候群という小児難治性てんかんです。
日本国内での治験成績はまだ公表されていませんが、これらの疾患を抱える2万から4万人の難治性てんかん患者に希望をもたらす可能性があります。既存の治療法では十分な効果が得られなかった患者にとって、CBDベースの医薬品は新たな選択肢となることが期待されています。
AJA001の日本導入の可能性
AJA001がFDA承認を取得し、安全性と有効性が確立されれば、日本でも将来的に導入される可能性があります。エピディオレックスの治験で得られる経験やデータは、AJA001のような新薬の承認プロセスを円滑化する上で重要な役割を果たすでしょう。
ASD患者の5〜30%がてんかんを併発することから、エピディオレックスとAJA001の両方が、日本のASD患者とその家族にとって重要な治療選択肢となる可能性があります。てんかんとASDの両方を抱える患者にとって、これらの医薬品は二重の意味で有益となるかもしれません。
子どもにCBDを使用する際の注意点
自閉症スペクトラム障害は多くが小児期に診断されるため、子どもへのCBD使用に関する注意点を理解することは極めて重要です。ここでは、安全性、副作用、薬物相互作用、製品選択、用量調整について詳しく解説します。
安全性の評価
世界保健機関(WHO)は、CBDは一般的に忍容性が高く、安全性が良好であると報告しています。また、乱用や依存のリスクは低いとされています。これは、CBDが精神活性作用を持つTHCとは異なる特性を持つためです。しかし、子どもへの使用に際しては、成人以上に慎重な評価が必要です。
副作用
CBDの副作用は、他の薬剤に比べてマイルドですが、いくつかの症状が報告されています。一般的な副作用としては、下痢、口渇感、強い眠気、疲労感、食欲や体重の増加が挙げられます。稀な副作用としては、高用量摂取時に肝機能の低下が報告されています。そのため、定期的な血液検査によるモニタリングが推奨されます。
薬物相互作用
CBDは、肝臓の薬物代謝酵素(CYP450)を阻害するため、他の薬剤と相互作用を起こす可能性があります。特に注意が必要な薬剤には、抗てんかん薬(バルプロ酸など)、抗凝固薬(ワルファリンなど)、抗うつ薬(SSRI、三環系抗うつ薬など)があります。これらの薬を服用している場合、CBDを併用すると薬の血中濃度が変化し、効果や副作用に影響を与える可能性があります。そのため、必ず医師に相談してから使用してください。
THCフリー製品の選択
日本では、THC(テトラヒドロカンナビノール)は大麻取締法で規制されています。2024年12月12日施行の改正法により、THC 0.3%以下の製品は合法となりましたが、THCは子どもの脳発達に悪影響を及ぼす可能性があるため、小児への使用は避けるべきです。CBD製品を選ぶ際は、必ずTHCフリー(THC非検出)の製品を選択してください。第三者機関による成分分析証明書(COA)を確認することも重要です。
用量の調整
子どもにCBDを使用する場合は、必ず低用量から開始してください。推奨開始量は1〜2mg/kg/日です。成人の研究では50mg/日が上限とされることがありますが、子どもの場合は体重や年齢、症状の重症度に応じて医師が個別に用量を決定します。用量は段階的に調整され、効果と副作用のバランスを見ながら最適な量を見つけていきます。
よくある質問(FAQ)
Q1: AJA001はいつ日本で使えるようになりますか?
AJA001は現在Phase 2臨床試験の段階です。FDA承認を取得し、安全性と有効性が確立されれば、日本でも将来的に導入される可能性がありますが、具体的な時期は未定です。一般的に、米国でPhase 2試験が完了してから日本で承認されるまでには、以下のステップが必要です。
• Phase 2試験の完了と結果公表(2026〜2027年予測)
• Phase 3試験の実施と完了(2027〜2029年予測)
• FDA承認の取得(2029年以降予測)
• 日本での治験実施(FDA承認後)
• 厚生労働省への承認申請と審査(治験完了後)
日本では2024年12月12日に大麻取締法が改正施行され、医療目的でのCBD医薬品使用が可能になったため、今後の動向に注目が必要です。エピディオレックスの治験で得られる経験が、AJA001のような新薬の承認プロセスを円滑化する可能性もあります。
Q2: 市販のCBDオイルとAJA001の違いは何ですか?
AJA001と市販のCBDオイルには、いくつかの重要な違いがあります。
医薬品 vs 健康食品
AJA001はcGMP(現行適正製造基準)とFDA品質要件に準拠した医薬品レベルの製品です。一方、市販のCBDオイルは健康食品としての扱いで、品質や成分の一貫性が保証されていません。
臨床試験によるエビデンス
AJA001は、無作為化プラセボ対照試験などの厳格な臨床試験によって安全性と有効性が科学的に検証されています。市販のCBDオイルの多くは、このような科学的検証を経ていません。
品質管理
AJA001は製造工程の各段階で厳格な品質チェックが行われ、すべてのバッチで成分が一定です。市販製品の品質は製造業者によって大きく異なり、表示と実際の成分が一致しないケースも報告されています。
Q3: CBDは自閉症を「治す」ことができますか?
いいえ、CBDは自閉症スペクトラム障害を根治する薬ではありません。自閉症は神経発達障害であり、現在の医学では根本的な治癒方法は確立されていません。
AJA001を含むCBD治療の目標は、易刺激性、不安、睡眠障害、攻撃性などの行動症状を改善し、生活の質(QOL)を向上させることです。これにより、患者本人がより快適な日常生活を送れるようになり、家族や介護者の負担も軽減される可能性があります。
症状の緩和は、患者の社会参加や学習能力の向上につながる可能性があり、長期的には患者の人生の質を大きく改善することが期待されています。
Q4: 子どもにCBDを使用する際の注意点は?
子どもにCBDを使用する際は、以下の点に特に注意が必要です。
医師への相談
必ず小児科医または専門医に相談し、低用量から開始してください。自己判断での使用は避けるべきです。
製品選択
THCフリー製品を選び、第三者機関による成分分析証明書(COA)を確認してください。日本ではTHC 0.3%以下の製品が合法ですが、小児への使用ではTHC非検出の製品を選ぶことが推奨されます。
薬物相互作用
他の薬との相互作用に注意が必要です。特に抗てんかん薬、抗凝固薬、抗うつ薬を服用している場合は、必ず医師に相談してください。
定期的なモニタリング
高用量での長期使用は肝機能に影響を及ぼす可能性があるため、定期的な血液検査などの医学的モニタリングが推奨されます。
Q5: エピディオレックスとAJA001の違いは?
エピディオレックスとAJA001は、どちらもCBDを主成分とする医薬品ですが、いくつかの重要な違いがあります。
| 項目 | エピディオレックス | AJA001 |
|---|---|---|
| 成分 | CBD単一成分(99%純度) | フルスペクトラム(CBD + 他のカンナビノイド + テルペン) |
| 承認状況 | FDA承認済み(2018年) | Phase 2試験段階(2025年) |
| 対象疾患 | 小児難治性てんかん(ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症複合体) | 自閉症スペクトラム障害の行動症状 |
| 作用機序 | CBD単独の作用 | アントラージュ効果による相乗作用 |
| 日本での状況 | 治験進行中 | 未導入(将来的な可能性) |
エピディオレックスはてんかん治療に特化した単一成分医薬品であるのに対し、AJA001はフルスペクトラム製剤としてアントラージュ効果による広範な治療効果が期待されています。また、対象疾患も異なり、AJA001は自閉症スペクトラム障害の行動症状改善を目指しています。
まとめ
2025年2月、DeFloria社のAJA001が史上初のフルスペクトラムCBD医薬品としてFDA Phase 2臨床試験の承認を取得したことは、自閉症治療における画期的なマイルストーンです。60名を対象とした12週間試験により、自閉症スペクトラム障害の行動症状改善効果が科学的に検証される予定です。
Phase 1試験では最大680mg/日まで良好な忍容性が確認され、イスラエルの研究では90.2%の患者が何らかの症状改善を報告しました。AJA001の強みは、フルスペクトラム製剤としてのアントラージュ効果、cGMP準拠の医薬品レベルの品質管理、10年以上の観察データの蓄積、そして世界トップクラスの専門家チームによる開発体制にあります。
日本では2024年12月12日に大麻取締法が改正施行され、医療目的でのCBD医薬品使用が可能になりました。エピディオレックスの治験が進行中であり、AJA001も将来的に日本に導入される可能性があります。ASD患者の5〜30%がてんかんを併発することから、これらの医薬品は日本のASD患者とその家族にとって重要な治療選択肢となるでしょう。
ただし、CBDは自閉症を根治するものではなく、行動症状を改善し生活の質を向上させることを目的としています。子どもに使用する際は、必ず医師に相談し、THCフリー製品を選び、薬物相互作用に注意し、定期的なモニタリングを行うことが重要です。
参考文献
医療免責事項: 本記事の情報は教育目的のみであり、医療アドバイスの代わりとなるものではありません。CBD製品の使用を検討する場合は、必ず医師に相談してください。自閉症やその他の疾患の診断・治療については、専門の医療機関を受診してください。


