CBDの鎮痛効果は本物?慢性痛への効果を2025年最新研究で検証【使用方法も解説】

慢性痛は世界人口の約10%に影響を及ぼし、患者のQOL(生活の質)を著しく低下させる深刻な問題です。従来の痛み止めやオピオイドには副作用や依存のリスクがあり、新たな治療法が求められています。
近年、**CBD(カンナビジオール)**が慢性痛管理の選択肢として注目されていますが、その効果は本当にあるのでしょうか?
CBDは慢性痛管理の選択肢として一定の可能性を示していますが、エビデンスはまだ限定的です
神経障害性疼痛、線維筋痛症、変形性関節症などで効果を示唆する研究があります
オピオイド使用量を減らす可能性があり、副作用も比較的少ないとされています
CBDと慢性痛管理の基礎知識
CBDとは何か
**CBD(カンナビジオール)は、大麻草に含まれる100種類以上のカンナビノイドの一つです。THC**とは異なり、精神作用(ハイになる効果)がなく、依存性も低いとされています。
日本では、茎や種子由来のCBDは合法であり、健康食品や化粧品として流通しています。
慢性痛の定義と影響
慢性痛とは、3カ月以上続く痛みを指し、原因は多岐にわたります。
主な種類
神経障害性疼痛: 神経の損傷や機能異常による痛み(糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛など)
炎症性疼痛: 関節炎や自己免疫疾患による痛み
侵害受容性疼痛: 組織の損傷による痛み(変形性関節症など)
線維筋痛症: 全身の慢性的な痛みと疲労
慢性痛は、睡眠障害、うつ病、不安障害を引き起こし、日常生活に深刻な影響を及ぼします。
なぜCBDが注目されているのか
オピオイドによる痛み管理は依存症のリスクがあり、長期使用には慎重さが求められます。CBDは、比較的安全で依存性が低いとされ、慢性痛患者の間で広く使用されています。
2024年のForbes調査によると、米国成人の60%がCBDを使用したことがあり、そのうち60-62%が痛み緩和目的と報告されています。
CBDの鎮痛効果のメカニズム
エンドカンナビノイドシステムの役割
人体には、**エンドカンナビノイドシステム(ECS)**と呼ばれる生体調節システムが存在します。ECSは、痛み、炎症、睡眠、気分、免疫機能などを調整する役割を担っています。
CBDは、このECSに作用することで、痛みの緩和効果を発揮すると考えられています。
CB1・CB2受容体への作用
ECSには、**CB1受容体(主に中枢神経系)とCB2受容体(主に免疫系・末梢組織)**の2種類があります。
CBDは、これらの受容体に直接結合するのではなく、間接的に活性化することで以下の効果をもたらします。
内因性カンナビノイドの増加: CBDは、体内で生成されるアナンダミドなどの分解を抑制し、その濃度を高めます
TRPV1受容体の活性化: 痛覚に関わる受容体に作用し、痛みの信号伝達を抑制します
抗炎症作用と神経保護作用
2025年1月のYale大学の研究では、CBDが末梢神経系の痛み信号伝達タンパク質の活動を減少させることが明らかになりました。
また、CBDは炎症性サイトカインの産生を抑制し、神経の炎症を軽減する作用も報告されています。
最新研究から見るCBDの慢性痛への効果

2024-2025年の臨床試験結果
最近の研究では、CBDの慢性痛への効果について様々な結果が報告されています。
肯定的な結果
2024年のシステマティックレビューでは、11件の臨床試験中7件がCBDの痛み軽減効果を確認しました
変形性関節症、神経障害性疼痛、線維筋痛症、アトピー性皮膚炎などで効果が示唆されています
2025年のナラティブレビューでは、CBD単独で42%の患者が、THC併用では66%の患者が痛みの軽減を報告しました
否定的な結果
2024年の別の論文では、16件の研究中15件がCBD単独の鎮痛効果をプラセボと同等と結論づけています
現時点でのエビデンスは一貫していません。効果があるとする研究とないとする研究が混在しており、さらなる大規模臨床試験が必要とされています。
痛みの種類別の効果
神経障害性疼痛
前臨床研究では、CBDが神経損傷による痛みを軽減することが示されています。TRPV1受容体への作用により、神経の過敏性を抑制すると考えられています。
炎症性疼痛(関節炎など)
関節痛の軽減、動きの改善、炎症マーカーの低下が複数の研究で報告されています。変形性関節症患者への臨床試験では、CBDが痛みと機能を改善したという結果があります。
線維筋痛症
2025年のオンライン調査では、線維筋痛症患者878人のうち**72%**がCBD使用により鎮痛薬(NSAIDsやオピオイド)を減らしたと回答しました。
ただし、これは患者報告によるもので、二重盲検試験による検証が必要です。
オピオイド使用量の減少効果
CBDがオピオイドの使用量を減らす可能性が示唆されています。
複数の研究で、慢性痛患者がCBDを使用することで、オピオイドの必要量が減少し、睡眠の質が改善されたと報告されています。これは、オピオイド危機への対策として重要な意味を持ちます。
がん性疼痛への応用:JAMA最新研究
2025年10月、JAMA Health Forumに掲載された大規模研究が、**医療大麻**のがん性疼痛管理における重要なエビデンスを提供しました。
研究の概要
対象: 商業保険加入の18-64歳のがん患者(年平均305万人)
期間: 2007年1月〜2020年12月(14年間の追跡調査)
方法: 大麻販売店開設前後でのオピオイド処方データを比較分析
主要な研究結果
医療大麻販売店(MCD)開設後の変化:
| 指標 | 変化率 | 統計的有意性 |
|---|---|---|
| オピオイド処方率 | 24.15%減少 | P < 0.001 |
| 平均供給日数 | 9.67%減少 | P < 0.001 |
| 患者あたり処方数 | 5.17%減少 | P < 0.001 |
嗜好用大麻販売店(RCD)開設後も、オピオイド処方率が11.14%減少(P=0.049)するなど、有意な減少が見られました。
臨床的意義
医療大麻がオピオイドの代替または補完療法として機能する可能性を科学的に裏付けています
がん患者の多面的な症状(痛み、吐き気、食欲不振、不安)に対応できます
オピオイドの副作用(便秘、眠気、認知機能低下)を軽減し、QOLを向上させます
CBDの使用方法と推奨用量

摂取方法の種類
CBDには複数の摂取方法があり、それぞれ吸収率や効果発現時間が異なります。
舌下投与(オイル・ティンクチャー): 吸収率が高く、15-30分で効果が現れる。医療目的で最も多く使用される方法
経口投与(カプセル・グミ): 効果発現まで1-2時間かかるが、持続時間が長い(6-8時間)。用量管理がしやすい
外用(クリーム・バーム): 局所的な痛みに直接塗布。全身への影響が少ない
吸入(ヴェポライザー): 最も速く効果が現れる(数分以内)。肺への影響が懸念されるため注意が必要
推奨される用量と増量方法
慢性痛管理のためのCBD用量は、個人差が大きいため少量から開始するのが基本です。
初期用量: CBD 5mgを1日2回から開始
増量: 1週間ごとに5-10mgずつ増やす
最大用量: 1日40mgまで(医師の指導下ではさらに高用量も可能)
THC併用: 効果が不十分な場合、医療専門家の監督下でTHCを追加する選択肢もあります
効果発現までの時間
CBDの効果を実感するまでには、継続的な使用が重要です。
急性効果: 摂取後15分-2時間で現れることがある
慢性効果: 2-4週間の継続使用で痛みの軽減を実感する患者が多い
最適用量の発見: 数週間から数カ月かけて自分に合った用量を見つける必要があります
副作用と注意すべきポイント
主な副作用
CBDは比較的安全とされていますが、以下の副作用が報告されています。
眠気・倦怠感(運転や機械操作の前は避ける)
下痢・吐き気(高用量で起こりやすい)
口渇(水分補給を心がける)
食欲の変化(体重管理に注意)
肝機能への影響(高用量では肝酵素値が上昇する可能性)
薬物相互作用
CBDは、肝臓の代謝酵素(CYP450)を阻害するため、以下の薬剤との併用には注意が必要です。
抗てんかん薬(カルバマゼピンなど)
抗凝固薬(ワルファリンなど)
免疫抑制剤
一部の抗うつ薬
複数の薬を服用している方は、必ず医師に相談してください。CBDが他の薬の代謝に影響を与える可能性があります。
医師への相談が必要なケース
以下の場合は、CBD使用前に医療専門家に相談しましょう。
肝臓や腎臓に疾患がある
妊娠中・授乳中
18歳未満
他の薬を複数服用している
重度の心血管疾患がある
CBDの限界とエビデンスの現状
エビデンスの質と課題
現時点でのCBDの慢性痛への効果に関するエビデンスには、以下の課題があります。
サンプルサイズが小さい: 多くの試験が少人数で実施されている
研究デザインのばらつき: 用量、投与期間、評価方法が統一されていない
プラセボ効果の可能性: 患者報告に基づく研究では、期待効果が影響する
長期安全性のデータ不足: 数年単位の使用データが限られている
現在、米国退役軍人を対象とした大規模臨床試験が進行中であり、今後より質の高いエビデンスが期待されています。
THC併用との違い
CBD単独よりも、THCとの併用の方が高い痛み緩和効果を示す研究が多く報告されています。
これは、両者の相乗効果(アントラージュ効果)によるものと考えられています。ただし、THCには精神作用があり、日本では規制対象です。
海外では医療大麻としてCBD:THC比が1:1の製剤(Sativexなど)が承認されています。
今後の研究の方向性
CBDの慢性痛への効果を明確にするために、以下の研究が求められています。
大規模ランダム化比較試験(RCT)
痛みの種類別の効果検証
最適な用量と投与方法の確立
長期使用の安全性評価
オピオイド代替としての有効性検証
よくある質問(FAQ)
CBDは慢性痛に本当に効果がありますか?
現時点でのエビデンスは限定的で、研究結果も一貫していません。一部の研究では効果が示されていますが、他の研究ではプラセボと同等とされています。
神経障害性疼痛、線維筋痛症、変形性関節症などで効果を示唆する結果がありますが、大規模臨床試験による検証が必要です。
CBDはどのくらいの用量で使うべきですか?
個人差が大きいため、CBD 5mgを1日2回から開始し、1週間ごとに5-10mgずつ増やしていくことが推奨されます。
一般的には1日40mgまでが目安ですが、医師の指導下ではさらに高用量も可能です。自分に合った用量を見つけるには数週間から数カ月かかる場合があります。
CBDに副作用はありますか?
CBDは比較的安全とされていますが、眠気、倦怠感、下痢、吐き気、口渇、食欲の変化などの副作用が報告されています。
また、肝臓の代謝酵素を阻害するため、他の薬との相互作用に注意が必要です。複数の薬を服用している方は、必ず医師に相談してください。
CBDはオピオイドの代わりになりますか?
一部の研究では、CBDがオピオイドの使用量を減らす可能性が示されています。特に2025年のJAMA研究では、医療大麻へのアクセスがオピオイド処方を最大24%減少させることが確認されました。
ただし、CBDを単独でオピオイドの完全な代替とするには、まだエビデンスが不十分です。医師の指導のもとで、補完的に使用することが推奨されます。
まとめ
CBDは慢性痛管理の選択肢として一定の可能性を持っていますが、現時点でのエビデンスは限定的です。2024-2025年の最新研究では、神経障害性疼痛、線維筋痛症、変形性関節症などで効果を示唆する結果がある一方、否定的な結果も報告されています。
CBDは比較的安全で依存性が低いとされています
オピオイド使用量を減らす可能性があり、副作用も管理可能です
効果には個人差が大きく、最適な用量を見つけるには時間がかかります
CBDを使用する際は、少量から開始し、医師と相談しながら調整することが重要です。今後の大規模臨床試験により、CBDの真の効果と適切な使用法が明らかになることが期待されます。
参考文献
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Cannabinoids offer new hope for safe and effective pain relief Yale University (2025). https://news.yale.edu/2025/01/21/cannabinoids-offer-new-hope-safe-and-effective-pain-relief
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Efficacy, Safety, and Regulation of Cannabidiol on Chronic Pain: A Systematic Review PMC (PubMed Central). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9288157/
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Considering Long-Acting Synthetic Cannabidiol for Chronic Pain: A Narrative Review Christo P.J. et al. (2025). Cureus, 17. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12045650/
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Cannabis Laws and Opioid Use Among Commercially Insured Patients With Cancer Diagnoses JAMA Health Forum (2025). https://jamanetwork.com/journals/jama-health-forum/fullarticle/2840030
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専門家への質問:慢性痛の管理におけるCBDの有望な可能性 dsm-firmenich. https://www.dsm-firmenich.com/ja-jp/businesses/health-nutrition-care/news/talking-nutrition/the-promising-potential-of-cbd-in-the-management-of-chronic-pain.html


